gate in コックピット【岩戸山のコックピット プレ企画】130914
2013年09月14日 KAIKA
全作品、コックピットの舞台ががっつり組まれた状態で行われる。
それも、噂には聞いていたが、かなりマニアックに作り込まれた舞台。
大喜利の様に、キーワードならぬ、舞台という縛りの中で繰り広げられる三作品。
どれも、趣向が凝らされており、面白かった。
少し、劇団色の個性が強すぎる感はあるが・・・
<以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>
・PLAT-formance:「MOBILE TAKA-6」
スーツにサングラスという怪しげな男に拉致されてコックピットに連れ込まれた男。
各国が宇宙からの襲撃に備えて、ロボットを国家予算の大半を投じて開発する時代。
ここ、日本でもそんなロボットが開発されたが、莫大な維持費、特に襲撃してくる気配も無い宇宙人の存在に疑いを持つ反ロボット派の反対運動も盛んだ。
そんな中で、連れて来られた男はこのロボットのパイロットに任命される。
スーツ姿の男は、ロボットの開発者兼、今回の作戦のリーダーである。
何でも、男の父親と飲み屋で話している時に、息子に就職先をと頼まれて、こんなことになったらしい。
自動車運転免許も無く、機体は全て木材。だから、まず免許を取ることから始めないといけないし、白アリは機体において大敵だ。
数々の人間国宝を拉致して無理やり作らせたらしい。よく見ると寄木造りや組み木造りの技法が垣間見られる。
こんな無茶苦茶な状態で、男のパイロットとしての訓練が始まる。
そして、この作戦の本当の目的が明らかにされ、・・・
東京から来られたコントユニット。
正統派のコントらしく、ボケとツッコミの掛け合いを軽快に回しながら笑いを取っていかれる。
安心した笑いで、大変面白かった。
テンポもよく、何より、このコックピットの設定を舞台の中だけでなく、時代背景にまで細やかに作り込む構成の巧みさも見事。
普段の単独公演も、幾つかのオムニバスコントスタイルで、各々うまく絡み合った感じの構成でされているのだとか。
一度、観てみたいユニットである。
・友達図鑑:「友達図鑑の逃げ出したくせに」
工場の二階を改造して、コックピット仕様にしてごっこ遊びをしている男。
娘に働けと言われながらも、ここがあるからと、動こうとしない。
妻は愛想を尽かして、出て行った。
働かないので、生活費も底を尽き、NHKの視聴費すら娘に払ってもらうしかない。
挙句の果てには、娘をヘルスで働かす。
くず。そう罵られても、反論する余地も無い。
そんなある日、義理の弟が家を訪ねてくる。まあ、今となっては元、義理の弟だが。
怪しげな水と浄水器を売りつけようとしてくる。
お金が無いので、当然、断る。
男は逆ギレ。土地があるから、家があるから、何とでも出来る。自分は何も無いから、何一つうまくいかない。姉はお前たちを捨てた。くずの夫、そして、何を考えているのか分からない気味悪い娘を。
こんなもの、ぶっ壊してやる。
その時、娘が・・・
まあ、酷い作品。面白いというか、この奇抜さを褒める言葉として、酷いという言葉を使いたい。
最初はくずっぷりを、笑いながら観ていたのだが、これだけ、くずっぷりを見せつけられると、わずか30分程度の作品だが、後半はもう勘弁してくれと、笑うことも出来なくなってくる。
くずとくずの会話はこんなにまで、人を病ませるのかと、少し驚愕した。
この負のエネルギーで、最後は、このコックピットがあるロボットが動くのではないかと思うほど。
ただ、唯一、娘と父親はどうであろうと、どこかに絆を持ったものなのかなと、家族を想わせる一面もある。
くずだからこそ、世間は見捨てても、家族は最後の最後まで見捨てない。それは、諦めに近いぐらいの家族としての覚悟を思わせる。
作品名は、くずだとか言いながらも、みんな結局、色々なものから逃げてるんだろみたいな皮肉だろうか。
まあ、何にせよ、コックピットという夢ある舞台を見事に逆手にとった、改心作だと思う。
・ブルーエゴナク:「シューピックランプ(痕)」
若い男と女。
その隣に少し年上の男。
ナナ、リナ、ミーナ、マリナ?・・・
どうやら、ナ縛りの芸名のMAXのメンバーを思い出しているのか、若い男と女は大した話題でもないのに、仲睦まじく会話をしている。
そんな二人の輪に入れず、挙動不審に二人を時折、見つめる男。
遂に、男が言葉を発する。MAXのメンバー全員の名前を。
唖然として、少し引く二人。
でも、どうやら男はリーダーらしく、露骨にそんな表情を見せることもできないみたいで、微妙な表情をしている。男はさらに、ずっと昼ご飯を一緒に買いに行くのを待っていたと。
でも、若い男も女もこの日は既に弁当を買ってしまっている。
言ってくれれば待たなかったのに。微妙な怒りを見せながらも、怒ってないと言い張る男は正直、面倒臭い。
さらには、二人が男女の間柄にあるのではないかと、そうならば言って欲しい、みんな噂してるから、自分はそれをリーダーとして祝福したいからと、とにかく執拗に喰いかかる。
扱いが分からず、いや、そんなんじゃありませんからとおとなしくしていた二人だが、リーダーがちょっとしたこのコックピットではしてはいけない行動をした瞬間に、形勢を逆転し、若い男がブチ切れる。
どうして、そんなことしたんですか。したらダメだと分かってますよね。若い男は怒号を発する。
ちょっと若い二人をやり込めて、調子に乗っていた男は、一挙にビビってしまい、部屋に取り残される。
手持ち無沙汰でウロウロする中、さらに、コックピット内では、自分一人では対処できない事態となり、・・・
理屈っぽいと言うのか、自分で決めた結論ありきのディベートしか出来ないような年配の男。
その卑屈さ加減が、真に迫っており、この作品も後半つらい。
負の力は、長期的に人をうんざりさせて、屈服の感情へと至らせるようである。
その力を発する本人さえ、その負の力の餌食にならないのなら、無敵の人間が生まれる。
恐ろしい。
人を操作するのは難しい。こんな操縦の場であるコックピットでそんなことを目の当たりにさせる話に巧妙さを感じる。
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