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2013年8月 1日 (木)

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2013年07月31日 FOLK old book store

この作品にぴったりの空間で繰り広げられる不思議な時間。
張り詰めた空気の中での静寂な時。
本を読む感覚で見せるという演出だろうか。
いつの間にか、本を読む時と同じような感覚となり、舞台関係なく、自分の世界に浸る。
色々なことを空想しながら、自分の時を過ごした。

<以下、特殊な演出に関して、記してしまっているので、公演終了まで白字にします。公演は土曜日まで>

古本屋。
公演場所自体が本当に古本屋なので、そのまま店が舞台セットとなっている。
店主らしき人が、レジなのかな、音響ブースみたいになっているんだけど、そこに座っている。
女性3人が、思い思いに本を手に取り、読んでいる。
店主が女性たちの頭にマイクを近づけてみると、読んでいるページの声が聞こえる。
男が入ってくる。
男も本を探して、気になった本を手に取ろうとする。
女性たちは静かな表情で本を読み続ける。
男が、ふと、気付くと本を読む女性たちの心の中がこの本屋の中に露呈する。
一瞬の幻想。

  

一人の女性が手にした本を見ると、それは自分が持っていて、この店に売った本。
声を掛ける。
読み終えたら、二人でこの本について語りましょう。
一冊の古本が繋げた男と女の心。
本を読む時は、孤独な世界。
でも、その世界から得た心は、同じ本を読んだ人の心と繋がる。

  

舞台は地下室へと移る。
本当にこの店の地下室へ移動する。
そこでは、女性たちが本を読んでいる。
本を読めば、どこにでもいける、どんな時間でも過ごせる。自分の頭の中でどんな世界でも繰り広げられる。
男も降りてくる。
よく分からないが、豆腐作りのレシピ本を聞かされ、出来上がった豆腐を食べさせられたり、色々な物がぐちゃぐちゃに合体したけったいな創作童話を聞かされ、どうしていいのか分からずあ然とさせられている。

  

男は、先日、彼女の部屋に行った。
古本屋の地下には秘密の本棚があるという。店主が入手したお気に入りの本を売ることなく、自分の本棚に並べているのだとか。
彼女にもきっとそんな秘密の本棚がある。
色々な彼女。でも、その秘密の本棚の中に、彼女の心を掴みとれるものが隠されているような気がする。

  

再び、店に戻る。
静寂の時。
女性たちは、また静かな表情で本を読んでいる。
男は想う。
自分に余裕が無くなり、本と離れていた日々を。
本に秘められた、この本を読んだ人の心。
それを垣間見るかのように、ページをめくる。

  

本のページをめくって読むことは、その本に宿る世界の冒険。そして、その本を読んだ人の心を巡る旅でもあるいうような感じだろうか。
そんな本という不思議な存在を通じて、女性の心に触れたいと思い始める男のほのかな恋を絡めている。

  

女性との出会いで、本の上に置かれた檸檬はやはり梶井基次郎だろうか。
檸檬を使って、女性たちが不思議な動きをする。何か、これから動き出すといった感じの。
本屋で、何か気になる一冊の本と出会った時の喜びは、運命を感じさせる女性と出会った時の高揚と似ているように思う。
ラストも同様なシーンがあるのだが、その時は檸檬無しで動いている。
よくは分からないが、梶井基次郎の話から考えると、檸檬は喜びでもあるが、自分の憂鬱みたいなものも表現しているみたいである。
余裕が無くなり本から離れていた男に、少し心理的な変化がいい方向に向かっているようなイメージかな。

  

女性3人。
最後に男が彼女たちというセリフを言われたので、やっぱり素直に3人の女性なのかな。
地下室に連れて行かれて、しばらくして、この3人は同じ女性だなと思ったのだが。
やたら、シンクロしているし。
人を本棚に見立てたら、そこに色々な種類の本があるように、その一冊一冊が3人の女性の姿として描かれているのではないか。
男は、その中の一冊を手に取り、気になる存在となった。その本棚が。
でも、そこにある本は、自分がイメージしたとおりの物もあるが、随分と自分と遠く離れた物もある。
本棚にある本を全部読んで、全部好きになるなんてことは出来ないから、その中核となっているであろう、秘密の本棚の大事な一冊を読みたいなんて男は思ったのではないだろうか。

  

本はその人の心。いくら時を経ても、その本に宿る心。
本と出会うこと、読むことをそんな心を巡ることとして捉えたような、不思議な感覚の作品だった。

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