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2013年6月29日 (土)

林檎幻燈【劇団太陽族】130628

2013年06月28日 アトリエS-pace

死を身近に体験し、自分の生を見失ってしまったような少女が、かつての時代からつながる命を体感することで、その生を取り戻していくような話かな。
作品名どおり、幻燈を見るかのような舞台の雰囲気が出来上がっており、そこで人の生死が描かれ、自分たちもその命を体感して何かを感じるようになっているような作品でした。
生きるのは厳しい。でも、そこにある生は多くの死からつながって生まれてきたもの。
だから、厳しいからといってあきらめるわけにはいかない。何としてでも生きていけ。そう厳しく伝えているように感じました。

<以下、ネタバレ注意。う~ん、するかなあ。大丈夫な気がするけど、一応、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

かなり、ごちゃごちゃで、話が急に飛んだりするので、筋はとても追えない。
舞台はアングラと言うのだろうか、昭和色でありながら、言葉の節々は今時だったり、何か、色々な場所や時間を一緒になって彷徨っている感じである。
童謡や、それに合わせたどこかノスタルジックな想いを感じさせる踊り、五七五で綴られる俳句なども、独特な雰囲気を創り出し、奇妙な感覚を得る。
いつものごとく、頭がキャパオーバーになってしまい、防御機能が働き始めたのか、ぽか~んと見ていたが、だいたい1時間過ぎたあたりで、何となくだが、全体像がぼんやり、本当にぼんやりと見えてくる。
まあ、まとめるとこんな感じではないだろうか。

海で亡くなった双子の妹たち。
自分が目を離した隙に。
自分のせいだと、机の下から出て来なくなった少女。
母は、父も少女のことも責めている。
そして、新しい命を授かろうとしている。
少女は自分の名前を母親にもう一度呼んでもらいたいと思っている。

そんな中、少女は時空を彷徨い、自分の名前を探しながら、様々な命と対面して行く。
自らの光を消した時、その周囲が見えてくるように。
母がいて、父がいて、私がいて、双子の妹がいて。1+1+1+2。
奇数になってしまう。余り物が出来る。順番が違う。
そんな当たり前の計算で出てくる答えではない、最初に咲いた花が必ず先に枯れるとは限らない生死の世界へ。
解釈が難解でよく分からないが、奇数。割り切れない。割り切れない想いがある間とかけているのかなあ。偶数となり割り切れた時に生が生まれるみたいな。余りとなっている失われた魂がまた輪廻転生して新たな生となって甦るような印象を受ける。
戦争。ひめゆり部隊の集団自決や、関東軍のシベリヤ収容所など。
震災なども絡めながら、その不条理とも思える現実の中で、消えていった命が描かれる。
その人たちは、自分の名前をしっかり持ち、その命を全うした。
作品中に月下美人というたった一回だけ花を咲かして、散っていくという花が出てくるが、それがこんな人の人生を尊んでいるように感じる。
そして、自分と同じように、自らの光を消して、失われた命を俳句に託して照らし続ける老人と、その弟子の姿も交錯させている。

やがて、少女はテーブルの下で一人の少年と出会い、これから先に自分が生み出す命を考えるようになっている。
自分の戻るべき場所を見出して、そこで自分の生を全うする。失われた死を見詰めながら。
そんな生きることへの強い覚悟を得た少女の姿が映し出される。
よくは分からないが、少女が住むマンションの屋上にある屋上造船所から船が門出を迎えるような形で表現しているみたいだった。
喫茶アダムとかのキーワードも、これから創り上げられる少女を含めた周囲の人たちの世界といったイメージなのかもしれない。
生きる覚悟と言っても、それを美しくは描いていない。
人の物を盗んだり、死んだ者から自分が生きるための物を手に入れたりなんてことをイメージさせるシーンも幾らか組み込まれている。
それだけ、生きるというのは綺麗ごとではない。死ぬのはもちろん、ひどくつらく悲しいことであるが、生きるのもそれはそれで大変なこと。
失われた命を想うだけで生きる覚悟なんか出来るものではなく、そんな命のためにがむしゃらに生きてやるぐらいの本当に強い覚悟が垣間見られる。
死を乗り越える。その死を踏みつけてでも、生きている自分はその生を追求し続ける。それこそが、死への本当の弔いであり、今を生きる私たちの使命であると厳しく伝えているような印象を受ける生死の描き方がなされているように感じた。

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