« 梨の礫の梨【宮川サキ+Sun!! サキトサンズ 二人芝居】130603 | トップページ | イーッ!!【劇的☆ジャンク堂】130605 »

2013年6月 4日 (火)

オゾケ・ストロベリィ・ドォルズ【劇的☆ジャンク堂】130604

2013年06月04日 シアトリカル應典院

むかしむかしで、はじまる話はキュートで、あほで、ちょびっと、切ない。
チラシの言葉に偽りはない。
強いて言うなら、けっこう切なくはあるが。

キュートな欠陥ロボットたちと人間のクリスマスの日の物語。
そこには悲しい現実が待ち受けるが、純粋で真摯な想いが人間を大きく成長させるような話。
切ないながらも、相手を想う気持ち、人間の強い力を感じさせる作品です。

<以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は明日まで>

むかし、むかし、あるところに佐藤という男がいました。
彼はロボットの廃棄回収の仕事をしていました。
ロボットは精密で、それを壊す姿はまるで人を殺しているように見え、誰もが嫌がる仕事でした。
そんな仕事ばかりしていた男は、いつしか心を失い、命令に従って無機質にただロボットを壊し続けていました。
そんな彼の下に大きな仕事が舞い込みます。
町外れの幽霊屋敷のロボットたちを回収するように言われたのです。

  

その屋敷には昔、博士と呼ばれた男が住んでいました。
彼は幼女を誘拐し、5体のロボットをラブドールとして住まわせていたと噂されています。
何者かによって殺されたのも、幼女の呪いだとか。
そして、主人亡き後も屋敷にいるロボットを回収しないといけないのです。

  

屋敷には元々、博士とイチゴという幼女と4体のロボットがいました。
ある日出会った白馬の王子様に憧れるムース、機械いじりが大好きな大福、料理が好きなタルト、おとなしく黒虫とかいうものをかわいがるちよこ。
みんな、何かの欠陥があって、ここに連れて来られました。
ムースは特殊眼鏡が無いと目が見えない、大福は女なのにちんこが付いている、タルトは後ろにも口があり本当のことを喋ってしまうので口が悪い、ちよこは先端恐怖症。
イチゴは本当は優しい子なのですが、なかなか素直になれず、いじわるなところがあります。
博士はイチゴも、そしてロボットたちもみんな幸せに暮らせるように願っていました。
だから、イチゴをとてもかわいがっていましたし、ロボットたちにも、その願いを出来るだけ叶えてあげようとしていたのです。
でも、ある日、不幸なことに、何者かによって殺されてしまったのです。

  

もう帰ってくることのない博士を待ちながら、みんな屋敷で暮らします。
いじわるなイチゴはクリスマスの日に街中を真っ黒にしてしまおうなんて悪いイタズラを考えています。
ロボットたちは博士から、イチゴの面倒を見るように言われているので、それに協力します。
そんな中、新しいロボットが屋敷にやって来ます。
あめというロボット。
天真爛漫な彼女は、いじわるなイチゴにも、そしてなかなか心を打ち明けないロボットたちにも積極的に仲良くしようとしてきます。
みんなが楽しむクリスマスにそんな悪いことしたらダメなんだよ。サンタさんがみんなにプレゼントをくれるんだから。
あめのそんな言葉に、イチゴは反発します。サンタさんなんかいないよ。
あめは言います。そんなことないよ。だったら煙突を作ろうよ。そして、楽しいクリスマスパーティーをしよう。
いつの日か、ロボットたちはあめの下に集い、そしてあのいじわるだったイチゴまでもが、みんな友達のように楽しい時間を過ごすようになります。

  

佐藤が屋敷に入ります。
5体のロボットのリストを持っています。
そこにはもうイチゴはいませんでした。
イチゴはクリスマスパーティーの準備の際に不慮の事故で亡くなってしまったのです。
そして、ロボットたちはもう壊れる寸前の状態になっていました。
男はあることに気付き、悔やみます。
たった一つだけ、何か怖くて調べていないことがあったのです。
それはあめがなぜこの屋敷に来たのか。
欠陥のあるロボットがこの屋敷にはやって来ます。
その欠陥を知ることを拒絶していたのです。
それは、自分の思っていることと反対のことしか喋れないというものでした。
イチゴが好き、ロボットたちと一緒にいると楽しい、サンタさんはいる、クリスマスパーティーは楽しい・・・
あめが話していた全ての言葉は全部、逆のことを思って発せられたものだったのです。

  

ムースが用意したサンタクロースの衣装、大福が作った空飛ぶソリ、タルトが作った料理、黒虫と一緒に少し心を開くちよこ。
楽しい、楽しいクリスマスパーティー。
そんな楽しい時間を作ってくれたあめに、素直じゃないので照れながら振り絞るように言うイチゴ。あめ、好きだよ。
嫌い、イチゴのこと嫌い。そう、言い返す欠陥のあるあめ。
もし、こんな風になっていたら、どれだけ良かったのだろう。
でも、現実は、佐藤の目の前に広がる悲惨な光景でした。

  

壊れる寸前のロボットはもう意識が無くなっているのか、佐藤のことをサンタだと勘違いしています。
佐藤は、ロボットたちの願いを一つ一つ叶えていきます。
白馬の王子様。連れてきたよ。一人二役で白馬の王子を演じる佐藤。
私はタルトのことが本当は好きだったと言う大福。私も好きだよ。もはや停止してしまったタルトを起こしてタルトになりすます佐藤。
悲惨な状況に我を失ってしまっているちよこ。
全てを終わりにするために、悲しみと悔いをこらえながら、ロボットを破壊していきます。

  

むかし、むかし、あるところに佐藤という男がいました。
彼はロボットの廃棄回収の仕事をしていました。
ロボットは精密で、それを壊す姿はまるで人を殺しているように見え、誰もが嫌がる仕事でした。
でも、男はロボットたちの幸せを願いながら、ロボットのことを深く深く想いながら、ロボットを壊し続けました・・・

  

といった感じの少しブラックで、切ないのだが、一人の男の人の心を取り戻した童話のような物語だったと思います。
話が飛んでいるところや、すじがおかしいところはあると思いますが、だいたいはこんな感じでしょう。
話を追いにくいところがあって。
何がいけないかって、女の子が可愛らしいので、見惚れるてしまうんですね。
そうすると、いつの間にか話が進んだりしているでしょ。
これを数回繰り返すと、あれっ今どういう状態になっているんだっけといった感じになるわけです。
これを避けるのに、実はダンスなどのエンタメ要素を盛り込んでもらえると、そうやって見惚れるのはそこ、後はきちんと話を味わうなんてことが出来るのですが、今回はけっこう淡々とした演出になっているようで、少し盛り込んではいるものの、少々、切り替え不足な観劇になってしまったように思います。
これは私個人的な問題ですがね。

  

ロボットという純粋なキャラだからこそ、イチゴの閉じた心に光を与えることで、その楽しく幸せな生活がとても輝いて見えます。
逆に、だからこそ、何も悪くない、欠陥だから仕方が無いのだが、悲しい事態が引き起こされた事実が厳しく映ります。でも、それに目を背けず、佐藤が失った心を取り戻すのは、そんなロボットたちの人間よりも純粋で真摯な相手への想いだったといったところでしょうか。
ハッピーエンドだったら良かったのに。こんな気持ちを引き起こさせることがこの作品の狙いなのかなとも思います。
現実は厳しい。せっかく分かり合って、これから楽しい時間が待っていたはずなのにといったところで、タイミング悪く、悲しい事態になることは多いと思います。
これが切ないところでしょう。
でも、そんな分かり合って、通じ合えた気持ちまでをも否定することは無いでしょう。
それを大切に、その悲しみをいつの日か繰り返さないでいいように生きていく。そんな力強い生き方が出来るのも人間であり、そんな力強さを持って、またロボット廃棄回収の仕事に従事する男の姿が印象的でした。

  

佐藤、マナカさん。ロボットを壊す。単なる物として機械のように壊す姿から、同じ痛みを知る物として人間として壊す姿を見せることで、人の気持ちが分かる人間への成長を見せています。悲しみを背負いながら、相手への想いを胸に行動する。後半、壊すという破壊的行動でありながら、そこにいつの日か自分と相手の幸せが訪れるのではという希望を感じとれる力強い演技でした。
イチゴ、山田百合香さん。かなりのキレキャラ。いじわるな表情が凄くいじわる。素直になれないもどかしさが伝わってきて、こちらまで心ざわつく。最後の、こうなっていればというシーンでの照れた優しい微笑みは、現実が異なることを知っているだけに悲しみしか感じないが、この一瞬の笑顔こそが、人の想い合った結果であり、これを生み出す世界を創れればという大きな目的でもある。
ちよこ、本田夏実さん。ずっとオドオドキャラで、黒虫とやらを使ったネタで飄々と笑いをパクっていかれる。途中、実はこの黒虫がこの屋敷にいる人たちで、この子の手の内で育てられている話なのかと思ったぐらい、一切、前には出てこないのだが、全てを把握しているような何か不思議なオーラを発していた。
タルト、黒木成実さん。後ろの口で喋る生意気なセリフと、少年のような純粋ないでたちのギャップが面白いキャラとして出来上がっている。あめとは逆の欠陥なのだが、こちらはこちらで、実際そうだと逆に信じられない存在だろうなあと人間の嘘と真実の妙なバランスを考える。
あめ、中山はちこさん。何だろう、この天真爛漫な雰囲気は。それでいて、最初から何か隠し持っているに違いないと感じるあくどさ。今から、思うと、この方、人と視線を合わせて喋っていたかなあ。少なくとも舞台の前を向いて話される時にどこか視線がおかしい気がしてずっと違和感があった。これが後半で明らかになる全て嘘しか言わないいう欠陥に妙な納得感を生み出す。まあ、何といっても不思議なのは、時折、入れ込む一発芸と、おかしなちくわゲームなのだが。ちなみに、ネットでちくわゲームを調べると五目並べみたいなものと美少女にちくわを食べさせる怪しげなものが出てくる。
ムース、西田美咲さん。前半はお得意な間合いのいいツッコミで笑いを誘う。ラストの白馬の王子様への真摯な想いが通じる安堵と喜びの笑顔が絶品か。安堵を感じさせるところが非常にいい。頭のいいしっかりしたキャラ設定みたいで、この生活にどこか終わりを感じるというか、打ち負けそうなところがあったようなことをほのめかしている。それだけに、白馬の王子様は、単なる憧れの男以上に、自分の救いともなるぐらいに思っていたのかもしれない。その救いが実現した時が、同時に自分の終わりというのが切ないのだが。
大福、きゃな子さん。威勢のいいチャキチャキの雰囲気。ロボットで両性という、よく考えるとかなり難しい役なのではないか。タルトの想いを告白するところが、男性とも女性とも思わすバランスを見せている。こうなっていればのシーンでタルトと手をつないでいるところを見ると、一瞬でちょっとうるっとくる。心に秘めた想いをこうした最期の時でしか出せないというのもまた切なさがつのる。

|

« 梨の礫の梨【宮川サキ+Sun!! サキトサンズ 二人芝居】130603 | トップページ | イーッ!!【劇的☆ジャンク堂】130605 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEIさん
いつもご来場、ブログ本当にありがとうございます。
やはりお気に入りにいれて何度も読み返してしまい、コメントが遅くなってしまい、申し訳ありません。

いつもとは違う感じのキャラクターですこし恥ずかしかったです。
お楽しみいただけてましたら幸いです。
ありがとうございました。

投稿: 西田美咲 | 2013年6月 6日 (木) 19時08分

>西田美咲さん

コメントありがとうございます。
お疲れ様でした。

いや、私が西田さんを魅力に感じているところが豊富に詰まったイメージどおりのキャラでしたよ。
力強いダンスなどの動きも魅力ですが、何と言っても、舞台の空気が一瞬でふわっと変わるような、切なくも喜びに溢れた素敵な表情と心のこもった言葉を発せられるところは、この作品の大きな見どころだったと思います。

今後とも楽しみにしております。
ご活躍を(◎´∀`)ノ

投稿: SAISEI | 2013年6月 7日 (金) 09時39分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オゾケ・ストロベリィ・ドォルズ【劇的☆ジャンク堂】130604:

« 梨の礫の梨【宮川サキ+Sun!! サキトサンズ 二人芝居】130603 | トップページ | イーッ!!【劇的☆ジャンク堂】130605 »