« くろい紙に文字をかく【ProjectS∀S】130824 | トップページ | E&LP~死刑執行、そしてLINEPOP~【らぞくま】130825 »

2013年8月26日 (月)

許される許されざるに拘らずただ足枷の花束を抱いて【兎桃企画×劇的集団まわりみち'39×菅原ゆうき 】130825

2013年08月25日 ステージプラス

恋愛、好きの価値観の相違がぶつかり合うような話。
みんな、それぞれの人生の中で様々な経験をしているから、異なって当たり前。でも、好きだからこそ、分かり合いたい気持ちも芽生え、互いの好きをどう収めるかを描いているような感じかな。

4人の役者さんがそれぞれしっかりした恋愛の価値観を持ったキャラとして、心情込めた言動がぶつかり、かなり惹きつけられる作品となっている。
見応えがある舞台だった。
ただ、これは仕方が無いところもあるのだが、今回、すごく気になった。
シーン切り替え。
スタイリッシュな転換にしたり、何処かに視点を集中させている間にセットを組んだりと、巧妙な手法を使う一方、暗転の中でドタバタということも多く、この繰り返しが、いつの間にか、暗転のたびに、惹きつけられていた舞台から、一瞬引いてしまう結果となった。
役者さんの演技力や、話の魅力からは、もっともっとのめり込んで観ることが出来たような気がする。

もう一度付き合って欲しい。
喫茶店で告白する男。
かつては同級生で、学生時代に付き合っていたみたいだ。
驚きを隠せない女性。私はあなたが思っているような人では無いかもしれないと念を押しながらも、付き合うことを了承する。
男は幸せの境地だろう。女性も素直に嬉しそうだ。

一方、ある小さな会社の事務所。
遅くまで仕事をしている二人。
危ないし早く帰れという上司に、女性は明日も大きな仕事があるからと言って、なかなか仕事を辞めない。
そんなに危険だと言うなら、送ってくれればいいのに。何気なく言った言葉だったが、上司は本当に送ってくれる。
何となく好意を持っていたのか、女性は少し満足そう。

小さな幸せが生み出されそうな何気無いカップル。
でも、その中に、潜んでいる大きな問題があった。
喫茶店のカップルと、事務所で働く女性は同級生で友達同士。
そして、上司は喫茶店で告白された女性と一緒に住んでいる。
一緒に住んでいる人がいるのに、求められたからと言って付き合う。相手も、それに対して何も言わない。これでは、告白した彼がかわいそうだ。
いくらなんでもおかし過ぎる。
その関係に気付いた事務所の女性は、常識というものを言及するが・・・

色々な考えがあるから、非難される筋合いは無いという女性。上司も何がいけないのかといった感じ。
事務所の女性の価値観が崩壊していき、どうなっているのかとパニックになる。相手の価値観を崩すことが出来ない自分がおかしいような感覚に至っている。
告白した男は、かつてこの女性との間に子供ができ、勝手に堕胎されてしまった経験があり、彼女がこういう人の付き合い方をするようになった原因が自分にもあると考えているのか、比較的、冷静に彼女を見詰めた行動を取り、彼女にとって最善の選択に導いている。
最終的には女性は懐妊していて、女性がこれまでとは異なる人との付き合い方を求めるようになっており、そんな自分に対して不安定になっている彼女を上司が受け入れている。

少し似た恋愛経験をしたことがあり、何となく当時を思い出しながら、興味深く見ていた。
確かにこういう人はいる。
一般的な感覚ではどう考えてもおかしいだろうという人との付き合い方をする人が。
まあ、相手にしたら、その一般的感覚って何なのよってことなのだろうが。この作品と同じように。
人を好きになることから逃げているのか、逃げなくてはいけないような厳しい経験があるのか。
元々、好きじゃなかったのか、好かれてなかったのか。
好きのなり方が悪いのか、もっと大きな好きじゃないとダメなのか。
幸せから常に一定の距離感を必ず保たなければいけない、幸せ真っ只中には入ってはいけないような感じで振る舞うので、どうしていいのか分からなかった。この作品で言えば、損な生き方をどうしてするのかといったところか。
結局、事務所の女性と同じように、その人から距離を置く形を取らざるを得なかった。本当は、歩調を揃えて、幸せの中に入り込みたかったが、この作品の告白した男のような行動は取れなかったし、上司のようにもなれなかった。まあ、上司の場合は、懐妊というきっかけが幸いしているだけのような気もするが。

未だに自分の中で答えなんかは全く出ない。
たまに思い出すけど、その感覚には未だ同調することは出来ないでいる。
もしかしたら、この作品を観たことで、数年の時を経て、答えがもらえるのではなんて、期待したが、残念ながら、そこには至らない。変わらず、心モヤモヤだ。
相手にどうしてあげれば良かったのかな。自分はどうして欲しかったのかな。
事務所の女の子の力不足という言葉が響く。

ただ、これまでも思っていて、この作品を観て、改めて思うのだが、幸せになる権利ってやつは、遠慮せずに当たり前に持っていないといけない。
それを放棄するべきなんて経験は存在しない。そんな経験を無駄に足枷として捉える必要は無い。
もっと厚かましくなるべきだ。
そして、心がけているつもりなんだけど、守れているかな。この作品の上司みたいに、卑怯とも思えるような好きに逃げていないか。いや、こう書いているのは心当たりがあるから、そう書いている。多分、そうなっている。楽だから。結局、こういう人の好きになり方は甘えで、いつでも好きを覆せるから気楽なんだと思う。歳をとれば、一人でも巧くやっていく手段も自然と身についちゃうので。
人を好きになることには覚悟が必要だ。
少なくとも、今のその人を好きになるのではなく、その人のこれまで、これからも好きになるつもりじゃないといけないように思う。

作品中に求める答えは導き出せなかったが、久しぶりに人を好きになることを、自分の中で、今、どう考えているのかを反芻できたように思う。

|

« くろい紙に文字をかく【ProjectS∀S】130824 | トップページ | E&LP~死刑執行、そしてLINEPOP~【らぞくま】130825 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 許される許されざるに拘らずただ足枷の花束を抱いて【兎桃企画×劇的集団まわりみち'39×菅原ゆうき 】130825:

« くろい紙に文字をかく【ProjectS∀S】130824 | トップページ | E&LP~死刑執行、そしてLINEPOP~【らぞくま】130825 »