インフィニティ・エイト【劇団SE・TSU・NA】130810
2013年08月10日 インディペンデントシアター2nd
今年200本目の記念観劇。
・・・だったのだが、非常に残念な感想となった。
厳しい感想になるが、一言で書くと、面白くない。
この劇団の作品にしては珍しく、全くその世界観にはまらなかった。
過去の過ちを知らずうちに封印していた人たちが、自らが作り出した悪夢の世界の中で、その記憶を取り戻して行く。その中で、人の持つ妬みや自己本位な嫌なところが露骨に描かれるのだが、同時に人を想う優しい気持ちや生きるということへの強さも浮き上がる。
決して嫌いな話では無い。
主要6人の女優さんは、そのキャラを各々、上手く引き立たせており、その掛け合いはコミカルな中にも、各々の心の中で渦巻く負の感情も感じさせられる巧みなものである。
楽しく花咲く懐かしい思い出話から、記憶があいまいという不安感を煽り、そこから徐々に影が現れ、不思議な世界へと連れて行かれる。そこは夢魔がはびこる悪夢の世界。
楽しかった世界から一転、おどろおどろしい世界へと変わるのかと思ったところで、魔法少(?)女というエンタメ色豊かなキャラ登場で光と影のバランスを保つ。
その悪夢の中で不思議使いとやらにより、各々の影の部分がどんどん明らかにされていき、完全な暗闇に突き落とされる。自分たちの学生時代の嘘と罪によって導かれた当然の結果。
でも、そこに光を挿し込ませ、暗闇から抜け出させたのも、自分たちが学生時代に培った友への真摯な優しい想いであり、そして、今を生きなくてはいけないという強い意志だった。
人の嫌なところをしっかり見詰めた上で、それでもどこかにある人の優しいところ、強いところを見出すような話になっている。
舞台は空間をフルに使った面白いセットが組まれる。それが夢魔との対決において、臨場感あふれる世界を創り出している。
多分、面白くないと思ったのは、感覚的なのでよくは分からないのだが、下記のようなところだろうか。
話自体は、よくありがちな設定であり、目新しさは全く感じない。
変に小難しい科学的要素を設定説明の言葉として入れ込んでいるので、わざわざ分かりにくくしている感がある。
また、魔法少女のようなキャラを登場させているのも、綺麗な女優さんたちの可愛い姿が見られることは、この上なく嬉しいことではあるが、これも無理にエンタメ要素を持たせているような悪い印象が残る。
この劇団は、sideAとsideBに分けて作品を創られる。
今回はアクションや仕掛けを盛り込んだエンターテイメント性の強いファンタジーというsideAに分類されている。
確かにこの作品はそれに合っているが、逆にここに固執し過ぎて、伝えたい部分が薄れてしまい、焦点がボケてしまっているのではないだろうか。
言葉は悪いのだが、無理に作品のコンセプトに合わせたようなあざとさが見え隠れして、どっぷりと作品の世界にはまり込めなかったように思う。
廃校間近の高校に、偶然、母校を訪ねてきた同級生たちが出会う。
シンクロニティ。偶然ではあるが、集まるべくして集まったという、これから描かれるこの同級生たちの因果をほのめかしている。
両親が亡くなった後、苦労したけど、今は小さなワインバーで働いている女性。昔と変わらず、才色兼備のしっかりしているイメージがある。
昔はガサツだったのに、今や一児の母親。唯一の既婚者。しかも、バスケ部の憧れの先輩を射止めているのだから、男に安らぎを与える奔放な気楽な性格が良かったみたいだ。
婦警になっているのは、当時から運動神経に長けていた女性。今でも、思い立ったらすぐ行動みたいな感じ。いつもみんなのことを考えているリーダー的な存在。
保育士になった女性。ごく普通の明るい子。この普通な自分が嫌なところもあるみたいで、能力に秀でた同級生に憧れと嫉妬を抱いている。
小さな出版社で絵本作家として活躍する女性。昔は眼鏡に三つ編みというもさい感じだったらしい。
モデル兼デザイナーとして活躍する女性。誰も気付かないくらいに垢抜けたみたい。昔は絵本作家の女性と同じように内気で目立たない存在だったが、すっかり一番目を惹く存在になっている。
集まった6人。
学生時代の思い出話に花を咲かせる。
記憶があいまいなところもあるが、話しているうちに思い出したり、どうしても思い出せなかったり。
記憶を食べてしまう影男なんていう不思議話もあったのでは。
そんな話をしているうちに、いつの間にか集まっている教室に異変が起きる。
影男が現れ、自分たちを襲ってくる。
これは悪夢なのか。
6人。
本当に6人だっただろうか。
奇数だったのではないか。それを思わせるエピソードもある。
だとしたら、もう一人がこの悪夢の中を彷徨ってしまっているのでは。
探しに行こう。
でも、また襲われたら。
大丈夫。ここは夢の世界。
学生時代にみんなで創った魔法少女の芝居。
私たちは魔法少女になって、そんな奴らと戦えるはず。
悪夢の世界で、もう一人の友達を探し出すバトルに向かう6人。
しかし、この世界は自分たちが創り出した悪夢の世界だった。
この世界の真相は・・・
DVDが販売されるみたいなので、詳細はそちらで。
舞台セットの面白い臨場感がどこまで再現されているかは分かりませんが。
魔法少女のアクションや、バトルシーンの様々な仕掛けは、見どころになっていると思います。
話としての感想は上記したとおり。
楽しい同級生たちの会話から、徐々に雲行きがおかしくなっていき、気付けば悪夢なんていう話の展開はとてもスムーズで観やすかったとは思いますが、そこからの惹き込みがいまひとつだったように思います。
そのせいか、ラストの取り返しのつかない嘘や罪への悔い、友への想い、生きていく覚悟などが交錯する心情表現にもあまり心を揺さぶられませんでした。
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