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2013年7月18日 (木)

城のアリ【ないすばでぃプロジェクト】130718

2013年07月18日 ライト商會 三条店 2階ギャラリー

緊張と緩和、明と暗、静と動。
メリハリがしっかりとしており、悲しみと喜びが明確に浮き上がるようになっている作品。
好きとか嫌いとか、自分のためや相手のためとか、幸せな時間や不幸な出来事による亀裂とか。
そんな二人に降りかかる様々なことの、もっと上に揺るがない愛が存在しており、それに気付くまでのある夫婦の姿を描いたような話だろうか。

<以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

朝、笑顔で互いにおはよう。
食事をして、美味しかったよ、ありがとう。
永遠に続くかのような、溢れる幸せを噛み締めているような微笑ましいカップル。

 

おはよう。
・・・。
いつの間にかおはようを忘れてしまった。
二人の朝はいつまでも来ない。
何処かに幸せを落として来てしまったようなさみしいカップル。

 

冒頭、こんな二組のカップルが登場。
四人で創り上げる作品である。
そして、話は急展開して、物語が始まる。
この急展開はちょっとびっくり。
さっきまで、あんなに穏やかで静かな空間が出来上がっていたのに、一瞬で空気を変えてしまう。
蟻の兄弟、太郎と次郎。
働き蟻の二人は今日も餌を探しに外へ向かう。
イナゴの触覚、ダンゴムシの足、・・・。
なかなか、いい餌が見つかった。
これで安心して戻れるなんて会話する二人の訛りがひどい。
東の地方の訛りだ。
彼らは訳あって、東の城を追い出され、今、西の城に潜り込んでいる。
いい働きをして、信頼を得つつあるが、東の城出身だとバレたら、ただではすまない。
だから、二人の時だけ訛りで喋りあっていたが、それもリスクがあるので辞めようという話になる。
しかし、そんな彼らの会話を盗み聞きしていた蟻がいた。
二人の運命や如何に。

 

なんて話。
幸せカップルの男は絵本作家。
彼が創作中の物語だ。
妻である女は、きつめのダメ出し。
すっかり凹んでしまう男だが、慰められながら、また続きを考える。

 

西の城に戻って来た太郎と次郎。
ある男が出迎える。
誰もいないところに連れ出され、東の城出身だろうと問い詰められる。
慌てる二人だったが、実はこの男も東の城出身だった。
そんな中、突然、地震。
暗闇。続く揺れ。

 

女は妊娠。
子供がずっと欲しかった男は大喜び。
これからは、より、頑張らねば。
でも、二人には突然降りかかる地震のような厳しい出来事が待ち構えていた。
流産。
この日から女性から笑顔は消える。
幸せだったカップルは、冒頭のさみしいカップルの姿に変わってしまう。
もう、私とは別れた方がいい。それがあなたのためになる。
そんなことはない。不幸なことだったが、何度でもやり直せる。
男は反発するかのように、筆を進める。

 

太郎は潰れた城から必死に脱出する。
次郎とまた出会い、一緒に過ごすために。
地上では、同じ東の城出身の男も無事に脱出していた。
次郎の姿は見えない。

 

女は男から筆を取り上げ、自分で物語を創り始める。
次郎は潰れた城に取り残されたみたい。
助けに行こう。東の城出身の男は言う。
いや、次郎は見捨てよう。危険だから。それがあなたのためでもある。
男と女の気持ちを代弁するかのように、物語の登場人物が互いにぶつかり合う。
二人の間に完全に亀裂が入ってしまう時、城から出てきた次郎が、今の二人にたどたどしいながらも、真摯なメッセージを送る。
それを受け取った二人は・・・

 

男がどんな発想で描き始めたのかはよく分からないが、東から西へ移り住み、そこで日々働く二匹の蟻が、自分たち二人なのだろうか。
物語の中で地震という二匹に与えた厳しい災害が、そのまま、現実世界で流産という二人にとって不幸な出来事へと繋がる。
この試練を乗り越えることが、二匹が、二人がもう一度、自分たちの歩みを進めることにつながっており、交錯した現実と物語の世界がシンクロする。
その中で、二匹にとって、二人にとって、大事な考え方を手にした感じだろうか。
働き蟻が日々コツコツと働く意味。
女王蟻のためでもなく、巣を発展させるためでもなく、自分のためでもなく、相手のためでもない。
二人が、共に同じ目的を持って、共有する時間を過ごすという二人のためだったということか。

 

東の城出身の三匹。
太郎と次郎は、女と男。冒頭のさみしいカップルの二人が演じる。
もう一人の男は、何だろうか。この男は、現実世界での絵本作家と同じ役者さんがされている。
このあたりが、振り返って考えてみると、色々と整合性が取れず、悩ましいところである。
城に取り残されたのが次郎。さみしいカップルでは男役である。でも、見捨てるべきと言われているのはむしろ女と考えた方が分かりやすく、次郎は女でもあるように思える。
逆に太郎はさみしいカップルの女役であるが、もう一人の男に次郎を見捨てろと言っている姿は、女がそうあって欲しいと願う男の姿のようにも見える。
もう一人の男と太郎がぶつかり合う姿は、男の女の言い合いでもあるが、同時に男の中での心の葛藤を描いた戦いのように見え、太郎は男でもあるように見える。
西の城で、知り合いもいない中で、二人きりで頑張っていた二人の下に現れた同じ東の城出身の男。
同じ城が同じ血縁みたいなイメージで、これから生まれるはずだった二人の子供、男の血を引く女を愛する感情を持った男みたいな風に捉えてもいいようにも思える。
後半は、役とその演じる存在が現実と物語の男と女が交錯して、カオス状態になった。
ここが、何となくだが働き蟻というものを感じさせる。
個性があるのか、無いのか、同じようにひたすら働き続ける蟻の中に見出せる異なる姿。
作品中に、二重構造といった、色々な自分の存在みたいなことが言及される。その一点だけしか見ないから、互いにズレが生じた時に、合わないという結論に達してしまうが、本当は様々な自分、相手同士で繋がっているみたいなこと。
たくさんの働き蟻は、みんな自分の色々な想いを持った分身みたいなもので、それが日々、懸命に働きながら過ごしている。
そして、その働き蟻が一つの城を形成している。
好きな働き蟻、嫌いな働き蟻とかもいるだろうが、大切なのはその城をどう思っているのかといった感じだろうか。
城が人間。働き蟻はその人の心の欠片。
そんな働き蟻同士が出会い、ぶつかりあいながら、人は想いを伝え合っていく。
そして、そのことが一人の人間を愛するということに繋がる。
ちょっとしたスレ違いや単純に好きという感情などの上には、もっともっと大きい愛みたいなものが存在しており、それがある限り、そんな小さい存在にそれが潰されてしまうことは無いといったようなことを想像する。

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