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2013年8月24日 (土)

夏蜘蛛【飴玉エレナ】130823

2013年08月23日 元・立誠小学校 音楽室

ここのせいじゃないだろうか。
観ながら思っていた。
最近、私が一人芝居の感想だけ、妙に厳しくなっているのは。
今年、1月に拝見した一人芝居で、こんな凄い一人芝居もあるのかと感動したのが未だ尾を引いているような気がする。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/130108-fa45.html
ここ基準で観たら、そりゃあそうなる。
絶品クラスだもの。少し切り離して、観るべきかもしれない。

演じる山西竜矢さんの魅力はもちろん、舞台セット、音響や照明との巧妙な連携が観ていて、とにかく凄いわと声に出しそうなくらいになる。
今回も同様。
特に、今回は故郷を想う優しさに溢れる作品となっており、最高に素晴らしかった。

<以下、ネタバレするので公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

大学を卒業して久しぶりに田舎に帰省した三村知樹。
都会では当たり前のセブンイレブンに気を張ってお出掛けといった感覚のド田舎。
幼き頃は病弱だった兄は、まだ地元に住んでいる。
兄の物とごちゃ混ぜになった荷物を整理している。自分は見たことの無い漫画。兄はそんな物、読むような人では無かったけどな。
荷物を整理しながら、昔を思い出す。
押し入れから、色褪せていない新品のような白い傘が出てくる。
この傘は・・・
返せぬままに終わったこの傘の持ち主との心ざわつく思い出。
外からは祭りの太鼓の音が聞こえる。

  

公園。
元木さん。
ゴミ捨てるな。そんな何ともない看板を互いに見ていた時に声を掛けられ知り合った。
いつも笑って明るい人だった。
くだらない嘘をつく人だった。自分の名前も木元なんて言ってたっけ。
小学五年生の夏。
祭りに一緒に行くと約束して、待ち合わせ場所に向かったが、人だまりができていて、元木さんはその中で倒れていて、赤い光が見えて・・・
恐くなって、家に逃げ帰った。
それ以来、元木さんとは一度も会っていない。
一緒に行くはずだった祭りも行かなかったし、返すはずだった傘もそのままになった。

  

知樹は心の中に押し込めてしまっていた元木さんとの思い出をたどるために、地元の人たちに元木さんのことを聞いて回る。
今は小さな工場で、持ち前の調子の良さを活かして、いびられながら、可愛がられながら、頑張ってやっている同級生。
あの時、倒れた元木さんを見たらしい。急にバタンと。元木さんは、あの後、亡くなったらしい。

  

地元のシャッター商店街になりつつあるところで、今も精肉店を営む年配の男。
寄る年波には逆らえず、コロッケもまともに作れないのだが。
元木さんは幼き頃はあまり愛想の無い人だったらしい。可愛げがなかったのかな。
都会で仕事をして、病気になって地元にもどって来た。肺癌だったらしい。
最期は自分の故郷を選んだのだろう。
だから、あの夏は、元木さんにとって最後の夏だった。

  

元木さんの隣に住んでいた女性。
とにかく、元木さんは不思議な人だったみたいだ。それでいて、洗練されていたみたいな。
話を聞くこの喫茶店。元木さんの家の目の前だが、一度も利用しなかったらしい。出会って5年して、縁がなければ近づかない方がいいのだとか。昔からやっぱり少し感覚がおかしい。
そして、話を聞くこの女性もちょっと天然の変わった女性だ。

  

家に戻ると、兄がいる。
久しぶりの再会なんだからもっと喜べなんて言いながら、自分が帰省していなかった間のことを色々と話される。母はおかしな日本舞踊にはまっているみたいだ。
整理して出てきた漫画。そのことを話すと、もらい物だと答える。
ずっと入院していた兄は、そこで出会った兄のような人と話すのが楽しかったらしい。名前は木元さん。
あまり覚えていないが、一つだけはっきりしているのは、入院中に亡くなったこと。
何でも、新しく出来た友達と祭りに行く日に亡くなったのだとか。

  

公園。
今でも、ゴミ捨てるなの看板が生き残っている。お前はまだいてたのか。
知樹に、元木さんのこと、そしてあの日のことが甦る。
彼は、今まで生きていたことが全部、思い出なのだと語っていた。
死を前にして、生きてきた時間、場所が全部、尊い故郷なのだと感じていたのかもしれない。
幼き頃は分からなかったが、何かを伝えたかったのだろうか。
これから生きていく知樹に、出会った自分自身をそんな思い出の欠片として欲しいという願いを込めていたのだろうか。
未来の知樹にとって、大したこともなく、しょうもないものだけど、でも懐かしい故郷のような存在となって、自分が誰かの心の中で生き続けられればと願っていたのだろうか。
祭りでの亀釣りの話。そんな話から、じゃあ祭りに行こうかってことになったのだっけ。
そう。雨が降っていたので、傘を貸してもらった。
その傘を見て、元木さんは蜘蛛の巣みたいだなと。
迫る死に囚われる漠然とした不安だったのか。それとも、短き時ではあったが、自分で紡いできた運命の糸の一つの完成形を見出したのか。
何でも、傘は科学者が蜘蛛の巣を見てひらめいて出来た物らしい。
そんな雑学も教えてくれる、優しい人だった。

  

東京に戻る知樹。
祭りの音はまだ聞こえる。
母親を連れて、ちょっと行ってみようか。亀釣りでもして。
そして、あの傘は持って帰ろう。

  

田舎に戻った三村知樹が、過去の元木さんとの回想を交えて、地元の人たちと過去をたどる旅を描く。
一人芝居なので、当然、登場する地元の人たちは、同じ役者さんが演じる。
三村知樹自身を演じながら、その知樹視点で映し出される映像のような形で他の登場人物は描かれる。
このキャラの切替は絶品。普段から、すごく人間観察されているんだろうな。ちょっとした仕草がとても美しい。それでいて、ちょっとした笑いも組み込んでおり、楽しく一緒に過去を遡る感じだ。
元木さんをたどる旅の中で、登場する地元の人たちの姿が、田舎の風景を想像させ、どこかノスタルジーを感じながらの話の展開となる。
元木さんのことが明らかになると同時に、知樹の中で、この田舎のこと、そこで育った自分のことも見詰め直され、一人の人間が舞台で生まれたかのような感覚を得る。
 

  

元木さんみたいな人と、人はみんな会っているのかな。
誰かしら、自分の元木さんみたいな人がいるのかな。
自分に影響を与えたけど、記憶の中で封印してしまっているような。
知樹はきっと気付いていなかったけど、元木さんの影響を受けて、これまで生きている。だって、仕草がすごく似ているもの。
故郷を想うことは、そんな今の自分を創り出したモノと再会するようなことなのだろうか。
自分のルーツをたどるみたいな。
振り返るからこそ、新しい道が開ける。
自分の原点はどこにあるのだろう。そんな不思議な感覚を得る作品だった。

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