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2013年8月31日 (土)

曾根崎夢想 赤椿【大阪大学 劇団ちゃうかちゃわん】130831

2013年08月31日 芸術創造館

やはり無理だったか。
これで通算1307本目の観劇だが、ここまでひどかったのは記憶にある限りでは今回で3回目。
作品じゃなくて、体調が・・・

週明けから体調が悪化する一方。
今週は観ておきたい作品が最低で6つ。
既に金曜日が無理で、今日も朝から絶不調。恐らく、風邪だろうし、うつしてしまうリスクなどを考えれば、今週は全て断念すべきだろうとは思う。
でも、何とかとりあえず、仕事を片づけ、勝負に出ることにする。
このままでは日曜日も体調が戻ることはありえない。歳も歳だし、昔みたいに寝たら治るなんてことが無くなってしまった。
全体力を1公演に注ぎ込もう。
そう決意して、勤めるクリニックでビタミンCの点滴。幾つかの免疫活性剤を飲んで、意を決して向かったのがこの公演。
でも、さすがに厳しかったね。この作品に出てくる何とかいう薬でもあればよかったのだが。
途中から、意識朦朧となって、これは恥ずかしながら手を挙げて途中退出せざるを得ないかなと。
何とか最後まで無事に観れただけで、今回はよかった・・・

で、作品自体の感想ですが、まだけっこうしんどいのですが、こうしてブログを書いているということで、どんな風だったかは分かっていただけるのではないでしょうか。
楽しく、爽快な気持ちになれる作品でした。私にとっては、この観劇自体がちょっとした薬と同じ効果を示したということです。
話は曽根崎心中をベースにしているようです。心中ですから、悲劇ですし、原作では、徳兵衛とお初の二人をそこまで追い込んだ周囲の人たちの醜さもけっこうひどく描かれていたように思います。
この作品では、その悲劇の結末である来世では幸せな恋仲でいられるようにということを現世で実現させてあげるような優しい創りになっています。
そして、周囲の悪い人たちは、彼らにもまた、徳兵衛とお初と同じように現世では相通じられなかった人への想いが隠されており、そんな悲しみ、悔しさが人を惑わしたかのような、善意的な解釈になっていました。
ラストのハッピーエンドの描き方が、単にみんな幸せという単純なものではなく、現世での不条理さや、人の妬み、裏切りという愚かさも十分に見せた上で、それでも、来世では無く、現世で幸せな時を刻んで欲しいという、優しい願いが込められているところがとても素敵だと感じました。

あと、こういう時代劇ものだからでしょうか、それとも巧みな演出があったのでしょうか。
この劇団では、今まで感じたことない何か洗練されたという印象を受けました。

<以下、若干ネタバレしているように思いますが、許容範囲として白字にはしていませんので、ご注意ください。公演は明日まで。この赤椿と、演者が異なる白椿が各1回ずつあります>

傾奇者衆、バサラの中の一人、徳兵衛は、幼馴染の天満屋の女郎、初と一緒になりたいと思っている。
でも、婚約者、春がいる。
結納金を返そうとするが、途中、幼馴染の九平次にそのお金を貸してしまう。
このあたりは、曽根崎心中と同じかな。

代官の妻、椿は天満屋の元女郎。代官に見受けされた。
その時、恋していた客の有丸は、病気で亡くなってしまう。
そして、身に宿していた子供も、捨てるしかなかった。
全てを失った椿は、いつの日か、自分を不幸にした世間に復讐することを考えていた。
代官の下を出入りする大黒屋から、南蛮渡来の怪しい薬を手に入れ、人を操り、その復讐を実行することに。
春、九平次、四左衛門、十、三の5人を薬で操り、天満屋、そして代官までをも亡き者とすべく動き出す。

激しく闘い合い、傷つくバサラと椿に従う者たち。
その決着が着く時、徳兵衛と初は心中を・・・

傾奇者衆、バサラ5人組。
若、菊川匠さん。二刀流の男前すぎる姿。リーダーとしての貫禄ある姿も。いいところで出てくる。
宗圓、松本直毅さん。ナルシストキャラ。この方だけでないが、何か漫画のキャラをイメージして出来ているのだろうか。元ネタを知らないので分からないが。徹底したナルシストっぷりのラストに、少し変わった方向でオチを付けたキャラとなり笑いを生む。
慶次郎、佐藤智紀さん。ブ男、モテないキャラ。がさつで、KYな雰囲気も。個性的で大胆なキャラの創り方は、この方が一番よかったかな。
元秀、谷貴人さん。医者みたいな役割。インテリで、ちょっと陰湿な感じが鼻につくが、力だけの男衆たちとのいい調和が見られる。
徳兵衛、高橋仁さん。この話は徳兵衛の成長物語でもあるのだろうか。ごく普通の、人のいい、流されて生きているような男が、自分の手で自分の人生を、そして愛する者の人生をも掴むという覚悟を持ったかっこいい男に変わっていく。

女郎部屋、天満屋。
ママ、水野聡美さん。なんか、すごくきつい。ママだから、愛だの恋だのはたわごとで、金が全てなんだろうけど。上記した善意的な視点がこの方には無いかな。貧しい女郎を守るためには、きつくならないと仕方が無いなんていう背景があってもよかったような気がするのだが。あったのかな。ボーっと観てたから覚えが無い。
初、宮本蕗さん。子供が濃い化粧したみたいな幼き姿。このあたりが、純粋で世間ズレしていて、まだ頼りない徳兵衛と共にうまいことやれないところが巧く描き出される。ただ、けっこう妖艶な色気も醸される。
桜子、加納はるひさん。麗華、松山裕美さん。共に女郎。可愛いけど、いざ近寄ったら引いてしまうような空気に痛い目に合うだろう新人バカOLと、ちょっと色気あるけど、近寄っては絶対に喰われて痛い目に合うだろうお局OLといった感じだろうか。
ゴリラ、品川拓也さん。これも女郎。男がやるので、そのキモさで笑いなのだろうが、けっこう凍りついた空気になっていなかっただろうか。めげずにやり遂げてたけど。中途半端に少しイケてるからだと思う。並んだダンスシーンなんかを見ると、残念なことに、多分、足の細さや足首の締まり具合はこの方が一番グっとくる。

代官屋敷。
代官、最内翔さん。あくどい嫌な笑顔に、醸されるねちっこさがなかなかこの役にはまっている。
椿、尾関かさねさん。代官の妻。感情を押し殺した冷たいたたずまい。自分に対しても、人に対しても幸せを拒絶する。自分だけを残して、死んでしまった有丸への恨み。ここに心中が成立しなかった男女の悲劇が描かれる。そんな彼女が、有丸が死んでしまっても、まだ残る自分への想いを息子である九平次から感じ取ることで凍った心が溶けたみたい。
大黒屋、中嶋彬裕さん。薬問屋。前回公演の大統領役でよく覚えている。いい意味でも悪い意味でも、自分の雰囲気を出してしまい、舞台の空気を変えてしまう。

有丸、岸川夏樹さん。椿の元恋仲の人。沖田総司みたいなイメージかな。

椿、率いる5人衆。
春、伊藤紫織さん。婚約の裏切りへの妬み、悲しみの心の隙を突かれたのだろうか。薬に操られていたとはいえ、徳兵衛を自らの手で傷つけてしまう。そのことで正気に戻ったみたい。自分の中に潜む汚い一面と対面したことで、これからの人生にどう影響するのだろうか。雰囲気は凛とした土方歳三みたいな感じ。
九平次、石垣光昴さん。けなげで純粋な椿への想いに溢れた姿が印象的。ブレない真摯な想いは、亡き有丸の精神をも受け継いでいるのかもしれない。想いの強さが、薬によって増長されたのか。この男の本来の誰にでも優しい想いを持つことを打消し、たった一人のことを想い、あとは憎むというところまでいってしまったみたい。
四左衛門、橋詰隆一さん。影のある悲しみを背負う男みたい。見落としだと思うが、その背景がいまひとつ掴めていない。薬に惑わされ、無差別に人を傷つけるまでに至ったのは、どんな悲しみから背を向けたかったからなのだろうか。この5人衆とバサラたちの戦いで多くの者が傷つき、倒れる。それを起こして、その場から逃げる人たちが描かれるラストで、この男だけは倒れたまま放置されている。それがとても悲しかった。
ただ、この作品は近松門左衛門が弟子だろうか、自分の作品を読んで聞かせるといった構成になっている。私の好きなゲキバカのごんべえと同じような形ですね。その門左衛門が九平次、弟子が四左衛門と同じ役がしている。観ていて思ったのは、門左衛門は、実はそのまま九平次で、今回の徳兵衛と初の話を一つの作品として創ったような感じ。弟子は四左衛門の生まれ変わりだろうか。来世では幸せに。徳兵衛と初に関しては、この作品ではそれに反する終わり方だが、こちらでそんな恵まれない現世から脱却した来世の姿が描かれているのかなとも思う。
三、井上真琴さん。十、キムボラさん。う~ん、どっちがどうだったかな。ピンクと青服。区別がつかない。中国人キャラなのか。南蛮なのに。よく分からない。どうして、薬につけこまれるに至ったのかという背景が浮かばない。日本という国に来て、虐げられるような経験をしたのだろうか。日本の男批判のようなセリフは垣間見られたが。

とても心地いい作品でした。
曽根崎心中の悲劇の中で、人の想いに焦点を当てて、そこに人の優しさ、素晴らしさを祈るように描かれている感じがとても好きです。
いい作品を観れたので、だいぶ体調も復帰してきたような気がします。
これは、もしかしたら、明日も1作品ぐらいは観劇できるのでは。
とりあえず、今から仕事をして、明日の午前中には仕事を終えれるようにしてみようと思っています。
まあ、この作品ももう1バージョンの白椿というのもあるのですが、ありがたいことに、モブというのでしょうか、観たかった人たちもだいたい、この赤椿に登場されたので今回はこれでこの作品は終わりにします。

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