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2013年7月 1日 (月)

流れんな【iaku】130630

2013年06月30日 八尾プリズムホール

緊張と緩和を巧みに使った濃厚な会話劇。
言葉一つ一つに重みがあり、逃げ出したくなるくらいに、残酷に人の姿を描いてます。
登場人物の様々な考えに、頭を悩まされながら、色々と考えさせられる作品でした。

<以下、あらすじを書いているのでネタバレします。福岡で7/5、6と公演がありますが、先のことなので白字にはしていませんので、ご注意ください>

舞台はタイラギ漁が盛んなある田舎町にある小さな食堂。
睦美が学校から帰ってくると、洋式便所で母親が寝ている。二階では幼子のサツキが泣いている。
もう、お母さんはサツキをほったらかしにして、こんなところで寝て。
でも、・・・
母親は脳梗塞で死亡。
私がすぐに気づいて救急車を呼んでいれば。ボットン便所だったのが恥ずかしいと言って、無理に洋式便所に変えていなければ。
そんな母親を死なせてしまったという想いは贖罪の念となって、ずっと睦美を縛り付ける。
もう、家のトイレには入ることすら出来なくなった。そして、自分が母親の代わりとなって、父、サツキを支えなければいけない。

時は経ち、四十近くなった睦美。
あれから、父が二人を育てる。
サツキは、早くにこの田舎町を出たかったようで、結婚して家を出ていった。
そんな父も、肝硬変で入院。先は短い。食堂は閉店中。
でも、支えてくれる人もいる。
幼馴染のタイラギ漁の漁師。高校の時には付き合ったこともあったみたいだが、無理やり、体を求めてきたりするから、もうこの人とは無いと思っている。でも、言葉は悪いし、お調子者だが、いつも親身になってくれていることには感謝している。
漁師は今でも睦美との結婚を考えている。父もいなくなっては生活だって大変になる。自分が調理師免許を取って、店を引き継ぐという具体的な案も考えているみたいだ。もっとも、最近、タイラギが汚染されているという問題が発生しており、漁師生活も終わりを迎える可能性が強くなっていることもあるみたいだが。
この田舎町で誰もが感謝している優良企業に勤める男。この企業は、この田舎町を発展させ、生活を潤わすためには必要不可欠の存在だ。
男は、今、この町をさらに発展させるためのPR企画を担当している。睦美は食堂が閉鎖中なので、この企画に協力することで収入を得ている。入院中の父も、この企画には賛同しており、名産のタイラギを使った新しいメニューを出そうと張り切っていた。だから、入院している今でも、病床で、しんどい体に鞭を売ってアイディアを出そうと頑張っているみたいだ。
この男と睦美は不倫中。男にはもちろん、家族がいる。結ばれることは無い。

そんな中、PR企画の具体的な打ち合わせを睦美とするために、やって来た企業の男。睦美から協力をお願いされて呼び出された漁師。
父の入院の見舞いの帰りに、睦美に言いたいことがあると立ち寄ったサツキとその夫。

夫の勤める会社で開発された装置で、母親の記憶を、睦美の大脳皮質から取り出し、映像化するという、実験台になることを求めるサツキ。母親のことは封印して、触れられたくないため、拒絶する睦美。
そうやって、いつも自分だけ背負いこみ、家族なのに一切の相談をせずにいる睦美をサツキは責める。自分だけが母親のことを知らない。母親が生きていたら。睦美が語る母親のことは、無機質で温度が無いときつく睦美を非難する。睦美がどれだけ、家族のこと、サツキのことを考えてこれまでやってきたか。そう弁護する漁師。
生体肝移植。父にはまだ、生きられる可能性がある。でも、それは睦美が拒絶したらしい。多額なお金、手術自体のリスク、そして何よりドナーのリスク。これもまた、二人の中で言い合いになる。

サツキは妊娠している。父にはもちろん、報告をした。喜んでいたらしい。だからこそ、少しでも長生きしてもらいたい。生体肝移植への想いもそんなところからきている。
でも、夫は妊娠を単純に喜んではいないみたいだ。
出生前診断。
なぜ、そんなことをしないといけないのか。睦美も漁師も大反対。サツキも納得はしていない模様。
恐らくは、考え方の相違で、夫はリスクがあるなら、授かった生をお返しするようなこともいたしかたないと思っている。でも、そんな非人間的な発言は容易に出来ない。
だから、問題をすり替える。この田舎町でサツキが育ったから。汚染されたタイラギを食べて育っているから。
汚染された物を食べたからといって、それが出生前診断で何か異常を発見できるとは限らない。そもそも、この汚染問題は噂だけで、実態が何も発表されていないのだから。
でも、この言葉に企業の男が反応する。
汚染問題の真実を知っている。
それは、自分が勤める企業が絡んでいる。
汚染された食材を輸入して加工しており、もちろん、販売する商品はその汚染部分を削除している。でも、その汚染された廃棄物は海に垂れ流していた。そして、生物濃縮でこの漁場の様々な生物に蓄積した。
漁師は怒りをあらわにして、漁協、そしてマスコミにこのことをぶちまけると言うが、それも現実的には意味が無い。この企業は、この田舎町にとって必要不可欠な存在。当然、漁協とも癒着しており、問題にしてもかき消されるだけ。
父も町のために良かれと思ってPR企画に協力していた。それも、病気の体を厭わず。でも、実際は自分たちの町をむちゃくちゃにした会社が、問題の矛先を変えるために仕組んだ企画に騙されてのっかていただけだった。
漁師、睦美が抱く大きな失望。

さらに、父は企業の男と睦美の不倫に気付いていたらしい。
そのことはすごく心配していたようだ。
サツキが、睦美のこうやって、企業の悪巧みが明らかになっても、まだ企業の男との接点を持ち続けるためにPR企画を続けようとする態度にいらだち、全てを語った。そしてそのことに気付かず、いまだ睦美と一緒になれればなんて想いを抱く漁師を憐れんだところもあったようだ。
全ての想いがぶちまけられた場は・・・

登場人物の様々な考えに同調しながら、色々と考えて観る。
それも、妙齢になった人を中心に描いているので、同世代の自分に突き刺さる。
かなり疲れる。
結局、人は自分のために必死に生きているのかなあ。人のため、家族のためと言っても、最後はそこに行き着いてしまっている。それを厳しく残酷に伝えてきているようでつらい気持ちになる。
でも、こうやって、他人とぶつかり合うことがあるから、自分と向き合うことができ、今の自分がどうすればいいのかを導き出しているようなところも感じる。それが自分のために生きるということにつながるなら、決して悪いことではないのではないか。

かつての水俣病の状況を彷彿させるような設定の中、今、問題となっている放射性汚染物質に苦しむ農家、漁師のことなども意識させられる。
そこに、利権が発生する企業の存在、影を潜め、問題の全てをどこかで止めて明らかにしない国なども感じられる。
さらには、先行き不安な今の世の中における、中年世代が抱く未来への閉塞感。
経済的にも精神的にも生きていくことが困難な中で、結婚や家族の存在が昔と比べてどう変わっているのか。
神の領域にまで足を踏み入れようとし始めている数々の科学技術をどう考えるのか。
この架空の町で明らかにされること全てが、今の現実を生きている自分たちに引っかかってしまうようなことばかりが揃えられているようである。
大きな問題は結局、何も解決していない。
解決というか、決着したのは、睦美と企業の男の不倫関係ぐらいか。
これが、現実の世の中の厳しさを感じさせる。
そう甘いものではない。これからも、ずっと自分たちをあらゆる問題がまとわり続ける。そんな中で生きていかなくてはいけないのだ。
でも、結末は決して否定的には感じなかった。
自分と向き合うことで、睦美はこれからの自分の人生の小さな突破口を開いたかのように見える。同時にそれは、この町が抱える大きな問題に立ち向かう突破口にも通じているように思う。
複雑に交錯した問題に対して、こうして会話をして、各々の思惑をぶつけ合うことによって、今の自分が見えてくる。その積み重ねが、やがて、多くの問題をときほぐして、いつの日か解決へと向かうような気がする。
ラストは睦美の悲しい涙で締めくくられているが、それはこの町、家族のこれからの再生へのスタートとして見たいように思う。
その覚悟をしているから、これまでの記憶よ流れんなと言ってるのではないだろうか。

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