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2013年6月 4日 (火)

ケタ魂【MousePiece-ree】130603

2013年06月03日 Black Boxx

見るたびに、元気になっていく役者さん。
いわゆる中年層であるのに、その勢いは止まりを知らないようです。
よく感想で書かれている大人の悪ふざけは最適な言葉でしょう。
面白いどころじゃないです。
観終えて、爽快、すっかり元気になります。
全力でぶつかってくる姿が、かっこよく、気持ちがいいですね。

何でも相談総合会社、ドリーム。
ふざけてばっかりのおっさん専務に、社長は頭を抱える毎日。
営業は任せろなんて言ってたのに、仕事の依頼はなかなか取ってこないし、どこでどんな営業をしているのやら。
社内の雑用だってろくに出来ない。
今日だって、ソファー一つ動かすのにどれだけ、声を張り上げてツッコまないといけなかったか。
こんな使えない奴と一緒に仕事をするのがどれだけ大変か。
いや、一緒になって遊んじゃっているみたいなところも。
ボケとツッコミの毎日で、まあいいコンビとしてやっている。

ところ変わって、ある高級マンションに住む夫婦。
夫の亡くなった父親がやり手だったみたいで、マンションとかの資産があり、生活には困っていない模様。
でも、昔はギラギラしていた熱い男も、今やすっかりおとなしい中年に。
そんな男に愛想をつかしたのか、妻はホストクラブに入り浸り。
昔は、あんなに俺のことを愛してくれていたのに。
どんどん自信を無くし、もうオドオドして、人の目すらちゃんと見て話せないぐらい情けない男に。
思い出すのは、触るとやけどしそうな熱さを持った自分と、ベタ惚れしてくれる妻と過ごしたタヒチの夜。
あ~、あの頃はよかった。

そんな情けない男が、チラシを見て、ドリームを訪ねてやって来る。
専務も頑張ってチラシ配りをしていたみたいだ。
輝きたい。
そんな男の一言に、社長と専務は協力することに。
もちろん、いい値を払うというお金にも惑わされているのだが。

目には目をではないが、奥さんがホストに熱をあげているなら、あなたがそれ以上の魅力を醸すホストになればいい。
水商売の経験があると言い張る専務の提案に従って、ドリームをホストクラブにすることに。
もちろん、全員ホストになる。
メイクもばっちり。
絶対にはやらないであろう、いかがわしさプンプンのホストクラブの出来上がり。

作戦はこうだ。
奥さんを店に呼び出す。
そして、正体がばれないように旦那が接待。
そこに専務ホスト登場。
客を奪う。
奪い返す旦那ホスト。
そこで、決め台詞。俺がお前を守る。

ついに作戦決行の日。
でも、自信を無くした男がそんな急に変われるわけがない。
果たして、夫婦の行方は・・・

80分の作品。
70分は、だいたい30秒に一度は何かをして笑いを取ろうとする、貪欲過ぎる演出で話を展開。
時間を全く無駄にしません。でも、結局、全部、無駄の塊みたいに錯覚させるところも面白いところです。
そして、残りの時間で、このドタバタを、いい話に一瞬で変えてしまう見事なマジックを見せて話を締めています。

男は父が亡くなったことで、かつてのギラギラした自分を失います。
自分を見詰め直す中で、これまでの自分に自信が無くなってしまったのでしょう。
常にあった父の存在が、かつての自分を作り上げており、その存在が消えた今、自分というものを見失ってしまったのかもしれません。
事業を継ぐなど、背負うものの大きさ。
本当は弱気になってしまった自分を優しく支えてくれる妻の存在を求めたかったことでしょう。
でも、妻はホスト通いで、すっかり自分から離れてしまった。
そう思って、ドリームに輝きたいと相談を持ちかけた。

でも、本当は違いました。
妻は、ホスト通いなどしていませんし、この一連の計画も実は妻と専務が仕組んだことだったようです。
もう一度、夫に輝きを取り戻して欲しい。
輝きを誰よりも求めていたのは、妻の方だったみたいです。

昔のように輝いていた自分に戻れば、また妻に愛される。
本当は違うのかもしれませんね。
妻は、夫のことを真剣に愛している。
父の事業成功の下、輝いていた夫が素敵だったのは確かでしょうが、妻はその男が芯に持つ輝きが好きだったように思います。
宝石のキラキラも素敵だが、その原石に秘められたものを魅力に感じるみたいに。
夫にそんな自分の魅力を気付かせ、今度はあなた自身の手で自分を輝かせて欲しいと願っていたように感じます。
最後は、夫婦各々が相手を想った願いがかなって、ドリームを後にします。
ドリーム。夢はプライスレスみたいな、社長と専務の微笑ましくも切ない姿のオチが、何ともこの一連の物語に楽しさを最後まで与えています。

素敵な妻を演じる、岸本奈津枝さん。ホスト通いの悪女から、若かりし頃の可愛らしいセクシーな姿。そして、男を大きく支える母性豊かな優しい姿と多様な女性の変化を魅せます。
ボケまくりの専務、上田泰三さん。最後、あんなに決めて、汚いなあ。それまで、ボケボケのいい加減中年だったのに。
社長、森崎正弘さん。とにかく、ツッコむ、ツッコむ。忙しかったでしょうに。それもこの劇団らしく熱量たっぷり、全力ですから。
夫、早川丈二さん。ギラギラ丈二、オドオド丈二、パン一丈二、子供のような丈二、男を魅せる丈二・・・好きなだけ、その魅力を舞台で発揮されていました。

いつものように中年男を描いた元気が出る作品。
秋には東京進出だとか。
東京でも、中年男の魅力を思う存分発揮されることを願っております。

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