青い紙魚【ベビー・ピー】130815
2013年08月16日 京大西部講堂前広場 特設テント
ここは、物語を壮大に創られますね。
昨年、拝見した四谷怪談も宇宙みたいなことを感じさせられる大きなものでしたが、今回は人が生きてきた歴史を祭儀の視点から大きく描いているようでした。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/120629-fecd.html)
大きな歴史の流れの中に、今、存在する自分と、流れてきた自分、流れていく自分みたいな感覚が得られ、何やら自分を含め、全ての物を崇拝したくなるような清らかな心地になりました。
チャタという娘と、祖父、その弟、そして、ある医者の世界を股にかけた、時を超えた壮大な物語。
とてもあらすじは書けない。
後で完全に忘れてしまうのも困るので、覚書として記しておく。所々、無茶苦茶になっていると思うが。
ソビエト連邦崩壊でもうすぐ無くなるカカメラという国出身の女性、チャタ。
遺跡で見つけた何でも食べる紙魚を持って、日本の祖父の下へと向かっている。
日本には幼き頃に、祖父の弟の葬式で行ったきり。
大事な物は虫に食べさせる。そうしたら、虫にそれが宿るらしい。祖父がそう言っていた。
南米チリを出て、ドバイ経由で日本にたどり着く予定だったが、騙されたり、変な人に出会ったりで、色々な国を彷徨うことに。
結局、自分の国の国技に似た相撲のようなことをしている一団に出会い、モンゴルまで馬で向かう。
祖父は幼き頃に、弟と一緒に納屋で見た紙魚に所々を喰われた世界地図見て、その穴の向こうにあるものを見ようと街を開発する仕事に就いた。
二人の父は、気が狂っていて、突然、亡くなった。
墓を掘り返すと、その肉体は虫に喰われ骨になっている。食べた虫は、その人の精神を宿らせているのだろうか。
弟は、父の跡を継ぎ、乾物屋を大きくし、漢方薬などにも業を拡げた。寺角製薬とかいう会社を創ったりして。
父の死後、疎遠になっていた二人だが、各々、仕事でクンサンを訪れていた時に出会った。
祖父はこの地で結婚をする。きっかけは弟が路上販売していた七味を奥さんが購入したことから。
普通に街開発に携わっていたのだが、急に大きな穴を掘る仕事を命じられる。この国の使い物にならなくなった人たちを葬る穴。
弟は、仕事柄、この国の裏の人と懇意にしており、そんな祖父の行動を否定し、止めようと試みたが、結局、穴は出来上がった。
そして、祭りの日に、多くのこの国の人は穴に埋められ、祖父はその騒ぎに紛れてこの国を離れ、また、違う所で穴を掘り続けた。
昔の話。
弟はもう亡くなり、祖父はなぜか、今、モンゴルにいて、産業廃棄物を燃やす穴に立て籠もっているのだとか。
高速道路開発のたびに、立ち退かされて開業した医院を更地にしてしまう医者。
今回は、だいぶ抵抗している。お金はもらってしまっているから、もうダメなのだが。
ある日、訪れた怪しげな寺角製薬と名乗るMRに、飲むと気持ちが高揚する薬を手渡される。
調子が出てきて、開院していると、また、怪しげな婦人が訪ねて来る。
紙魚に噛まれたとか。そして、その紙魚は逃げてしまった。シルクロードをはるばるやって来た特別な物で、探して欲しいと。
昆虫に興味のあった医師は、いつの間にか紙魚を探す旅に出ることになる。
結局、見つからず、医院も強制開発で更地にされている。
しかも、刑事が周囲をうろついている。
あの薬がいかがわしいものらしく、下手したら死んでしまうのだとか。紙魚を潰して飲めば助かるとかいう情報もある。
その紙魚も国内の持ち込みは違法なのだとか。
MRも、婦人も海外に高飛びしてしまい、医者は一人取り残される。
時を超えて、世界をまたがり、交錯するチャタ、祖父、医者の運命は・・・
少しミュージカル調で話を展開している。
そのテンポの良さは、時間軸を行ったり来たりして、空間も色々な所へとめまぐるしく変化するのだが、なんだか一緒に旅をするかのように感じられる。
役者さんは6人。
各々、メインの役どころはあるが、他にも多様な役をされる。
その切り替えは驚くほど巧みである。
高速道路開発の立ち退きのような小さなところから、戦争による侵略の歴史、政治的な国の解体・・・
経済事情や政治的事情での家族の別れ、死による永遠の別れ・・・
そんな消えゆくものが、いつまでもどこかで繋がっている。
失ったわけではない。
その時の人の想いは、時も場所も超えて、必ずどこかにこれからもずっと残り続ける。
巡り巡る循環の世界。
自分もそんな大きな世界の一つとして存在していることへの自尊と、今の自分にたどり着くまでの様々な人たちへの感謝、これから生きた自分の証である想いが紡がれていくことへの願い。
こんなものを、人は祈って、祭りをするのだろうか。
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