Hero@Show Like Lie ?【演劇集団イチゴハチエ】130720
2013年07月20日 自由空間 高津177(シアターOM)
若い方が揃っているということで、少々、ゴリ押しっぽいところはあるが、ご自分方の熱い気持ちを詰め込んだ話となっているみたい。
熱い勢いの一辺倒だけでなく、道がふさがれてしまった少女が、自分の目標に向けて、また歩み出す姿と同調して、劇団自体も一緒に成長していこうとする姿を丁寧に描こうとしているところが感じられる。
多用される暗転、途切れてしまうリズムなど、素人目からしても、まだ改善できそうな点も多々あるように思うが、真摯な気持ちがしっかりと伝わるいい作品に仕上がっている。
ヒーローショーを公演する劇団。
まっすぐな厳しい団長の下、ヒーロー役の男、悪い女王役、その手下、MCの女性で活動している。
ある日、いつものように、ダジャレ好きな酒屋の女性店主の依頼で、商店街でヒーローショーを公演していると、女の子が急に入り込んできた。
女の子曰く、本物の悪が現れたと思ったらしい。
そして、その子は本当に、いつも悪い敵を一人でバタバタと倒すヒーローになりたいのだとか。
だから、この劇団に入りたいと言う。
団長はそんな甘い考えではダメだと言うが、人手が足りずいつも苦労している劇団員は猫の手も借りたい。
給料もいらないと言っている。
劇団員の後押しもあり、やる気もありそうだし、見習いとしての条件で入団させる。
ただ、この女の子、20歳だと嘘をついて入団している。実は、女子高生。
親の許可もとっていないし、劇団で働くことにより、塾もサボることになってしまう。
実際に働き始めると、女の子は実に熱心。
まだまだ、知らないことも多いが、何でも吸収しようと頑張る。
そんな姿に劇団員はすっかり仲間として認める。
団長も、厳しく言った手前、まだまだだという顔をしているが、その熱意はしっかりと認めている模様。
次の公演が近づく。
女の子も、もちろん、出演する予定。ヒーローでは、まだ無いが。
団長の高校時代の友達の記者が、カメラマンを連れて稽古場に取材に来る。
PRのチャンス。
次回公演に向けて万全の態勢だったが、思わぬ事態になってしまう。
連れて来たカメラマンが、人の年齢をしっかりと当ててしまう特技があり、女の子が、まだ女子高生だということがバレてしまう。
最初は女の子も誤魔化していたが、運悪く、塾をサボるようになったことを心配した同級生が稽古場に現れ、すっかりバレてしまう。
劇団員たちは当惑する。ヒーローショーは危険な殺陣もあるので、女子高生では出演させるわけにはいかない。
女の子はあきらめて、劇団も辞めると言う。仕方が無い。
それを聞いていた団長は、女の子の意志の弱さを責める。
給料もいらないと言い、誰よりも熱心に頑張っていた覚悟はどこにいったのか。
それが、自分が目指していたヒーローなのかと。
女の子は、自分をもう一度、見詰め、やはりヒーローになりたいと言う。
その言葉が出てくる覚悟があるなら、話は別。
女の子を出演させるために、何とかするのが団長の仕事。
親を説得し、女の子にふさわしい役を与える。
公演の日がやって来る。
いつものように、悪い女王と手下が舞台で暴れる。
そこに現れるヒーローは、・・・
ヒーローに憧れる少女の成長物語。
単にかっこいいと憧れていたヒーロー。
でも、その気持ちは自分の中で真剣だということに気付く。
そして、ヒーローの座は、自分だけで掴めるものでは無く、周囲と一緒になって掴み取ることを、一時の劇団生活で知った。
同時に、劇団もそんな少女の熱意に、自分たちの活動が大切で誇りあるものだと感じられるようになったといったところか。
若い方が揃うこの劇団自体の、これまでに経験して得たこと、演劇に懸ける真剣な覚悟、これから目指す成長の姿などを描いたメタフィクションになっているのだろう。
少々、空回りしているところは否めないが、それを熱意で押し通すだけの力のこもった作品に仕上がっている。
役者さんに一言コメント。
ヒーローに憧れる女の子、橋本まどかさん。純粋な熱意、未熟な考え、先がまだ見えない葛藤など、少女の姿を等身大で演じられる。
団長、松本元希さん。劇団員を見詰める揺らがないまっすぐな視線が、この強い覚悟で劇団を守ろうとするキャラに見事にはまっている。
ヒーロー役、津島光一さん。本当にヒーローショーの人かなあ。動きがそんな感じで綺麗。かっこいい。
MC役、河村美佳子さん。無理に強調させた仕切りの姿が笑いを誘う。流れに乗って、いい感じになったところで、噛んじゃうのがちょっと惜しい。出来る女のように見せての計算か。
悪の女王役、浦野瑚涼さん。女王姿の気取りっぷりと、劇団員姿の姉御っぽい雰囲気のギャップが面白い魅力を醸す。
手下役、和田慎司さん。徹底的な道化として振る舞われる。少々、スベリながらも、隙間なく、詰め込んだ笑いは舞台の空気を楽しくさせる。
記者、宇尾雄一さん。一番、安定して観れたかな。声もしっかり通っていて好印象。振り回される男の困惑を漂わせた哀愁ある笑いを引き出す。
カメラマン、西口まみさん。オドオド、勘違いキャラ。暗くてキモイと明るく天真爛漫の一瞬の切り替えを多発して、掴みどころの無い天然キャラを創り出している。
同級生、西本愛季さん。ずっと本当にごく普通の女子高生姿だったが、最後の公演に出演するシーンで、意外に巧妙なツッコミ姿を見せられる。
商店街の酒屋、羽田野裕美さん。何だろう、この異色なキャラは。飄々としながら、自分の空気を舞台に残す。つられ笑いの名手。
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