Sherry, Go home-フランケンシュタインと赤い靴-【浮遊許可証】130909
2013年09月09日 OVAL GALLERY
美しく、優しく、そして哀しい物語。
心苦しい。つらい。
そんな気持ちが残るものの、どこか温かく、尊き人の想いを感じさせられる話というか、空間でした。
宇宙船。
盲目の宇宙飛行士。
盲目であるがために、宇宙飛行士になるための試験を受けることすら出来ず、自分の夢を叶えるために、その階段を作ることから始めなくてはいけなかった。
宇宙飛行士になった今も、小さな宇宙航行しか任せてもらえず、実績をあげて、もっと大舞台で活躍したいと思っている。
自分の宿命に負けることなく、真摯な想いでそれに打ち勝とうと必死に頑張っている。
そんな宇宙船に、密航者が入り込んでいた。
12歳の少女。
地球に戻りたいのだとか。
本部に報告して指示を仰ぐつもりだが、宇宙飛行士の意志は決まっていた。
この宇宙船はこれからトーチカという星に向かい、一人の赤子を救出する予定。
自分と赤子。少女の分の酸素は無い。
可哀想だが、ここで少女を放り出すしか無い。
話を聞く限りでは、宇宙飛行士も知っている宇宙船開発で権威的な存在である博士が父親で、母親と離婚して、生まれたばかりで夏の星に連れて行かれ、孤児院でずっと暮らしたのだとか。
二人はこの暗闇の宇宙の中を漂う宇宙船の中で、心を通わせていく・・・
天真爛漫な少女と、生真面目な宇宙飛行士のどこかズレた微笑ましい掛け合いが、いつの間にか、二人がこれまで置かれてきた孤独な環境に同調し合っていきます。
孤独を認め合い、そこから生まれた互いに想い合うような愛は、二人の会話で夢のように語られますが、それは本当に夢でしかなく、現実は哀しい愛となって終焉を迎えるといった感じ。
痛ましく、つらい気持ちが残りますが、それでも、一時に二人の中で生まれた愛が優しくも美しくも感じられる様な話でした。
素晴らしい夢のロケットを発明した博士。
でも、不慮の事故で、一人の化け物のような少女を作ってしまうことになる。
博士にとっては、自分の発明は誇りであるが、その生み出した悲劇への悔いも残る。同時に彼女が自分の心であり、夢であり、愛すべき者でもある。
自分の醜い姿を意識してか、遠い星に孤独の中で暮らした少女は、地球に向かう決意をする。
その途中で出会った、暗闇の孤独の中で生きてきた男。
この人ならと少女は思ったのだろうか。愛されてみたいと思ったのか、彼女は宇宙船の中で男と地球に戻った後の夢のような恋人同士の生活を想像する。
しかし、そんな時が実現するはずもなく、彼女はこの宇宙の暗闇の中に溶けていってしまう。
孤独の中で生まれた純愛が哀しく描かれている。
最初は題名の意味すら分からず、何かを比喩しているのかなとか、本当に宇宙のような不思議な空間が確かに漂っているなとか、色々想いながら観劇。
途中、病院かなあとか、少女の最期の夢なのかとか思っていたが、最後になって、この作品名の意味合いが分かるようになっている。
地球はきっとこんなロケットとかも発明されて、宇宙航行もさかんになり、華々しいのでしょう。
明るいところばかりが映し出され、その裏に暗闇が存在していることは普段、意識もしないことかもしれません。
でも、そんな影に、暗闇の中で悲しみと闘う人たちがいることに想いを馳せてみようといったところでしょうか。
そして、そんな人たちは決して、勝手に生み出された者では無く、自分たちが生み出した者たち。
フランケンシュタインは神を超えた科学技術の犠牲者。
赤い靴は、あの赤い靴はいてた女の子のイメージかな。故郷に想いを寄せながら、遠い国で暮らしていたであろう少女。そんなことを強いなければ仕方なかった世の中。
暗闇の孤独の中で、そこに差し込むほんの少しの光の筋を夢見て、懸命に生きていく人たちの尊き姿が、この二人の哀しい愛の姿から浮き上ってくるような気がします。
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