音速の彼方に【演劇ユニットD3プロデュース 演劇ユニット進船組】130908
2013年09月08日 インディペンデントシアター1st
舞台の迫力に、圧倒的な熱、力を感じ、惹きつけられまくった作品。
これに尽きる。
毎回、ここは熱いが、それに輪をかけて熱い。
ただ、後述するが、演劇作品を単なる想いのぶつけとするならば、それでもいいのだろう。
ロックみたいに英語で歌詞が分からないとか、とにかくシャウトして何を言っているのか分からないけど、その込められた熱き想いに心震わされることもよくあることだ。
ただ、私の場合は、どちらかというと、フォークみたいにじっくりと積み上がった心情にどんどんとのめり込んでいき、心震わされる方が好き。
歌詞の内容とかを理解しつつ、そこに込められた想いを感じ取りたい。
今回は、話自体はよく分かるのだが、設定が複雑で、全てに整合性を取ろうとすれば、ずいぶんとややこしい印象が残る。
その中で盛り上がっていく舞台の上の人たちと、話を理解しようとして観る自分の間に微妙なズレがずっと生じたままになってしまい、その熱も温度差が生まれてしまったような気がする。
愛する人がいた時代から、突然、未来にタイムトリップしてしまった女性。
全ての記憶は失われている。
女性はそこで、ある男と出会い、その人に心を委ねていく。
時が経ち、その時代ではタイムマシンが完成する。
女性はその男と共に過去に向かう。
そこで出会った男。
自分の記憶は失われているが、かつて愛した男だった。
やがて、その記憶が戻り始める。
かつて愛し、多くの幸せをくれた男。どうしようもない不安の中で光を与えてくれた男。
女性は、二人の男の間で苦しみ・・・
と主軸の話はこれだけだと思うのです。
何でタイムトリップしてしまったのか、何で記憶が無くなっているのか、出会ったある男と共になぜ過去に向かったのか・・・
タイムマシンにまつわる秘密。各々の隠された関係。
こんなことを、全て話として整合性を取るために、記憶を失っている少女、時空管理局、時空海賊などの様々なキャラが登場して、話を膨らませていきます。
正直、膨らみ過ぎで、頭の中が完全にキャパオーバー。
観ながらも、その設定や整合性を理解するために頭を回転させていたら、話は先に進むということが繰り返され、完全にショートしました。
これは私には厳しいです。
本とか、ビデオで観返すということが出来ないと。
ただ、さすがだなと思うのは、こんな状態で漠然とした理解の中でも、後半に向けて、話は熱さ溢れる状態になり、とんでもない感動を生み出します。
後半の役者さんの熱演たるや、話の理解もくそもない。この想いをそのまま心で受け止めろといったぐらいの真剣な熱さが伝わってきます。
逆に、きちんと観れて、心情の積み重ねが出来ながら、ラストを迎えていたら、立ちあがれないくらいの感激状態になっていただろうと感じます。
演劇の醍醐味を味わせられたといったところでしょう。
物語の筋を理解するといったところより、心に響く一言を感じ取れば、それだけでその作品の魅力が心に残ることもありますし、やっぱり、後で、こうしてあらすじが書けないということに残念な気持ちが残ったりもします。
このバランスは難しいでしょう。
観る側の観方や、性格とかもありますし。
今、想っている気持ち。
これは、過去には無かった気持ちなのか、未来では消えてしまう気持ちなのか。
その時、その瞬間に宿る気持ちなのでしょうか。
そして、その気持ちは今、出会った人の心しか動かせないのか。
この作品では、その答えを導き出そうとしているような感覚を得ます。
当日チラシには自分たちそのものみたいな話と書かれているが。
女性視点なのかな。
例えば、旗揚げぐらいの時に、自分たちを変わらぬ愛情持って応援し、支え続けてくれた周囲の人達。時が経ち、そんな頃の記憶も心に深く刻まれているとはいえ、少しずつ薄れていく中で、これからどう進んでいこうかと行き詰まった時に、新たに支えようと手を差し伸べてくれる人達。
どちらも比べることができない、比べる必要もない大切な人達。
そんな人達に囲まれている中で、自分はどこへ向かうのか。
原点に立ち返る、新たな道を切り開く。何かしらの選択が必要となる。
でも、それは、どちらかの人達を捨てるということではなく、自分が自分らしく、幸せになることである。そのことが、昔も今も、さらにはきっと未来に出会う自分を支えてくれる人達に応えることなのだろう。
と、いったような。
タイムマシンが、時を越えて人を繋げる演劇作品。記憶を失った少女は、入ってくる、又は巣立っていった役者さんか。時空海賊は、新鋭若手劇団勢力、時空管理局は演劇規制の波みたいな。
そもそも、この作品の登場人物は、自分が本来いるべき時代から、意思とは別に離れてしまったが、記憶を無くすということで、その行き着いた時代で懸命に生きている。
色々な人達が融合している。
どうであろうと、共に創り上げる時代の輝きのようなものをイメージさせられる。
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コメント
先日はご来場ありがとうございます
演劇ユニット進船組の杜山です
こうやって作品の事を書いて頂けるのはありがたい事です
前回は劇団pinocchioのhelloagainという芝居でも書いて頂き非常に参考になりました
あの時は脚本家としてありがたかったです
今回もさすがの観察眼だなと唸らされました
自分達の考えていた事を書かれているなと
ストーリーは分からないかもしれないけど
終わった後に分からなくても何かが伝わる、そういうロックのコンサートみたいな事がしたかったので
プロならば駄目なのかもしれないですが
アマチュアだからこそ出来る
そういう芝居を作りたかったのでそういう意味では良かったのかな?と
非常に見辛い芝居だったとは思いますが
ご来場頂きありがとうございました
投稿: 杜山ヨシノリ | 2013年9月11日 (水) 23時43分
>杜山ヨシノリさん
コメントありがとうございます。
今回はこれまでに輪をかけて熱量が凄い。
頭クラクラするくらいの、舞台上での真剣に想いをぶつける役者さんの熱き姿から、何かを心に感じるような作品でした。
ストーリーも少し落ち着いて整理すれば、ある程度はきちんと把握できるんですけどね。
そこにこだわってしまうのは、私の性格ですね。
今回、皆さんがこの作品を通じて見せたかったもの、目指したものは、心に響いていると思っています。
また、本公演、客演などで、皆さんのお姿を拝見できるのを楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2013年9月12日 (木) 11時58分
いつも、感想ありがとうございます。
杜山くんがコメしてたので私も(笑)
今回も観にきていただいたのに挨拶できませんでしたね。
次は必ず呼び出してください。
脚本的には当て書き&稽古しながら書くってのと、タイムマシーンやら未来やらありまして、色々悩みました。
設定とか説明とか…
結果、今回はあらすじなど、内容を書ききれないようにしてやろうと…
嘘です(しっかり書かれてるし…)
しかし、演出的にはやりきりました。
良い悪い、好き嫌いは置いといて(おいとけないですか?)
熱量芝居、生き様芝居
にしました。
伝えたいことは伝えられた気がしています。
また、機会がありましたら、次回公演もご来場くださいませ
ありがとうございました
〜演劇ユニットD3 高木〜
投稿: D3の高木です | 2013年9月24日 (火) 19時10分
>高木啓介さん
コメントありがとうございます。
ご無沙汰しております。
まだ、お顔を把握していなくて、どこかにいらっしゃるんだろうなあと思いながら・・・
まあ、これからも多分、観続ける劇団になってしまっているので、お会いできる日も来ると思います。
生き様を伝える。豊富な熱量で。
そのことは、しっかり私も感じ取れているように思います。
また、作品を拝見できるのを楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2013年9月26日 (木) 10時06分