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2013年7月30日 (火)

AS YOU LIKE ~野ざらしの海豹~【HPF高校演劇祭 精華高校】130729

2013年07月29日 ウィングフィールド

テンションと個性の勢いが溢れる楽しい作品。
その中で、高校生として演劇をする自分たちが抱える現状の悩み、将来への不安をほのめかしながら、作品名のとおり、思うままにやってみるという覚悟を伝えている。

勉強、恋愛、趣味・・・
しなければいけないこと、したいことは幾らでも、自分の周りにいつもある。
思うままにと言ったって、本当に好きなことを好きなように自分で決めてやるには、まだ幼い。
親、両親、友達、世間・・・そんなものに、行動は制限がかかる。
それでも・・・

色々な悩み、行き詰まりがある中で、不安を抱えながらも、こんなに楽しい作品を演じている姿が、内側では幼き心を震わせていながら、普通に明るく元気のいい高校生として振るまっているのであろう姿と同調し、どこか胸が締め付けられる想いがする。

演劇部部長の女の子。
先輩たちの過去作品を基に、作品をスタバで創作中。
親友でもあるのだろうか。部員の子にその仕上がりを見せている。
話は、その作品がどういったものかというメタフィクションの形で進めながら、最終的にこの作品自体へと交錯させているようだ。
暗転の段取りの悪さや、作品創りにおける色々な出来事を惜しみなく暴露してしまう、演劇あるあるネタを豊富に盛り込んだ展開。

肝心の出だしは、先輩たちは謝罪から、スタートしたので、逆転の発想で死ねという拒絶から。
それは、さすがにまずいか。
先生、好きです。ここでは、意味不明だが、ラストに繋がる言葉となる。

まずは演劇部の実態。
女王様のような先輩に、厳しく指導、いや、いびられる後輩たち。
後輩たちも、かわいそうなように見えて、なかなか肝は座っており、従順なふりして、逆にやり返したりして。 どっちがかわいそうなのやら。
高校生らしい定番の題材。
次はやはり、進路相談なんかがいいのだろうか。家のことを描くのもいいかもしれない。

舞台はかわって、家。
典型的な親父に、呑気そうな天然の母親。
何がしたいのか、海豹になりたいと言い出す息子。
気持ちは真剣。たとえ、少し腰を痛めようとも、何度もでんぐり返しを繰返して自分の気持ちを伝える姿からその覚悟がうかがえる。
どうして海豹に。虎とかライオンとかではダメなのか。少しズレているが、心配で反対する母親。
でも、父親は息子の気持ちを尊重する。
自分も昔、海豹を目指したことがあるから。
海豹の道は厳しい。でも、まずは見習い海豹からやって見ればいい。
母親も、父が認めるならと賛意を示す。
あの頃、見習い海豹として頑張っていた輝く父に惚れて結婚したのだから。

そんな見習い海豹の姿はやがてニュースで取り上げられる。
有名な番組、ニュースプラネット。
毒を吐く偽ハーフキャスターに、ゲストで呼ばれた、自分のことをあすにゃんなんて呼ぶ痛い女優を迎えて。 だいぶ人に迷惑をかけているようだが、少しは芸も覚えた様子。
苦手な生魚も、刺身を食べて克服しようとしている。
まあ、まずまず、頑張ってやっているみたいだ。

う〜ん、これでいいのだろうか。
現実を見た方がいいのではないか。
友達はシビアな意見を述べる。 テンプレ。ありきたり。
テスト、受験勉強、成績、親、・・・
演劇はあかんのか。
あかん尽くしの生活。
何とかあかんを逃れてギリギリでしている自分の楽しいこと。
でも、演劇部には後輩も入ってこない。
認められない演劇。
親にだって演劇をすることを理解はされていない。

最終台本が出来上がる。
最後まで残ってくれた友達の二人をおばちゃん役として起用する話。
なかなか、いけてる自分たちがおばちゃんとは。
まあ、とりあえずやって、面白くないという現実を部長に突きつけよう。
もしかしたら、顧問の先生がストップをかけてくれるかもしれないし。
やって見たら、やはり、あんまり。
代々、受け継がれる秘蔵ネタ、クリティカルショックも全く受けない。
つまらない。
実は、ここは本当にリアルでつまらない。
ここまでの45分ぐらい、なかなかのテンポで、しっかり笑いもとっていたのだが、急にトーンダウンする。
でも、ここが面白かったら、話が後に繋がらないので、正しい状況ではある。計算だろう。
現に、観ていて感じる、終わりが見えないコントをいつまで続けるんだということを、演じる本人方が言及して、自虐ネタとしている。

部員は去って行った。 一人っきりになってしまった部長。
みんな離れていく。
空回りしてばかり。
演劇を続けるのが困難だけど、その想いを伝えるような話。
ありきたりかもしれないが、ありきたりの話だからこそ、諦めずに続ける。負けない。
ラストの10分は、部長の覚悟が言葉で伝えられる。
想いを込めた力強い揺るぎない真摯な言葉が心に響くシーンである。
演劇は、あまり親は認めていない。
親にとっては、確かに海豹になると言っているのと違わないことなのかも。
だから、自分は先生になろうかと思っている。
演劇部の顧問になり、作品の最初に・・・

軽快な二人の女子高生の掛け合いから、ダンスを最初に入れ込んで、舞台の空気を作る。
振り付けは、激団しろっとそんの大牧ぽるんさんがされている。
彼女の感じからは、アイドルのような可愛らしいものを披露されるのかと目の保養を期待していたが、かなりスタイリッシュな、この作品の想いの覚悟をイメージさせる真剣なものであった。
その後の展開は、とてもリズム良く行われており、構成も分かりやすいように思う。
けっこう楽しくバカバカしい面白いバタバタネタから、上記したように、逆にテンションが収束していく模様が、この作品を創る部長の心の行き詰まりと連動しているのだろうか。
行き詰まりや限界を感じるからこそ、人は負けるかとか、やってやるみたいな気持ちが生まれるわけで、そんな強い覚悟を持って臨んだ作品を完成させていくことにつながるはず。
それが、この作品となって生み出されたようである。

部長、西嶋千愛さん。作品と同じく、この作品の脚本みたい。自分のことを描いた作品となっているのだろうか。自分を演じるというのはなかなか難しそうに思うが、しっかりと想いを伝えている。気取りもせず、等身大で真摯にいい自分の演じ方をされていたように感じる。純朴な雰囲気がとても魅力的。
部長の台本を一緒に確認する部員、母親役、おばちゃんと色々な役、角野茉里奈さん。いい空気を作り上げられる。友達の時は、腹割って話せるような親しみと厳しさを持たせる。母親の時は、優しく天然の面白い姿。普段からそうなんだろうか。包み込むような優しい雰囲気を醸される。ダンスはよくは分からないのだが、この方が一番上手かったのではないか。
女王様のような先輩部員、痛い女優、おばちゃんとこの方も忙しい、西尾明日菜さん。大人のような色気ある綺麗さとまだまだ子供の可愛らしさを同居させた外観を活かした、毒があるけど、ちょっと抜けてるキャラがはまる。
部員、西埜沙織さん、相庭亮太さん、田中芹果さん。
西埜さんと田中さんの軽快な掛け合い。先輩にいびられて、おとなしくかわいそうな姿は何処へやら、  田中さんの飄々とした毒あるブラックなボケに、弱々しいながらも、巧妙にツッコむ西埜さん。小ネタも可愛らしい。 西埜さんは、キャスター役では、田中さん顔負けの毒あるキャラとなり、ゲスト女優を抑え込み、淡々と自分の空気にしてしまう。お二人とも、そんな先輩を先輩とも思わぬような度胸座った感じなのだろう。
色々とさせられているコロス役の西村幸樹さん、兵頭拓磨さん。
前説されて、ヘッドライトを付けていた方が兵頭さんかな。しかし、何であんなに前説、ガチガチになっていたのだろうか。 劇中のテンションとの違いがすごく気になる。お二人の何か色々と好き勝手にやらされている感じが哀れと面白さを誘う。
あと、どなたか分からない。当日チラシで???になっていたので、お名前が。 多分、海豹になりたい息子で、でんぐり返しを連発していた方。ひたすらなところが根負けして笑ってしまう。

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コメント

さいせいさんー( ;∀;)私です
いや、最初はガンガン考えたんですが、あの方がこの作品にあうと思い急遽かえました。もうみんなでやりましょう!失敗しても大丈夫、やりきろう!をテーマに作品を再度考えてもらいました。
何か伝わればよかったです!

きっと商業にのればクオリティを求められちゃうんですよね。(身にしみてます)
しかしみんなには楽しい!って思って作品を作ってもらいました。
何か残れば幸いです。

投稿: 大牧ぽるん | 2013年8月 1日 (木) 10時09分

>大牧ぽるんさん

コメントありがとうございます。

この作品は、少しシュールで、人生の道を決める現実を厳しく突いているところがあるように思うので、イメージとしては、拝見したパフォーマンスがはまっているように思います。
まあ、少し遊び心で、ニュース番組みたいなシーンで、可愛く踊らせても良かったかもしれませんね。

自分たちがしっかり楽しむ、楽しいを見せて、観る側にも楽しんでもらうことが、きちんと出来てからの商業的なクオリティーだと思うので、その原点を見出すいい作品に仕上がっているように感じました。
それがベースにないと、幾らクオリティー高くなってもねえ。

そういえば、何かプロデュースユニット立ち上げてましたね。
また、情報、注目しています。

また、劇場で。

投稿: SAISEI | 2013年8月 1日 (木) 18時24分

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