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2013年6月 1日 (土)

屍ドール【劇団_BIRTHDAY CAKE_】130601

2013年06月01日 インディペンデントシアター1st

倒錯した感情が渦巻いており、気味の悪い世界。
屍ドールという、人形の無機質な雰囲気がそれに拍車をかける。
少々エロい姿のドールによるダンスなど、エンタメ要素も交えた形で話は展開する。
見えてくるのは、人の愛の形かな。
本当に人を愛する、愛されるということが、歪んだ世界を通じて描かれるような気がする。

<以下、読んでも多分理解できないぐらいグチャグチャな文章になっていますが、キーワードがネタバレしているので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

自転車置き場の管理人として働く老人は、いつもその女子高生を見ている。
不満極まりない顔で自転車を毎日こぐ姿。
妻との出会いを思い出す。
自転車でいきなりぶつかってこられ、逆ギレ。でも、怪我の手当をしてくれて。
そんな妻も、今は管だらけの姿に。
もう動かないし、話も出来ない。でも、よかった。彼女を残して自分が先立つことがなくて。

  

ところ変わって、政府公認の屍ドールを販売する会社。
自殺した女性を、ドールに改造して、性的な用途に用いることが認められている。
この法案を通した政治家は、当然のようにおかしな人で、たまにやって来ては、売り上げに文句をつける。
売り上げも何もない。
この政治家ぐらいしか、こんなもの買う人はいない状態だ。
だから、社内は売れないドールたちでいっぱい。
そして、女性人権委員の連中は、こんな会社は潰せと口うるさい。
もはや世の中から認められておらず、機能していない会社で、社員も当然のようにやる気はない。
毎日、何の意味があるのか分からないが、ラジオ体操みたいなことをしてから、決められた単純作業を行う。
素材と言って、女性の屍が届けられたら、それをドールに改造するのが唯一の大事な仕事ぐらいか。

  

所長、その愛人である若い女性、子持ちの妙齢の女性、そして、リカちゃん人形を手にして、オドオドとした気味の悪い若い男。
愛人は、いつでもこんなところ辞めて、大会社の派遣OLでもして、いい人見つけて、結婚してなんて言っているが、所長のことが好きで別れることが出来ない。
所長は、それほど家族とうまくいかず、仕事もこんな不毛な会社の中で、自分を愛してくれて、自分自身も寄りかかれる唯一の女性であることは分かっているのだろうが、愛人に冷たく接する。
妙齢の女性は、子持ちといいながら、実はもう子供を亡くしている。そして、夫とも離婚しているみたいだ。その事実から目を背けるように子供の話をしたりする。子供が捕まえたとかいって、虫かごに蝶々を入れてきたり。
若い男は、ここで暮らしている。毎晩、ドールたちを集めて、制服大会、まいっちんぐマチコ先生大会などと歪んだ世界を楽しむ。実は屍とか言いながら、ドールは普通に動いて喋るらしい。このことに気付いているのはこの男だけ。決して、他の人の前で動いたり喋ってはダメと言い聞かせている。ここでは絶対的な存在なのだ。
自分は誰からも愛されない。ドールたちも、誰からも愛されず、自殺という選択をした女性たち。だから、僕だけが君たちを愛してあげる。

  

そんな会社に、ある日、素材が届く。
女子高生。
いつも自転車に乗っていた子。
老人は、その子を会社に運ぶ。その時に、自分の掛けていた管理人のたすきをリボンにして、女子高生の頭に付ける。
やがて、屍ドールへと改造される女子高生。

  

愛する人。愛される人。
愛を失った人。
愛されなかった人。
生ある者、死する屍を交え、交錯する愛の姿が映し出すものは・・・

  

複雑であらすじはよう書きません。
少し情報量が多過ぎるような気がしますね。
愛されなかったがために屍ドールになった人たちが、単純に性的に愛されるのではなく、本当に精神的に愛されることを知った時に、本当の自分を取り戻す。でも、その時はもう生ある状態では無い。
そんな姿から、今、生きている人たちがこれまで築き上げてきた愛をもう一度見つめ直すといった感じでしょうか。

  

老人は、もはや屍ともいえる状態の妻を愛します。でも、これは決して屍ドールとかではなく、これまで互いに愛してきた先に行き着いた生ある妻を愛しているように感じます。
そんな老人が、妻の面影を感じた女子高生。女子高生へのまた違った形の愛は、屍ドールになった女子高生に通じ、もはや手遅れではあるものの、女子高生は愛される、想われていたということを知ります。
その尊い気持ちは、他のドールたちにも連鎖します。ドールになると記憶が消えるのか、心の奥底に封印してしまっていたのかは分かりませんが、自分たちは愛されていないと思って死んだことを認識します。そして、今、ドールになり愛されていると思っているが、それは違う。あくまで性としての愛。毎晩、愛してくれる若い男の愛は真実ではない。
そのことを分かった時に、ドールたちは、ようやく自分の生を見詰め、その死を受け入れることが出来るようになったみたい。ただ、一人のドールだけは、若い男の愛を、真実と受け止めています。若い男もそのドールにだけは、本気の愛を注いでいたのでしょうか。歪んでいるが、これも愛の一つの形なのかな。

  

最後、屍ドールたちが全員逃げ出し、動けて喋れることが明らかになります。
こんな不始末を犯した会社はもう無くなるでしょう。
所長は今度はラブドールでも販売する新たな会社を立ち上げるつもりみたい。そこに一緒に来て欲しいと若い女性に言い、若い女性もそれに笑顔で答えます。
一連の事件で、所長は自分が若い女性と付き合っているのは、屍ドールを愛するようなものではなく、この女性が自分にとって必要、大切な存在と思っていることに気付いたのでしょうか。所長に愛されていないと、命を絶とうとしたこともある若い女性ですが、死ななかったので、今、本当の愛を勝ち取ったかのようです。
そして、妙齢の女性。実は途中で自殺しています。愛を失い、もう嫌になったのでしょう。屍ドールになった彼女。性的に愛されることで、彼女が失った愛は取り戻せるのか。そして、妙齢であるが故にそれすら期待できない中で、愛を求め続ける屍ドールの姿は悲しみしか無いような気がします。

  

まあ、実際にあるラブドールといったものを想像するわけで、そのラブは愛だけど、また違った愛じゃないのかなと。
ドールを愛する愛と人を愛する愛。
これはきっと次元の違うもので、私たち生ある人間が求め続けている愛は後者なのだろう。もちろん、性的処理として前者だって求めはするが、これは一時的なもの。
死ぬというと、あまりにも極端で現実味がないが、愛に絶望して、全てを拒否するなんてことに置き換えたら、その絶望した愛は自分が全てを拒否する中で得られる愛に置き換えられるぐらいに小さいものなのかって感じかな。
自分が人を愛するように、誰かが自分を愛してくれる。
それを忘れてしまった時に、絶望が生まれる。
でも、絶望しても、本当に愛されることはない。愛されていたことを後から知っても、もう何も出来ないことだってある。だから、愛を信じていつも強く生きようってメッセージが込められているように感じる。いや、違う。観た時はそんなこと感じはしていない。
文章を書いているうちにそんなことなのかなと思った。

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