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2013年9月14日 (土)

PANDORA -Op.2 炎の章-【Project UZU】130913

2013年09月13日 インディペンデントシアター2nd

昨年に引き続き、観劇。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/pandora--op1--p.html

非常に良い。
前作よりもさらにパワーアップした美しい演出は、かなり圧巻である。
前作で感じた、少しごちゃごちゃしたところや、話の焦点が絞りにくいところは全て解消されていた。
役者さん方のまとまりも、とても良く、統制のとれた綺麗な仕上がりを見せる。
壮大なファンタジー作品として、注目すべき公演だと感じる。

<以下、若干ネタバレしていますが、許容範囲として白字にはしていませんのでご注意ください。公演は月曜日まで。ちなみに、前作を観ていなくても、あまり関係ないと思います。ざっくりした説明が今作品中にありますし、チラシのあらすじで設定はだいたい理解できるはずです。個人的には、むしろ今回の方が分かりやすいから、ここからスタートでもいいかも。ただ、一部のキャラは前作を観ていたら、流れでより面白かったりはするのですが・・・>

今回、勇者が再生させるのは火の国。
武器鍛冶屋が集う国で、その造られた武器は一級品として他国に輸出されている。
どの国にも分け隔てなく武器を輸出しており、その代わり、自国は中立国として他国を攻めもしないし、攻め込まれもしないというスタンスを築いている。

そんな火の国で、国王が何者かによって殺害され、炎の力を封じ込めた石盤が盗み出される。
悪魔の仕業。この国は悪魔によって滅ぼされる。
国王の側近であった男は、悪魔に対抗すべく、国民たちに武器を造らせて戦わせ、最も強い戦士を決めて、悪魔と対決させようとする。
この国で一番、武器鍛冶屋として能力の高い男は、かつて違う国を旅をした時に気付いてしまった。
自分たちが誇りに思っていた武器は、他国の民たちを戦い合いの中に引き込み、数多くの憎しみを生み出し、大切な命を奪っているのだと。
その時以来、男は武器造りを辞め、自分たちの国の火を鍛冶では無く、ランプとして活かそうとしている。

その時、一緒に旅をした、仲間たち。
男の幼馴染の女は、自分が何をすればいいのか分からず、イライラしている。
その幼馴染の姉は、新しい命をお腹に宿している。その夫は、武器商人であるが、生活のためにも武器商人を辞めるわけにもいかず、あの日以来、使えない武器を売ることで、罪滅ぼしをしているようだ。
兄貴的な存在の男は、国王を守る近衛兵として活躍している。それでも国を守るために武器は必要、戦うことも必要と考えている。

そんな火の国を破滅から救うべく、勇者と竪琴の化身は、この国に姿を現す。
そこで、感じる人の憎しみの感情。
それは、勇者が逢いたいと望む、世界に絶望して、その憎しみの感情を増幅させて世界を滅ぼした母親であるパンドラの感情とオーバーラップする。
自分はいつも何も出来なかった。世界を救うことが出来ない。
どうしたらいいのか。力。力があれば、全てがうまくいく。
強い武器があれば、全てが救われる。
そんなことを考えた勇者。
しかし、その力は単なる憎しみであり、母が世界を滅ぼした力と同じもの。
火の国の様々な人と出会う中で、勇者は人には大切な宝物があり、それを守るべく、大きな優しさを持つことを知る。そして、その力は、単なる武器の力よりも強く、尊く、世界を救うために必要なものであることを感じ始める。
勇者が持つ創造の魔法。そんなことを知った勇者が放つ、創造の魔法は、火の国を破滅させようとする憎しみのマグマの噴火を抑え、・・・

前作は少しごちゃごちゃした印象があり、少々、話として分かりにくい感があったのだが、今回はとても分かりやすい。
世界を破滅させる源となる人の憎しみ合い。そこから世界を救うためには、自分が守りたい、守らなければいけない大切な人を想う優しく大きな力が必要となる。
母、パンドラは本当に憎しみだけで自分自身を支配されてしまっていたのだろうか。竪琴を造った人はパンドラを想っていたようである。その想いは彼女を救えなかったのか。時を経て、勇者によってその日を迎えることが出来るのか。
人を想うという優しい気持ちから世界再生の大きな祈りを感じさせる話であったと共に、次作がさらに楽しみになるような、この壮大な作品の世界観、勇者と竪琴の化身が目指す道がはっきりとし始めたような気がする。

勇者、御意さん。竪琴の化身、西田美咲さん(劇的☆ジャンク堂)。
今回は勇者が成長していく姿がとてもよく描かれている。人の様々な感情を知っていく勇者。それは憎しみという世界を破滅させるくらいに絶望的に大きな力。同時にそれに対抗するだけの、大きな人を想う力も存在することを知る。それでも、まだ幼く純粋な彼女から、奏でられる竪琴は、ただひたすらに世界を祈る美しい音色に聞こえる。そんな勇者を見守る竪琴の化身。彼女はきっと、世界を創造することで、これから勇者が経験する喜びもつらさも知っているのだろうか。自分の存在の強い覚悟を内に秘めながら、優しく勇者を見詰める姿は、その姿こそ世界を救うために必要な優しい想いが詰まっているかのようで、竪琴の音色のように美しい。
パンドラ、かめ子さん。前作では単なる世界を滅ぼした悪魔のような感じで受け取っていたが、今回は話の流れからも、母として、女性としての、人の揺れ動きを感じさせる。彼女の憎しみの気持ちに大きな揺らぎが生じた時に、この崩壊した世界はきっと違う未来をたどるのであろう。
ランプ屋を営む男、江本真理子さん。自分たちが造る武器の悲劇を目の当たりにした心の葛藤を感じさせながらも、自分なりの道を見出そうとする明るく前向きな姿が世界への希望を感じさせる。
幼馴染、小藤めぐみさん(837B)。自分たちはどうすればいいのか。答えが出ずに、悩む姿が怒りんぼうという不器用な形で描かれているキャラ。人を想う、また違った形の怒りという感情を表現している感じか。
お腹に命を宿す姉、今池由佳さん。今回はパンドラとの対比で、パンドラの像を非常に明確にさせるキャラとなっているようである。守るもの、守られるものを得ている彼女の凛とした姿は希望を強く感じさせ、それを見いだせなかったパンドラの絶望が引き立つ。
その夫、黒澤誠さん(劇的☆ジャンク堂)。人のいい、ちょっと頼りないキャラ。でも、芯が強く、現実的な視点でどうしていけばいいのかを実行している強さもある。守りたいものを手に入れた男の強さ、自信が滲み出ている。
近衛兵となっている男、多田志典さん(U・WA・SAの奴等produce)。上記あらすじに書いていないけど、たまたまこの国にやって来た老騎士、稲森誠さん(シアターOM)。
さすがの殺陣で魅せる。堅苦しく自分を律する多田さんに、自由に振る舞う稲森さんの対照的なキャラとなっていながらも、共に武力が一つの世界を守るための大事な力であることは共通認識っぽい。戦士としての、人を、世界を想う姿である。
前作にも登場したトレジャーハンター、川原梓さん、五味たろうさん(劇的☆ジャンク堂)。前作では、この話を外面的に違う視点から見るキャラとしての位置づけだったが、今回は、お宝というキーワードで重要なポジションを取る。このお二人は次回作がどうも楽しくなりそうである。気の強いお姫様の川原さんは、またひと暴れするのか、完全に川原さんにやり込められており、気付かれぬ悲しき恋心を抱く五味さんは男をついに見せる日が来るのか。楽しみである。
国王の側近、三浦求さん(ポータブル・シアター)。ストーリーテラーとなっている。で、実は人の憎しみが作り上げた悪魔。飄々とおちょくるように、語るその姿は、人間がいる限り、自分は絶対に消えないことを知っているかのような確信犯めいたものを感じさせ、小憎たらしい。実際は、パンドラの憎しみを強く感じさせるためか、この方自身は、少し愛嬌があるかのような悪者役となっている。

2作目にして、いい感じに盛り上がっているような気がする。
次作の予告編も、かなり期待して良さそうな感じだった。
今後の展開が楽しみな壮大な作品となりそうだ。

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コメント

「PANDORA -Op.2 炎の章-」
ご来場いただきましてありがとうございます。
しかも昨年の「風の章」に引き続きで、
本当にありがとうございます。

多くの役者が出ているにも関わらず、
一人一人への感想、
本当にありがたいかぎりです。

残り3日間、
良かった部分は引き継ぎ、
悪かった部分は修正できるよう
新たに気を引き締めて頑張ります。

本当にありがとうございました。

投稿: 黒澤誠 | 2013年9月14日 (土) 02時16分

>黒澤誠さん

公演でお忙しい中、コメントありがとうございます。

黒澤さんの雰囲気に合った、誠実で優しい男の役どころでしたね。
大作なので、かなりの体力・精神力を使われることと思います。
お体に気を付けつつも、連休中、より多くの人を圧倒させるべく、ご活躍ください。

投稿: SAISEI | 2013年9月14日 (土) 08時52分

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