KING【GEKIDAN☆73】130715
2013年07月15日 インディペンデントシアター1st
現実と架空世界の交錯という演劇らしい設定の中で繰り広げられるファンタジー。
そこに、一人の女性の成長物語をテーマにして描かれている作品。
周りが気になって、自分はどうなるのだろうと不安に思っている若い人が、人との触れ合いの中で、自分自身の道、そして、周囲の仲間たちの想いに気付いていく過程が、一つの冒険と共に優しく、時に厳しく描いているような話でした。
高校3年生の香里。
同級生は、そろそろ自分の将来の夢に向かって、何か行動を起こそうとしている。
妹は、自分よりも優秀でしっかり者。
自分の夢とは、将来はどうするのか。悩みは尽きない。
そんな不安が、常に頭をかすめ、ついイライラしてしまうのか、同級生、クラスのみんな、妹とうまくいっていない。
つい最近、拾ってきた猫だけが、自分のことを聞いてくれる。
香里の、心の中にある自分の夢は小説家。
そのために、具体的に何かをしているわけではない。だから、夢に向かって何か始めようとしている人に対して、卑屈な気持ちが出てしまうようだ。
でも、自分の今の気持ちを描いたような物語を創作している。
女海賊。
海賊の仲間を従えて、幻の宝物、コーリンを手に入れるために、旅の準備をする。
コーリンが何なのかは分からない。でも、それを目指して、熱い気持ちを持っている。そんな姿に仲間たちも一目を置いて、一緒に引き込まれている。
世間には海賊のことを毛嫌いする者も多い。
それでも、自分の夢に向かって、仲間たちと危険な旅でも挑戦するつもりだ。
妹も、一緒に旅に出たいと言ってくる。
何があるか分からないし、反対するが、意志は固いようで、仲間も一緒に旅をしてもいいと言ってくれている。
溺れているところを助けて以来、自分に忠実に尽くしてくれる猫も、妹の面倒をしっかり見てくれるみたいだ。
妹と猫にはライバルの海賊に送り込んだスパイを救出する仕事を与え、船出。冒険が始まる。
一方、現実世界では、妹は高校を辞めて女優を目指すと家を出ることに。
両親は当然、反対していたが、妹の覚悟の強さに負けたらしい。
香里は、自分だけが置いてけぼりになったかのようで、激しく反発する。
妹とは大ゲンカしたまま、お別れ。
そんな荒れた香里に同級生の友達も愛想を尽かして、絶縁状態となってしまう。
そんな中、唯一の自分の救いであった猫がいなくなる。
先が見えなくなっている香里の下に一本の電話がある。
妹の乗った飛行機が着陸失敗。現在、救出作業を行っているが、生存は不明。
これに呼応するかのように、物語の世界でも、妹の乗った船が難破する。
猫の必死の救出活動もむなしく、消息不明に。
小説の世界と現実世界が交錯しながら、展開する自分の物語。
香里、そして女海賊は・・・
コーリンの正体は・・・
女海賊は香里の目指している、こうありたいと思っている姿だろうか。
現実世界の自分、妹、同級生、猫を、小説の物語の中でも対応して登場させ、その中で、自分自身を見詰めていくような話。
前半は、現実と架空世界のシーンを切り替えながらの展開だが、後半になるに従い、その世界は交錯していき、現実世界で香里がしなければいけない行動、考えが浮き上がってくる。
そして、最終的に見つけた宝物は単なる鏡。
自分を映し出すもの。
作品名から想像すると、自分の人生だから、そこでは自分が王様。
自分がしたいことを達成するために、仲間たちの協力を得ながら、人生という国を築きあげていかなくてはいけない。
人生だから、様々なことが振りかかってくる。
大切な物、者を守り、自分自身の力、仲間と合わせた力で、それに立ち向かっていく。
そんな自分を見詰めるための鏡を女海賊が見つけ出すが、それはその女海賊を描く香里自身にとって、今、一番大切な宝物だったみたいだ。
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