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2013年9月28日 (土)

べにばらちゃんとしろばらちゃん【リリーエアライン】130928

2013年09月28日 南森町・アートカクテル

グリム童話らしいが、同作品をベースに作家さんご自身の自伝を交えながら、ファンタジーの世界で生きることを突き詰めようとしているような作品か。

要は、この作家さんがそうだとは思えないが、いわゆる凡人が、自分の生きてきた環境、もしかしたらもう生まれた時から持っているのかもしれないような、自分の宿命、ポリシーを大切に、良く言えば自分自身に素直に真摯に、悪く言えば頑固に偏屈に生きていく時、ぶつかってしまう世の中との相違を考えているような話に感じる。
生きにくい世の中だなあと思って、戸惑ってしまう時に、大丈夫じゃないのか、そんなの自分だけじゃなくてみんなが苦しむこと。あなたが特別なのではなくて、みんな各々の荷物を背負って、精一杯やってるんだからと、元気づけてくれるような話だった。

将来の夢は何ですか?
お母さん、将来の夢ってどういうこと?
大きくなったら何になりたいか。意味が分からない。大人になったら、何か変わっちゃうのだろうか。私はずっと私なのに。

だったら、とりあえずはお母さんかな。
えっ、お母さんって誰でもなれるの。
それなら、私は凄い人になりたい。
ドストエフスキーみたいな作家。ゴッホみたいな画家。キューリー夫人みたいな科学者。
作家を目指して、小説を書いてみるものの、処女作、えんぴつ君と消しゴムちゃんが文房具屋に文具を買いに行くという、不条理設定にオチをつけれず断念。
ゴッホ幼少期の頃のデッサンに唖然として、キティーちゃんぐらいしか描けない自らの才能の限界を知る。

学校では、先生が自分の喋りたいことを調子良く喋ろうと、うまく話を誘導しているのに、それを邪魔するような言動をしてしまうKYっぷり。
幸せなら手を叩こうって、幸せじゃない人はどうすればいいの、手を叩くのは強制じゃないよねなんて面倒くさい考えをする。
みんなでお揃いのトレーナーなんて嫌ですなんて、協調性にも少々、難あり。

家では、元々、共産主義寄りの考えだったのか、戦時中のシベリア抑留の影響なのか、万人が平等であるという社会主義政策を重んじる祖父、同じく戦後もしばらくは神としての認識があり、姿を見るなどとんでもないという風潮の中で、他の人たちとは違って天皇の姿を見て、普通の人じゃんみたいなことを言ってしまうような祖母に影響を受ける。
誕生日プレゼントがマルクス経済学の漫画本、土産にはソ連の中味スカスカのチョコ、中国のなぜか固いパンダのぬいぐるみってくらいだから、その影響は大きいことだろう。
いとこは、結婚して平気で夫のために北の寒さ厳しい土地にも、平然と行ってしまうような強い人。
いつもコロッケを買っていた近所のお肉屋さんは一家心中したらしい。私がもっと買ってあげていればよかったのかな。そう思うと、私は幸せなのかな。

そんな人生を歩むべにばらちゃん。
私はちょっと普通じゃないのかな。
やっぱり普通がいい。何か生きにくい。どうしたら、普通に幸せになれるのだろうか。
べにばらちゃんは、いつも自分の傍にいるしろばらちゃんと一緒に森を彷徨いながら、自分探しの旅に出る。

全世界のあらゆる人に煙たがられるゴキブリ、幸せになると乾いて死んでしまうナメクジ、つい洗ってしまうのでカールを絶対に食べられないけど、洗うことに誇りを持つアライグマ、もどかしいリズムで生きづらそうな全ての行動を五拍子で刻んで生きる人などと出会いながら、べにばらちゃんは生きにくい中で生きていくことを見つめていく。
あっさり捕まって火あぶりの刑となって死んでしまうけど星になるゴキブリ、そんな星になったゴキブリという大切な友達がいることを知って、幸せを感じながら乾いて命を全うするナメクジ、依然カールは食べられなくても、洗うことを辞めず、洗えるドングリを誇らしげに食すアライグマ。
そして、そんな森の旅を終えた時、自分は自分の荷物を背負って、生きていこうと決心するべにばらちゃん。
そんなべにばらちゃんは、今、この作品の作家として、自分の人生の歩みを進めている・・・

と、こんな感じの話だろうか。

どうして、こんなに自分は不器用で、うまく周囲と合わせて生きられないのだろう。頑固は長所だとも思ってるけど、やっぱり生きていく上では短所かもしれないな。
類いまれな才能に恵まれていれば、こんな不器用さも凄いですねなんて言われてちやほやされるのかもしれないが、悲しいことにそんな才能も無いから、結局、みんな引いちゃってるんじゃないのか。
あ~、他の人みたいに、普通になりたい。そう出来れば、どれだけ楽なことか。でも、出来ないんだよなあ。出来ないんじゃないかな。普通じゃない自分のことが結局、好きだったりするのかもしれない。
だったら、どうやって生きていけばいいんでしょうかねと彷徨ってしまう時、出会う数々の人たち。
けっこう、みんな普通じゃない。何か色々なことを抱えている。
アライグマ、ゴキブリ、ナメクジ、五拍子の男なんてキャラは、出会った人たちのメタファーだろうか。
自分はこうだからと信念曲げずに生きている人、不運の環境で必死に生きて燃え尽きて輝く人、不運な環境の中でも自分の輝きを見つけ出す人、不器用を承知で自分に素直に生きている人。
みんな頑張って生きている。
生きやすいなんて世の中は、存在しないのかもしれない。だって、みんなが幸せになんて言っていた社会主義国家の頂点、ソ連だって今はもう無いもの。これからは戦争も終わってみんな幸せになんていっても、困って心中しちゃう人だっている。いとこみたいに、いつ厳しい環境に自分の身を置かなくてはいけない時だってあるかは分からない。
でも、みんなそれを受け入れながらも、自分を大切に、この生きにくい世の中を精一杯、頑張って生きようとしている。きっと。
そして、自分には、そんな自分の苦悩の時、安堵の時関わらず、傍にいるしろばらちゃんがいる。
そんなべにばらちゃんの姿を見て、どこか生きることを穏やかに見つめられて、思い悩まず、今の自分を頑張ればいいのかななんて優しく伝えてくれているような感覚を得た。

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