MID SUMMER CAROL ~ガマ王子VSザリガニ魔人【T2プロデュース】130923
2013年09月23日 オーバルシアター
うっ、泣ける・・・
一晩経って、ブログを書いているが、思い出して、また泣きそう。
観劇直後はやばかったものなあ。
お隣にちょうどまだご挨拶したことの無い学生役者さんがいらっしゃったので少し挨拶しておこう、観劇前に「気分的に泣ける芝居を最近観たいんですよねえ」とお話しした観劇仲間の方にぴったりの作品だったと話そう、この公演をプロデュースされた主宰の方に、今回も最高だったよと声を掛けよう・・・なんて思っていたのですが、涙溢れそうになっちゃってるから、速攻で劇場を後にする。
最近はipadを購入したので、観劇後の帰りの電車で、感想を簡単に殴り書きしておいて、家に帰ってからまとめるなんてことをするようにしているのだが、今回は出来なかったなあ。電車の中で泣いちゃいそうだったから。
この日は疲れ気味なので、家に帰ってゆっくりするつもりだったが、あまりにも気分がいいので、とりあえず飲みに行こうと、どの店行くかを考えながら電車に乗る。
久しぶりに泣ける芝居を観た気がする。
もちろん、有名作品の既成脚本なので、既にその面白さはある程度、保証されていることは間違いないだろう。
ただ、だからと言って、誰がやっても、こんな素敵な作品に仕上がることは無いことも確かだろう。
個々の役者さんの個性的な魅力、クオリティーの高さ、そして全体的なキャストのバランスの良さ。
関西学生劇団でご活躍中、又はされていた方々を集結させて、その実力を知らしめた公演だったのではないか。
あらすじは、有名作品なので省略。
検索したら、詳しく書いたブログとかがたくさん出てきます。
一人の老人の凍った心を、一人の純粋な少女、そしてその周囲の人たちが溶かしていく過程を面白おかしく描きながら、人の持つ優しさを浮き上らせているような話といったところでしょうか。
みんな、人生を生きていく中で、過去を持つ。それがその人自身の誇りであったり、苦しみであったり、色々とするが、誰もが当たり前に持っている物。
それに囚われて、頑なになったり、不安に怯えたりする人が、過去を持つことが出来ない一人の少女との出会いで、自分の未来を見出しています。
ただ、そこには悲しいお別れが。
しかし、不思議な作品だ。
泣けると上記しているが、実は大半は笑っている。
泣きそうになっても、すぐに気を抜かすように笑いで覆わせている。
絶妙なバランス感がとても心地よく、す~っと惹きこまれるような感じで観れる作品でした。
個性派揃いの登場人物が多数登場。
大企業の会長の爺さん、大貫、久保健さん(はちの巣座)。
力のある役者さんだと噂をよく聞く方。私自身も何度か拝見して、その言葉を支持します。
こういう単なる横柄な怒鳴り散らすジジイみたいな豪快な役をされると、この方がどうして力あると言われるのかがよく分かりますね。この豪快なキャラの中で、本当に繊細な心情表現をされていて、いつの間にかキャラに惹きこまれていくのです。
怖くて、優しくて、可愛らしくて・・・
当たり前ですが、人間を演じられているのだと思うのです。
素晴らしい演技でした。
記憶障害がある少女、パコ、希帆さん(劇団万絵巻)。
天使か何かなのか、この子は。背中に羽根生えててもそれほど驚かないかもしれませんね。
純粋無垢。
もちろん、演技をされていることは分かっていても、そこにあざとさみたいなものを少しでも感じたら、この作品は終わりでしょう。
徹底して、純粋である。それが、この作品の愛おしさに繋がっているのだと感じます。
医者、浅野、高峯雅隆さん。
一番、目を惹いた方です。
その立ち姿だけで、何かが伝わるようなオーラがあります。
子供のような自由奔放さと、大人の冷静沈着な真剣さを併せ持つ。
大貫の傍若無人を飄々とかわして責任逃れをしているようなところから、最後の悲しいシーンでは、自分の立場の責任を全うして、一人の大人、男として大貫と対峙する。その姿は感動的でした。
柄悪いナース、光岡、坂本えりこさん。
柄悪いというのがこの方のイメージなんていうのも失礼な書き方ですが、すごくはまり役でした。
直球で心情を包み隠さずぶつけてくる。
まわりくどいことは嫌。思ったことをそのままあからさまにする。
そんな兄貴的なところを、どこか親父のような雰囲気を出して演じられていました。
そして、恋心だけは、そんな単刀直入にいかない乙女っぽさも少し出したりして、魅力的なキャラでした。
自殺未遂を繰り返す元子役、室町、井塚かるろさん(劇団カオス)。
葛藤芝居の熱演。
若さの中にある苦悩。不安が恐怖となって押し寄せてくることから、必死に逃げようとしてしまう姿が出ている。
どうしようもない。頑張ってるけどどうしようもないんだ。といった、人生のつらさが滲み出る。
自分の過去に縛られてしまっている。パコみたいに過去を忘れてしまえるなら、その日その日を思いっきり生きれるのかもしれないけど。
だからといって、そんなことがどれほどつらいことかは、パコの姿を見れば分かること。
だから、自分はその過去を背負いながらも、明日を見て生きてみよう。そんな姿を弾けまくったオカマのザリガニ魔人として見せます。その姿は、美しさと面白さを同居させた見事なものでした。
動物好きなヤクザ、龍門寺、河田尉さん。
チンピラのいでたちの中に潜む純粋な優しさ。
ギャップの魅力を活かし、泣きを笑いに瞬転させて、拍子抜けさせる。この作品の緩急の魅力でしょうか。
語り方が上手いです。うまく惹き付けておいて、すっと離す。
噂好きなおばちゃん、木之元、土江優理さん(ar9stage)。
イメージ崩れちゃったなあ。この方の感想書く時は、だいたい優しい微笑みが好きなんて書き方してきたと思うのです。要は女神イメージなんですね。
今回、おばちゃんだもの。そして、本当にこういう人いるもの。今までのイメージが虚像で、これが等身大の現実なのかなあ、将来、こういう感じになられるのかなあとか、興味深く拝見していた。
一人芝居シーンは痛々しくて最高でした。
真面目な消防士、滝田、秋桜天丸さん(青空シアター)。
不器用そうな真面目なキャラ。
消防士にかける自分の信念もまた真面目で、常に相手のことを想うという生き方をしてきた人という背景が浮かんでくる。
最後の方で、ちょっと壊れてしまうのですが、そこは面白いです。
脚本うまいなあ。なぜに消防士なんてキャラを入れているのかが、最後のシーンで分かります。
このシーンが、今、自分に出来ることを渾身の力を込めてやっているのであろう、この方の姿を思い浮かべて感動してしまいました。
欲深い大貫の甥の嫁のナース、雅美。ことねさん(劇団万絵巻)。
こういう役もされるんだなあ。人の汚いところを押し出したキャラ。
あの眉間の皺はしばらく取れないだろうなってくらいに、嫌な表情。
この作品の面白さの一つなのでしょうが、最後に絵本の様々なキャラに扮するところ。
これまた、ドロドロっとした沼エビ魔女なんて、強烈な姿を見せます。
いまいちしっかりしない大貫の甥、浩一、松本芙部記さん(劇団万絵巻)。
この作品は、過去の病院での出来事を回想するといった形になっています。その回想を聞く人の役もされています。浩一の方は、頼りなく、ただ巻き込まれて流されていくような人。回想を聞く人は、まだ人生経験の乏しそうな若き青年。
この二役の切替えのうまさはなかなか。キャラがだいぶ違うのですが、やはり話の構成上、血のつながりみたいなものは感じさせてもらわないといけませんからね。
飄々とした変人、堀米、ゴミさん(劇団万絵巻)。
いい味出すよなあ。雰囲気あって魅力的だ。
一人浮いた感じで飄々としている姿が面白くて面白くて。その上に、タニシにヤゴの被り物。それも精巧な。
回想の話し手としても、変わらぬ自由な雰囲気だし。
話にのめり込んで、聞き手の人と同じように客も、それからどうなったのかを知りたいと思わせるストーリーテラーとしての醸す雰囲気も最高でした。
いい作品観れました。
とりあえず、アマゾンでDVDを買おう。
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