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2013年8月 3日 (土)

COMIX!!!!!【斬撃☆ニトロ】130802

2013年08月02日 インディペンデントシアター1st

前回、酷評しているので、2度連続で厳しく書くのは嫌だなあと思って、少し気にしながら足を運ぶ。
いいの出来てるなら、もっとそう宣伝しておいてくれないと。いらない気を回す必要は全く無かった。
非常にテンポがよく、話の展開をスムーズに楽しむ。
そして、勢い、熱量がいつにも増して舞台に溢れている。
エンタメ作品としては、舞台セットなどもかなりクオリティーを追及した逃げる五右衛門が一番好きだが、この劇団が一貫して伝えようとしているメッセージは、今回の作品が一番心に響く。
それもそのはずで、この作品は、再演で、この劇団の原点となるものらしい。
ご自分方のポリシーを情熱持って貫く素晴らしい作品となって、再演されているようであった。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

2年ほど前に大ヒット作品を出して以来、すっかりスランプに陥ってしまった漫画家チヒロ。
もう5年も同棲して、彼のためにいつも尽くしてくれるマキが、変わらぬ愛情を持って励ましてくれるが、なかなかチヒロはしっかりしない。
今となっては、すっかりひも状態だ。
今も、締め切りギリギリなのに、未だネームすら出来ていない。
編集長とは、売れていた時からの長い付き合い。なかなか厳しいところはあるのだが、その才能を信じてくれているのか、彼にチャンスを与えようと色々と会社に掛け合ってくれているみたい。
今回は、そんな編集長の部下である、新人の割にはズケズケと手厳しいことを言ってくる女性が担当者となる。
そして、このスランプ状態を見兼ねたのか、アシスタントとして、チヒロのファンで完全にオタクの男も手伝うことになった。

とは言っても、そんなにすぐにアイディアが出るわけがない。
チヒロは焦って、何とか作品を仕上げることしか頭に無い。マキに構っている暇は無いのだ。
尽くしても、手応えが全然感じられないマキ。もう、5年も一緒に暮らしている。ずっと待ってる。本当はそろそろ、チヒロから何かを言ってもらいたい。でも、今は彼が仕事を頑張れるようにと、そんなことをほのめかしながらも、けなげに振る舞う。
そんな彼女の姿に、女性担当員、マキの友達、そして、たまたま旦那とケンカして家に転がり込んでいるチヒロの怖い姉は、チヒロに対して非難の圧迫を掛けている。
このままではいけない。そんなことはよく分かっているけど、今のままではどうしようもない。とにかく、売れないと。チヒロは、そんなプレッシャーと戦いながらの日々を過ごす。

あの頃のように、ポンポンとアイディアが出ないものか。
いつの日かチヒロの傍には、自分の売れた快心作のキャラクターが現れる。
そのキャラクターに慰められ、励まされ、鋭いところを突かれたりして、アドバイスをもらいながら、チヒロは何とか筆を進め始める。
みんなもアイディア出しには協力してくれる。
時代物、五右衛門。犬を拾ってきた少女の物語なんかは。大人の男が小学生時代の夏休みにタイムトリップする話・・・

どこかで観たことがあるような、きっとまずまず面白い作品になるであろうアイディアは出るがなかなか形にならない。

魔王にさらわれた少女を助けるために、勇者が戦う話。
チヒロは、キャラクターに導かれるように、いつの間にかその漫画の世界へと入り込む。
マキが、魔王の編集長、その手下の担当にさらわれた。
キャラクターの賢者の老師の導きで、仲間が集まる。
ソルジャーみたいになっているマキの友達、何の役に立つのかオタクの男、姉ちゃんもほうきを持って魔法使いにでもなったのか。
銀河ロボット野球対決に、戦争物。学園物に、お色気アイドル・・・
迷走する漫画の世界と現実が交錯する中、最後に行き着いた先は、マキのいない悪夢のような自分の未来だった。
自業自得。嫌だ。マキに会いたい。
チヒロは、マキに会うため、取り戻すために、漫画の世界に再び入り込む。
そこは、熱血学園バトルが繰り広げられる世界。
今度こそ、自分の手で戦い、マキを救い出す。

自分の手でマキを奪い返したチヒロ。
戻って来た現実世界では、とりあえずネームは完成。
めちゃくちゃな作品のようだが、まあOKみたいだ。
とりあえず、打ち上げだ。
買い出しに出掛ける面々。
残ったチヒロとマキ。チヒロが差し出す手に、マキは・・・

この劇団がお得意とする立ち止まった人が再び歩み始めるまでの成長物語。
今回は、漫画の世界を絡めながら、今、自分にとって大切な想いに気付かせる。
愛によって、熱き想いの喪失から救われたといったところでしょうか。
頑張り方が下手くそ。がむしゃらにしか出来ないけど、その勢いも自分への不安で尻つぼみになってしまう。
いつも焦りと悩みを抱えて、迷いの中で心をざわつかせている。
でも、人間ってそんなに強くないから、そんな中でもとにかく頑張っていればいいのではないか。
だって、それをずっと見詰めてくれている人はきっといるし、周囲にはいつも手を差し伸べてくれる人がいる。
それでも、疲れてしまって、周りも見えなくなって、もう前へ進めなくなってしまう時がある。
そんな時に、違う世界にでも行って、今の自分、周囲を異なる視点で見詰めて、また前へ進もうとする力が溢れてくれればなあなんてことを思わせる話でした。

ふ~む。
こういうシステムになっていたのか。
この作品の漫画家チヒロが、恐らくは今回のことで、マキの良き支えと共にいい作品を創り続け始める。
編集長やその部下も、その協力を惜しまないことだろう。
アシスタントのオタク男も、復帰したチヒロに付きまとっていることだろう。
そして、マキの友人、チヒロの姉はチヒロにしっかりせえと気合を入れる。
キャラクターの男も、いつでもチヒロの相談相手として、飄々とその辺りをウロウロしているに違いない。
そんな仲間たちで創り上げた作品。
今回は、アイディア段階で消えてしまったが、五右衛門、犬と少女の話、夏休み・・・は、その後、日の目を見ることになった。
そして、今回の熱血学園バトルも。12月らしい。
非常にシャレた劇団だ。ますます、好きになった。

チヒロ、chihiroさん。頑張りがもどかしい。焦りと不安の演技が、もうちょっとしっかりせななあといった雰囲気を存分に醸し出す。この男は立ち止まっているというかは、その場で空回りしてずっと走っているような感じである。熱量だけは半端無いのだ。前へ進みだすきっかけを失ったのだろう。みんなで押してようやくといったところが、100分に渡る周囲の苦労と共に描き出されるハッピーエンドだった。
マキ、平田真希さん。この子と私も付き合いたい。でも、ここまでだと逆に怖いかなあ。持ち前の周囲も巻き込むような明るい笑顔がより引き立つキャラとなっている。この子もただ待ち続ける、見詰め続けるという点では、ずっとチヒロと一緒になって立ち止まっていたところもあり、それが周囲の力でこのけなげな女性なりの一歩を踏み出したのだろう。
編集長、今西刑事さん。現時点でTwitterの感想見たら、だいたい、この方の感想は卑怯の一点に絞られる。そうなんだ。卑怯なんだ。この方は、もう存在自体が。出てくるだけで、何か面白くなってしまい、それで、出オチだけでは終わらせない。ちょっとしたネタも絡めて、しっかり仕事をして満足そうにはけていかれる。その姿がきっと卑怯に映るのだと思う。
部下、ばんち。さん。今回は、前回と異なり非常にテンポよく観やすい印象を受けている。このテンポを巧妙に刻んでいる立役者の一人がこの方のように思う。現実ではきつめ、漫画世界ではちょっとおかしなキャラに扮しているが、掛け合った相手の魅力をうまく引き出すような巧みな演じ方をされているように感じる。
オタク男、後藤啓太さん。この破壊的なキャラで、舞台の雰囲気を壊すことなく、逆に交錯する現実と漫画の間をあいまいにするようなポジションで、作品の世界観を創り上げられる力に圧巻である。こんな、グイグイと前へ進もうとするオタクがいるのだろうか。何に対してか知らないが、戦うオタクであった。
マキの友達、よしひろさん。ソルジャーからアイドルまで、多様な役で次々に登場。美女を活かしたはまり役と、ちょっと厳しい役どころで苦笑いを誘う。
チヒロの姉、井上摩美さん。きついなあ。この子とは付き合いたくない。毎日、ビビりながらご機嫌うかがうのはつらいもの。でも、姉としての厳しい愛情に溢れています。個性的なキャラが渦巻く中で、キツキャラに扮してはいるものの、一番冷静にチヒロや周囲を見て、どうするべきかを考えているような冷静さをうかがわせています。
チヒロの傍にいるキャラクター、星村彰さん。頭悪そうな飄々とした不思議な男を終始貫く。今は空回りしてしまっているチヒロが、かつてしっかりと地に足を付けながらその熱を注ぎ込んで生まれたキャラ。自分をまた、あの頃のように活気あふれる姿に、作者なんだからしてよみたいな願いが込められているのか。このキャラとの会話の中でも、チヒロは自分を見詰め、前へ動き出す駆動力を得ているように感じます。

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