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2013年7月25日 (木)

死神 ~古典落語より~【HPF高校演劇祭 北摂つばさ高校】130724

2013年07月24日 ウィングフィールド

2年前に拝見した高校。
とにかく元気いっぱいで、明るく楽しい作品をコミカルに演じられる。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/schoolaid-11072.html
その中に潜むブラックな部分が見え隠れするなんてところは、今回の作品にも引き継がれているみたいです。

この高校に限らないのだろうが、かなり稽古を積んで、舞台に臨んでいるのではないだろうか。
非常にテンポがよく、楽しく観ることが出来た。
登場人物たちが、生き生きとしており、舞台でとても輝いて見える。

観劇前に、元ネタの落語のあらすじだけ確認をしていたのだが、何やら欲深き人間をダークに皮肉めいて描いているような印象を受けていた。
実際に拝見したところ、女性が多いこともあってか、ずいぶんと華々しい展開で話を進めている。
元気で明るくたくましい人間たちが、コミカルに舞台上で活躍していたからだろうか。
人間の愚かさは感じるものの、それがどうした、これが人間なんだといった逆ギレみたいな、ふてぶてしい人間が浮き上がって見えた感じがする。
欲深さを認め、死神すら打ち倒さんとする強い人間。そんな人間の行き着く成れの果てに人の憐れを想う。

AKBみたいなアイドルになってセンターをなんて言葉に騙されて、芸能事務所にお金をつぎ込んでしまった女子高生、北野。
神々が宿るトイチの出雲金融に借金の返済を迫られている。 とは言っても、親も親戚もしっかりせず、どちらかというと、自分が大黒柱みたいな存在。どう考えても返すあてはない。
心臓を売って、大金持ちになって、借金返済をした上に、贅沢な暮らしをみたいなノリで、見事に騙されそうになったところ、死神が現れる。
死神はある呪文を教えてくれる。
この呪文を死神が足元にいる時に唱えれば、その人は助かる。枕元にいる時に唱えてはいけない。その時は、お前の命をもらうと。
半信半疑だったが、突然、国際コマンダーと名乗る男がマシンガンを持って乱入し、社長を撃ち殺してしまう。 その時、死神が足元にいたので、呪文を唱えてみると、何と社長が生き返る。
呪文は本当だったんだ、本当に死神なんだと驚くのもつかの間、国際コマンダーは、自爆して部屋もろともみんな吹っ飛ぶ。

意識朦朧とする中で、北野は呪文を唱える。 自分の足元に死神がいたらしい。
だから、生き返ることができたみたいだ。
呪文を教えてくれた死神と再会し、感謝の言葉を述べてお別れ。
くれぐれも、約束は守るように。そう言い残して、死神は去る。
借金を取り立てる人もいなくなり、新しい人生の始まり。

でも、出雲金融の女性社員の一人だけは生き残っていた。
死神との一部始終を見ていた彼女は、北野にあるお願いをする。
昔、世話になったメガバンク社長の娘が臨終の時を迎えようとしている。 彼女の命を救って欲しいと。
娘のところへ向かった二人。
でも、死神は枕元にいる。これでは呪文を唱えることができず、娘の命を救えない。
ベッドを反転させればいい。そう言う、女性社員。
でも、北野は死神を騙すことになり、自分の命が奪われることを恐れて承知しない。
メガバンクの社長だから、謝礼はきっと、たっぷり。
そんな欲に目がくらみ、北野は、結局承知することに。 そして、見事に成功。
娘は元気になるが、女性社員のことを見て、お母さんと言う。
どうやら、いっぱい喰わされたみたいだ。 助けた少女は、メガバンクの社長の娘などでは無く、女性社員の子供だった。 そして、女性社員も実はもう死んでいる。 残された娘のことが気がかりで、北野を騙したようだ。

これを見ていた死神は、自分を騙したと憤慨して北野の前に再び現れる。
人助けのため。そんな言い訳をするものの、欲に目がくらんだこともしっかりと見られている。
命をいただく。
でも、その前に一度だけチャンスを。
北野が連れて来られた場所は、命のロウソクが燃える場所。 自分のロウソクは今にも消えそうだ。
元気良く燃えているロウソクは、あの助けた少女のものだという。
いらないことをしたがために、北野のろうそくと入れ替わってしまったらしい。
死神は、長いロウソクを渡し、消えそうな炎をこちらに移し替えられたら助かると言う。
北野は震える手で、チャレンジし、見事に成功。
その時、くしゃみをしてしまい、炎は・・・

結局、北野の命の運命は始めから決まっていたのだろうか。
騙し騙され生きてきて、最後に欲に目がくらんだとはいえ、行った人助けが報いとなってしまう。
ブラックで救いの無いオチ。
しかも、それが全部、神が絡んでいるところが、神も仏もないのかと感じさせられる。
どう解釈すればいいのか、よく分からないオチですが、北野の愚かさよりも、同情の方が強めに感じますかね。そして、死神はもちろん、それから助けることも出来ずに普通に消え去っていく力無き神々に対する腹立ち。
北野は、死にましたが、少女がその生をつなぎ、これから生きていく。とても純粋そうな少女ですが、きっと北野同じく、本来持つ欲が出てくる時があるでしょう。
人の生の繋がり、生への執着なんかも感じる話です。

北野、大久保眞希さん。元気いっぱい、今風のお気楽な女子高生。・・・なのかな。偏見だろうか。ノリで流され平気で騙されるが、逆に平気で人を騙すしたたかさ。人の醜いところを、明るさで打ち消してしまうような、まぶしく輝いた演技。
死神、坂元裕吾さん。死神ねえ。観ないと分かりませんが、普通のお兄ちゃんの姿です。雰囲気を持たれている方で、登場で空気が変わります。セリフの言い回しがリズム良く、軽快に作品を観ることが出来ました。
出雲金融の社長、橋本大智さん。何でこんなに貫禄があるのだ。落ち着いた雰囲気の中で、ちょっとおどけた頼りないところを飄々と醸すような演技は、言い方は悪いが、ベテランおっさん役者の巧みな技と同じ。見事な演じ方だと思います。
出雲金融の女性社員、村田花琳さん、細田安美さん、大島風香さん。
コンビネーション見事。掛け合いのリズム、シンクロなど、寸分の狂い無き素晴らしいハーモニーを奏でています。最初は、ボケの細田さん、ツッコミの大島さん、仲裁の村田さんみたいな設定ですが、妄想劇シーンや、場が混乱していくに従い、徐々に3人同化してみんな弾けたキャラになってしまいます。
国際コマンダー、進信也さん。ゴキブリなんていう役もされています。要は意表を突いた道化ポジション。思い切りのいい、ハイテンションで舞台を盛り上げます。自分の役目をブレずにしっかりと果たす。
少女、人見玲奈さん。病気で苦しむ演技から、すっかり治って元気いっぱいとなる演技。この切り替わりが、無邪気さと同時に、ちょっとしたたかさ、調子の良さを感じさせ、この作品の描く人間をイメージさせます。

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