« ドアの向こうの薔薇【くじら企画】130712 | トップページ | オレンジのハイウェイ【月面クロワッサン】130713 »

2013年7月13日 (土)

Target ~ターゲット~【hima neko style】130713

2013年07月13日 ロクソドンタブラック

前作が確か、凄いブラックなオチで、嫌いだなあ、こういう作品はと思ったので、今回は敬遠しようかと思っていましたが、チラシの雰囲気からはほんわかしてそうな感じだったので観劇。
多分、前々作に近いハッピーエンドのほんわかコメディーみたいな感じでしょうか。
仕組まれた筋書きの中で人が動かされる中で、自分の大切な想いに気付くような形で話が展開します。
少しご都合主義的なところはあるものの、うまい具合に誰も傷つかずに、みんな幸せになる結末が気持ちのいい作品です。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

ストーカー対策室。
そこには、定年間近の年配のベテラン刑事と、キャリアの新米女性刑事が働いている。
最後の最後にそんな部署に回されたベテラン刑事は、キャリアに少し嫉妬心を持つものの、なかなか見どころがある新米刑事の働きに感心している。
新米刑事は、あ~言えば、こ~言うって感じで口達者。
ベテラン刑事は、そんな口うるさい新米刑事にうまくあしらわれながらも、からかい返し、二人いいコンビで仕事をしている。
そんな、ストーカー対策室に、ある日、一人の男が駆け込んでくる。

  

大企業に勤めている男。
休日にジョギングをして、トイレに行くと、怪しげな男が睨みつけてきた。
急いで逃げて、休憩していると、また、その男が。
そして、今度は逃げ込んだコンビニでも、また男がいる。
そのまま、飛び出すように店を出た。
男の勤める会社は、最近、不穏な動きがある。
もしかしたら、自分はつきまとわれているのでは。
ストーカーに狙われている。
男の訴えを聞いてみるものの、どうも単なる勘違いにしか思えない。

  

何もしないわけにはいかず、後日、コンビニの店員に事情聴取。
コンビニの店員はやたら、ベテラン刑事に親しげだ。
別れ際に、サンタさん、またねみたいな意味の分からない言葉を投げかけられる。
コンビニ店員の話からは、確かに、男が訴えていることは事実だったみたいだが、やはり、たまたま偶然が重なったようにしか思えない。男が一人、勝手に騒いでいただけのようだ。
そのことを報告するために、男の勤めている会社まで足を運び、男と会う。
すると、タイミングよく、ストーカーだと言われている男が現れる。
ベテラン刑事は、その男に少し話を聞いてみるが、やはり、つきまとっているような事実は無かった。
まあ、これで一応丸くおさまった。
二人の男に別れを告げて、署に戻ろうとすると、県警本部長から電話。
この会社付近をあまりウロウロするなという指令。

  

ベテラン刑事は、一応丸くおさまったものの、どうもしっくりこない。
刑事歴40年の勘が働いているみたい。
あの二人、恐らく知り合いだろう。
スムーズに話が進みすぎている。何かあるような気がする。
そして、県警本部長からの電話も気になる。
自分の知らないところで、何かが起こっているような気がする。

  

数日後、とんでもない記事を目にすることになる。
あのストーカーを訴えに来た男が勤めていた会社に家宅捜索が入った。
不正経理の疑い。経理本部長は自殺をしたとのこと。
恐らく、刑事たちが会社を訪ねた時には家宅捜索を実行する計画が決まっていたのだ。それで、県警はウロウロするなと言ってきたに違いない。
何かがおかしい。
イライラするベテラン刑事。
そんな中、ストーカー対策室にまた、一人の女性がやって来る。
ベテラン刑事の知り合いだと名乗るが、ベテラン刑事は誰か思い出せない。
それもそのはず。もう18年ぶりぐらいらしい。
サンタさん。この女性もまた、そんな言葉をベテラン刑事に投げかけてくる。
誰かを名乗る前に、女はある事件について話す。不正経理の事件だ。

  

女はスナックのママをしている。
客にその自殺した経理部長がいた。
経理部長は社長の一人娘と結婚した、いわゆる玉の輿だ。
でも、実際は、社長のいいなりになる飼い犬が欲しかっただけ、妻とは家庭内別居のような状況、一人息子も父親は所詮、養子で母親の方が偉いと蔑んだ目をするといった具合で幸せとは程遠い。
言われるままに、巨額な表に出せない金を作った。
その金をママに全て渡すと言う。
そして、ママがよく話していた、自分が育った孤児院に寄付してくれと。
私は、今、そのお金を全て、その孤児院に寄付してきたところ。
その話をここでするために、訪ねてきたらしい。

  

ベテラン刑事は、どう処理していいのか分からない。
新米刑事は、この話は聞かなかったことにすれば、別に何をする必要も無いと言う。
訳が分からないが、自分も巻き込まれて、何かが動いている。
ベテラン刑事は困惑します。

  

サンタ、孤児院、筋書きが決まったように展開する話あたりがキーワードでしょうか。
全てはラストで明らかにされます。
ベテラン刑事は、ある孤児院出身。
その孤児院を出た後、18年前に院長と一緒にサンタさんの姿をして、孤児たちと時間を過ごした。
その時に、不格好な手作りのサンタ人形をみんなに手渡したらしい。
そして、その後も、毎年プレゼントを贈り続けていた。
孤児たちは、その優しいサンタの姿を見て、元気に健やかに成長した。
ストーカー、会社に勤める男、コンビニ店員、ママ、そして新米刑事はみんな、その時にいた子供たち。
不正経理の会社が、孤児院を壊して開発を進めるという話が出た時に、それを阻止しよう、そして、あの時のサンタにもう一度会って、お礼を言いたいということから、仕組まれた事件だったようです。
作品名でもある、ターゲットは、まさにベテラン刑事だったということです。
そして、この話にはもう少しだけ続きがあります。
全ての中心となって動いていた新米刑事。
これほどまでに、刑事の身でいながら、計画に深く関わったのは、もう一つの大きな理由があります。
それは、このベテラン刑事が、新米刑事にとって、とても大切な・・・

  

80分という短い時間にまとめられた作品なので、少々、ご都合主義的に話が展開してしまっているところがありますが、時を超えても、自分の大切な存在を想い続けて、各々の道で頑張ってきた人たちの優しさは綺麗にまとまって描けているように感じます。
自分の大切な場所、人をいつまでも大事にしたいという気持ちは、そこでつらさを乗り越えて、今を精一杯生きている人だからこそ、持てるものではないでしょうか。
孤児という、時にさみしくつらい想いを何度もする中で、孤児院の仲間たちと支え合い、そんな自分たちを想ってくれる人がいるということが生きていく上で大きな勇気になったのだと感じます。
そんな頑張った、特に今やキャリアにまでなった新米刑事の女性には、最後、さらに大きなプレゼントが待っています。それは、互いに一人で懸命に生きてきた者同士が、家族という明確な形で、これから頼りあって生きていけるように結びつくという結末で描かれています。

|

« ドアの向こうの薔薇【くじら企画】130712 | トップページ | オレンジのハイウェイ【月面クロワッサン】130713 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Target ~ターゲット~【hima neko style】130713:

« ドアの向こうの薔薇【くじら企画】130712 | トップページ | オレンジのハイウェイ【月面クロワッサン】130713 »