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2013年9月13日 (金)

レコードと機関銃【マシンガンフィッシュ】130913

2013年09月13日 十三Black Boxx

エネルギッシュコメディーというチラシの言葉に偽り無し。
ロックバンド、アーティスト、アイドルといった表現者がぶつかる自分たちの表現と、その時代に求められていることの相違。
向き不向き、才能の限界、生活していくための手段といった現実的なことにぶつかりながらも、夢を追って自分を信じてひたすら自分たちの道を前へ進もうとする熱い人たちの姿を、軽快なコメディータッチで描いている。
とても、観やすく、楽しく笑いながら、暑苦しい人の姿に想いを馳せるような作品だった。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

雰囲気のある洋館のような屋敷の主人が、以前、この屋敷で開催された音楽イベントの一日を振り返る形で物語は始まる。
当時はまだ、執事だった。
今は亡き、少々ボケた愛嬌のあるご主人様と、可愛らしいメイドと共に屋敷で働いていた。

 

その日は、ある芸能プロダクションに所属するアーティストたちが一同に揃う音楽イベント。
一時はいい線までいったのだが、熱苦しいくらいのロック魂が時代のニーズに合わなくなったのか、かなり落ち目になってしまった3人組のロックバンド。
自分のロック精神を貫くためにはどんな困難だろうと逃げずに立ち向かうという曲作りを担当する熱い男。熱過ぎて、暴走気味なのが少々問題か。担当マネージャーも付いていけなくなって、すぐに辞めてしまう。今も、まだ若いマネージャーと連絡が取れない状態に。それでも、そんな彼の曲作りのセンスと、ロッカーとしての誇りを認め、一緒にやってきたボーカルとギター。互いに認め合って、頑張ってきたことは確かだ。
プロダクションの今や看板とも言える、ちょっとすかした男。真面目だけど、ちょっと調子に乗り過ぎてしまうマネージャーと一緒。時代に合わせた、分かりやすいメッセージソングで人気急上昇。そんな姿がアーティストとしての魂を売り渡していると、ロックバンドの男とはケンカが絶えない。でも、実は互いに認め合っているところがあったりする。
アイドルになりたくて仕方なかった女の子。少々、痛いキャラでも、夢を叶えるために全力を尽くす。ただ、それが媚びるような感じになってしまい、評判は悪いみたいだ。マネージャーは、気弱で、奴隷のように言いなりになっている弱々しい男。

 

この日は、ロックバンドにとって、重要な日であった。
解散。
時代の波から外れ、売れなくなったバンドは、プロダクションとしては不要。ロック魂とかは関係ない。世の需要に対して、どう供給するかだから。
ボーカルの男の歌唱力は依然、評判高く、プロダクションは、この男を別バンドに所属させるつもり。他の二人は、演奏要員として、一応、プロダクションが抱える。
その通達を受けたボーカルは、他の二人に言わないといけない。歌うと誰よりもロッカーであるが、普段はとてもおとなしいボーカルの男にとって、そんな辛い宣告を言う勇気はとても無い。いつまでたっても言わないボーカルに痺れを切らせ、遂に、冷徹で厳しいと有名な社長秘書がこの屋敷にやって来る。

 

深刻な問題を抱えたロックバンド。それに絡む人気アーティスト。土壇場のアイドル。ボケた主人。ちやほやされるメイド。
そんな人たちが渦巻く中、屋敷に入り込んできた泥棒二人組までが巻き込まれ・・・

 

非常に軽快なリズムで進むコメディー作品として仕上がっている。
イベントという設定を活かして、日替わりゲストの芸を楽しませたり、老主人の夢の中なんて設定にして、お得意の殺陣で楽しませたり、エンタメ要素を無理なく入れ込む。
ちなみにこの日の日替わりゲストは、湯煙ゆうすけさん(UNUBORE)。この劇場、Black Boxxを語るオリジナル曲をわざわざ創っての力の入れ具合。

 

キャラもなかなか巧みに設定されているように思う。
基本的にこの作品は、ロックバンドの熱き想いや男の友情を描いた暑苦しいものである。プライドや意地が飛び交い、妥協や打算のようなものに反発して生きていくといった、男のくだらなくて幼稚だけど、忘れたくない大切な想いを感じさせる話。
熱さ一辺倒だと、何やら説教臭い感じになって、嫌気が出てきそうだが、いい形で空気を緩める楽しいキャラが準備されている。
そのハイテンションが痛々しい笑いを醸すアイドル、目の保養になる可愛らしい飄々としたメイド、漫才コンビのようなボケとツッコミを見せる泥棒二人組、見事に冷たくきついやり手秘書などの女優陣。
対照的にクールな風貌の中に熱き想いを秘めたアーティスト、少々、癖のあるマネージャーなどの男優陣。
それらがうまくはまって、スムーズな展開の中で、伝えたい熱いメッセージを浮き上がらせている。

 

限界を感じてしまう。それで焦ってしまう。
どうにかしないといけない。
ロックバンドのようにそれでも真正面からぶつかることもあるだろうし、売れっ子アーティストのようにうまく道をズラしたり、マネージャーのように逃げ出してしまったり、アイドルのようにそれでもその道を無理にでも信じて進もうとしたり。
どれが、正解かは分からない。
でも、どんな答えを出そうと、みんな懸命にやっている。その時の自分が真剣に考えて出した答えだ。
どうなろうとも、その答えに従って、また懸命に頑張ればいい。
そうすれば、違った形で未来が開ける時もくる。
作品のラストは、この日、解散したロックバンドが、時を経て、互いに成長した姿で、また屋敷に戻ってくることを懐かしむように喜ぶ今の屋敷の主人の姿で締められている。

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