HPF2013 総括
昨年に引き続き、講評委員として参加させていただいた。
名前を名乗らないのも失礼な話なので、あまり出したくはないのだが、一応、記しておく。
講評委員リストに評論家として書かれている久保健太郎と申します。
評論家などと大層な書き方をされているが、医療法人再生未来というクリニックで、がんなどの再生医療の治療を仕事とする、5年前から関西小演劇を中心に観劇を楽しませてもらっている、単なる一般客である。
私自身は演劇経験が全く無く、作品を創る、公演を行うということが、どういうことなのかを知る経験をしていない。
そのため、講評の域には達していない、出来上がった作品の単なる感想でしかないことはご容赦いただきたい。
ご自分方が必死に創った作品が、普通の観客にどんな魅力を与えて、心を揺さぶったのかを感じていただき、やり遂げた成果に大きな自信を持っていただければ幸いである。
以下に、拝見した作品の感想記事のアドレスと、簡単なメッセージを記しました。
今年度は9本観劇。
今年は比較的、既成脚本での公演が多かった印象がある。
オリジナル、既成脚本に関わらず、高校生である方々が、その作品を通じて、今の自分たちを見詰めた結果、どのように人生を歩んでいこうと思ったのかを伝えようとしている点は共通しているように感じる。
そこには、不安や恐れ、場合によっては絶望すら感じるのだか、それでも、強い覚悟を持って生きていくことに臨むという姿が描かれている。
その描き方が、これまでに出会った人への感謝であったり、未来への希望だったり、過去の人の信念であったり、自分への揺るぎない信頼だったりをベースにしているようであった。
まだ揺れ動く多感な時期に、自分を見詰め、そこから過去、未来と時を超えての人の繋がりを感じさせる作品などもあり、生きる、生きていくということに、もう年配である自分自身も深く考えさせられる時間でもあった。
作品の感想は、基本的にいい所を拾い出して観るようにしているので、全て褒めたような形になっていると思います。
これは別に高校演劇だから特別にといった理由ではありません。
上記したように、様々な演劇的な技術面の未熟さを言及するには、こちらの知識・経験が追い付いていないからです。
基本的に高校演劇は、その熱意、魂を込めた情熱が作品から強く感じられなければいけないと思っています。ご自分方が、今、伝えたいことを演劇を通じて、自分たちのスタイルで真摯に見せる。見せるのは客でもあり、自分自身でもある。
自分たちの想いを伝えようとする熱意がないところは厳しく感想を述べようと思っています。
これが、昨年に引き続き、結局一校もありませんでした。
洗練されていたり、無骨だったり、稚拙だったりと色々しますが、全て、自分たちなりのスタイルで懸命に訴えかけてくる演技、作品創りが出来ているのでしょう。
ちなみに、褒めてあげようなんて気持ちは特に無く、凄いねえ、感動したなあといったところをそのまま、感想として記しているだけです。
発声、立ち振る舞い、シーン転換、照明、音響、・・・技術面での未熟さ。
素人には分からないとはいえ、やはり、何か気になるなといったところも多数あります。
惹きこまれて観ていたのに、急に醒めてしまうことも。
講評委員席に座っていると、お隣がプロの講評委員だったりします。
いい作品に仕上がっているからこそ、その技術的なところが惜しいという声も。悔しがられている方もいらっしゃいました。
講評会での指摘を真摯に受け止め、是非、ご自分方の肉として欲しい。
きっと、こういったものがより改善されることで、私のような客は、もっともっと、演じられる作品に心を動かされることになると思います。
そして後輩たちに、伝えていき、紡いでいくことで、毎年、向上していって欲しいと願います。
きっとそんな積み重ねが、今まで以上の感動を生み出すはずです。
どの高校もそれぞれの個性を持って、素晴らしい作品を演じられていると思いますが、中に見られる圧倒的な凄さを発揮するところは、きっと、こういったことを大切にしているのだと思います。
・Dear~「ありがとう」を君に 大阪信愛女学院高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/dearhpf130722-6.html)
生きることの意義を優しい気持ちで描いている素敵な作品でした。出会った人たちへの感謝の気持ちが生きることの喜びに繋がる。人として誇らしい気持ちになります。
・僕たちの好きだった革命 淀川工科・長尾谷高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf130723-2b5d.html)
大作でした。自分が正しいと思う道を貫いて、未来を信じたい。そんな情熱が言葉となって溢れ出てくる力強さに感動しました。
・死神 ~古典落語より~ 北摂つばさ高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf130724-0246.html)
テンポの良さは秀逸で、恐らくは重ねた稽古が生み出した技に魅せられました。人間の内面を深くえぐって、それを残酷に見せる作品でした。
・星めぐり ~『銀河鉄道の夜』より~ 大阪女学院高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf-7548.html)
高校生が等身大で描いた銀河鉄道の夜になっていると思います。とても分かりやすく、心情描写が、まだ弱さが外に出てしまう中で、必死に強く頑張ろうとしている高校生の姿として映し出されます。
・比翼の鳥 大阪府教育センター附属高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf130726-3973.html)
かなり感情移入して観てしまい、興奮しました。大人の男女の恋愛を描いた作品だと思いますが、高校生がこんなに登場人物の心情を掴んでしまっているところに驚きです。
・若葉夢 大谷高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf-130728-4aad.html)
思いっきりやってやったみたいな力を見せつけるような作品。奇抜な設定で、元気いっぱいの輝く姿を魅せながら、今の高校生の姿も感じさせる巧妙な作りが見事です。
・AS YOU LIKE ~野ざらしの海豹~ 精華高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/as-you-like-hpf.html)
個性的な役者さんが、ハイテンションで色々と面白い掛け合いをする楽しい雰囲気で話は進みますが、そこに幼き高校生の悩みや不安を見せるメッセージ性も強くなっている作品。笑って楽しむと同時に、その想いに胸が締め付けられました。
・愛が降る街 ~岩本栄之助物語~ 鳳高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf130730-e47b.html)
これが高校演劇なのかと驚愕する、最高の舞台でした。役者さんが放つ華やかなオーラは一級品。夢や希望を前面に押し出し、常に前を向いた想い溢れる作品でした。
・ノッキン・オン・どこでもドア 大阪産業大学附属高校
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/hpf130731-1cdd.html)
昨年に引き続き、コメディー要素もふんだんに絡めた一人の男の成長物語。もどかしい男の恋する姿に胸を騒がされながら、力強く歩き始める姿に勇気をもらいました。
楽しい時間を過ごさせていただきました。
願わくば、これからも演劇に携わっていただき、素敵な作品を創り続けて欲しい。
人の心を動かすという素晴らしい力があるのですから。
貴重な経験を今年もさせていただきました。高校生の皆さん、公演に関わる関係者の方々に、深く感謝いたします。
ありがとうございました。
よき学生生活を。そして、素敵な人生を歩んでください。
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