冷しちゃうか始めました【劇団ちゃうかちゃわん】130621
2013年06月21日 大阪大学豊中キャンパス 学生会館2階大集会室
以下の感想を全て書き終えて、最後にここを書いているのだが、もう疲れちゃった。
盛りだくさんなんだもの・・・
今年は残念ながら、4作品しか観れない。
残りの2作品もまた、色の違った楽しい作品だっただろうに。
残念だが、新入生の今後のご活躍を祈りながら、お楽しみの今年のオムニバス公演観劇を終わりにする。
<以下、問題ないと思うが、一応ネタバレの可能性があるので公演終了まで白字にします。公演は、土曜日に2回。どっちも観ないと全作品観れません>
・初恋
豆腐屋の息子。
誠実な父に、しっかり者の母。
友達と悪ふざけをしながらのごく普通の学生生活。
そんな中、転校生がやって来た。清楚で可愛らしいその女の子は、一躍クラスのマドンナに。豆腐屋の息子も、彼女にほのかな恋心を抱く。
そんな憧れの彼女が何と自分の家にやって来た。
隣の空き倉庫を眠らせていても仕方が無いので、人に貸そうとしていたところ、転校生の女の子とその母親が住むことになったのだ。
毎日、共に過ごす甘酸っぱい時間。羨ましがる友達。
でも、彼女はなぜか土曜日にどこかに出掛ける。そして、帰って来ない日も多い。
気になるが深くは追求しない。誰しも人との間には壁があるから。
私のこと、どう思う?自分の想いを言葉に出来ない豆腐屋の息子。
でも、彼女も自分に好意を持ってくれているみたいだ。
だから、それだけでいい。自分は彼女を信じられるから。
初恋。
豆腐屋の息子のその淡い想いは、衝撃の事実を知ることにより残酷な結末を迎えることになる・・・
作・演の原賢二さんの当日チラシの言葉によると、昭和を意識して創られた作品らしい。
一つ屋根の下で、憧れの女の子と一緒に住む。確かに昭和の漫画のどこかにあったようなピュアな設定。
そこに、昭和のあのドロドロとした濃厚なメロドラマでも意識しているのか、衝撃的な展開で話を進め、初恋というイメージからはおよそ遠い悲劇的過ぎる結末に持っていっている。
原作があるらしく、ツルゲーネフで検索すれば、同名の作品のあらすじがwikiに載っている。
転校生の女の子が豆腐屋の息子に、自分を意識するような言葉を投げかける。このあたりが、転校生の女の子自身も、その恋に悩み苦しんでいる姿が描かれている。
難しい作品なのでよく分からないが、彼女は豆腐屋の息子に救いを求めていたのだろうか。
だとすれば、息子がはっきりと彼女に自分の想いを口にしていれば。壁があるとか、踏み越えてはいけないだとか、抱いた恋心に迷いが生じていなければ。
初恋。初めての恋。甘酸っぱい淡いイメージであるが、考え方を変えれば、その対処する経験が全く無い状態で、初めて心に溢れてしまう恋心を抱くこと。
治す術を知らない病になるかのようで、そりゃあ苦しむことになるだろう。そのうち、治し方を経験するのだろうが。
その経験を手に入れた時には、その初恋はもう取り戻せないところにいる。
初恋の幸せな想いと同時に経験することの多い苦い思い出部分に焦点を当てて、残酷な恋の一面を照らしているような話だった。
豆腐屋の息子、日下部ぱおさん。恋して、相手の言葉に一喜一憂して、不安を感じたり、無理に自分を安心させたり。悩んで、悔いて、それでも、自分の恋する気持ちを信じて。揺れ動く恋心を、初恋の情熱溢れる姿として熱演。かつての、自分に芽生えたそんな想いを振り返る様に語り、これからの自分を見詰める。今の平成の世で、昭和を懐かしさと過ちの視線で振り返るかのようで、作品の本質がよく出ている演技だと思う。
父、島谷二郎さん。誠実であったのは確かだろう。でも、転校生の子と恋に落ちた。母や息子のことを思わないはずもなく、それでも恋に翻弄される姿が、恋の恐ろしさを浮き上がらせている。転校生の子は最後、死んでしまうみたいだが、この時、父はどう思ったのだろうか。息子は二度と取り戻せなくなった初恋への悔いが大きく残るような気がするが、父は解放を感じたのではないだろうか。恋は苦しい。それは生きている限り、常に付きまとう。だから、そこから逃れる唯一の手段は死。それぐらいに、人にとって、恋は重たくのしかかる恐ろしいものとも思える。
母、西田真梨子さん。ごく普通のお母さんである。しっかり者で、父や息子にとっても良き母といった感じで、その雰囲気やセリフの言い回しがとても優しく感じる。でも、話が進むにつれて、何となく、この母の存在が怖く感じるようになった。この人、多分、知っているんですよね。父と転校生の女の子とのこと。そして、きっと息子が、今、転校生の女の子に初恋をしていることも。転校生の女の子はいずれ死を迎える。だから、今の最善は、そのままにしておくこと。もちろん、息子がその事実を知ってしまうことは誤算だったのだろうが。恋をよく知っているから、父に生まれてしまった恋への情熱がいずれ死を通じて消える、息子に芽生えた淡い恋心もつらさを持って、苦い思い出として残る。恋を知り尽くし、かつ人の壁を踏み越えて干渉しない手段を知っている女性の巧妙なところが見え始めてしまい、ちょっと怖くなりました。
転校生の女の子、岸川菜月さん。こんな方だったかな。ソルジャーとかキーってヒステリックになるみたいなきつい女性役される方で認識しているから。原作はけっこう男を手玉に取る女性としての位置づけになっているみたいです。この作品では、そこは隠れていて、ただ苦しんでいる弱い姿の方が強く映ります。しかも、自分の死も意識しているみたいなので、そのいつ終わるか分からないわずかな残りの時を、人を想い、人に想われて過ごしたい、それも良いように思い出に残りたいみたいな感情が強く表れているように感じます。純粋だから悪魔にもなり得る。そんな感じでしょうか。
転校生の女の子の母親、伊藤紫織さん。この役どころがどういった意味合いで存在しているのかが、分からない。娘とも大きく関わらない。豆腐屋の夫婦、息子とも。娘の死はもちろん、知っているようで、そのためにも残された時を共に生きるために、豆腐屋での修行をしたりする。その姿は、もう恋とは別次元で生きていくような凛として真摯であり、真剣に生を見据えているような視線が印象的でした。漠然と昭和の高度成長期の様な、前へ向かってその生を全うしていく人の姿と同調しているような感じであり、この作品の時代観を醸しているような気もします。
豆腐屋の息子の友達、小林隆史さん、橋詰隆一さん。後半、重くなる話の緩和剤か。ちょっとした会話の掛け合いで、場をなごませています。この方たちには、この方たちの初恋の姿が実はあるはずで、この作品の中では、マドンナを友人に占有されたもどかしさから、気になって色々と調べてしまうような、恋は男と女がいちゃつくという子供っぽい単純な視点で描かれているみたいです。本来はこういったレベルの甘酸っぱくもほろ苦いのが初恋であり、それも一つの形として話の中で表れているようでした。話が重いので、安心できるキャラです。
・フライング悦子
羽田悦子。
学校では親衛隊もいるぐらいの人気の女の子。
可愛いだけでなく、人のために何かをすることを厭わない優しい心の持主でもあるみたい。
ナルシストの嵐山と遊園地でデート。
親衛隊の面々はもちろん、新しく入った太郎も気が気でない。
でも、あっさりと振られてしまう。まだ、好きな男がいるわけではないらしい。
ある日、悦子は眠っている間に天使と出会う。
人々を幸せに、慈愛を与えなさい。
悦子の背には翼がはえる。
翌日、学校では当然みんなから引かれる。
でも、太郎だけは変わらず悦子へ想いを向ける。
そんな中、悦子に翼が生えたのを快く思わない連中が現れる。
花屋敷という女性と、その下部、雲雀丘。通称、雲雀丘花屋敷。
翼が生えるということは神に認められた証拠。私を神に会わせなさい。
さもないと、この男を。そう言い放ち、太郎を眠らせてさらう雲雀丘花屋敷たち。
悦子と花屋敷は神の下へ向かう。
なぜ、私に翼を与えないのですか。神に懇願する花屋敷。
お前は翼を与えても、その力を自分のためにしか使わない。人にために使う悦子こそふさわしい。
そんな神の言葉に逆ギレ。
太郎はスカイツリーから落とされそうになる。
悦子は自分の力を信じて、救出に向かう・・・
うん。これは、悦子役の竹内雪乃さんと女神シスターズ、佐原瑞貴さん・高濱裕子さん・葛本祥子さんを観て、目の保養をしながら楽しんでくださいといったことで創られた作品という認識でいいんですよね、きっと。
それとも、翼が生えるということに、何かメッセージを伝えているのでしょうか。
翼を手に入れる。何も無いところから、神様がパンッと付けてくれる訳でもなく、自分が成長する中で、大きく育ったものなのでしょう。
手に入れた翼で人を幸せに出来る、同時に自分も幸せに出来る力を持つまでに成長した人間の背中には自ずと翼が生えるように感じます。
悦子と花屋敷のやり取りを見ていると、ちょっと話としては違うのですが、何となく童話のようなイメージで観ていました。
お前は空を飛べるような翼を持っているのか。
いいえ、私はそんな翼を持っていません。私の背中には小さい小さい翼があるだけです。だから、地面で出来る限り、みんなと一緒に頑張っています。でも、いつの日かそんな翼を手に入れたら、自分もみんなも幸せになれるようにしたいと思います。たいそう、立派な奴だ。それならば、君にはこの大きな翼をあげよう。
いいえ、私はそんな翼を持っていません。私の背中には小さい小さい翼があるだけです。だから、そんな翼を下さい。ずっと、欲しいと思っていたのです。私は空を自由に飛んで楽しく生きたいのです。何という奴だ。お前みたいな奴は、その小さな翼すら持つ必要は無い。もぎ取ってしまえ。
・・・みたいな感じ。
最後は、悦子が常日頃、どんな時でもみんなのことを想って生きていたように、同じように自分のことを変わらず想ってくれる人の存在を知り、その人と結ばれるかなといったことをほのめかす、微笑ましいハッピーエンドで可愛らしく締めています。
上記した人は、そのまま可愛いという感想。容姿ももちろんですが、その醸す雰囲気がね。この作品の初々しさを創り上げる魅せ方です。翼が生えたのは、誰の下に飛んでいくためだったのか。人のことばかり世話を焼いて、自分のことを見てくれる人に目がいかなかった悦子が、見つけ出した大切な人。その答えを出した形でスッキリとしたキレのいい終わり方で決めていました。
太郎、よしだこうたろうさん。真面目なのか、チャラチャラしているのかよく分からないキャラだったな。眼鏡を手にする優等生の振りと、醸す雰囲気に微妙なズレを感じる。誠実な子という雰囲気は良く伝わっており、それだけに、ラストのハッピーエンドが心地よい。
嵐山、石垣光昴さん。イラっとするうざいキャラ。デリカシーの無いうっとおしい男を巧い具合に演じられている。
神様、谷貴人さん。前も神様で見た覚えがあるな。もう、どの作品だったか分からなくなってしまったが。コントに出てくるようなちょっといい加減でコミカルなキャラが楽しい。
雲雀丘、永井克幸さん。花屋敷、須藤郁さん。美男美女の悪役。濃い。演技も大きいし。これが、とてもいい感じで印象に残る。
親衛隊、柿木研人さん・小林寿樹さん・香西絋輔さん。みんな濃くて自由。隙間があったら、すぐに何かを見せようとしてます。アピール力が凄いですね。
警官、島谷二郎さん。初恋でぶっきらぼうで誠実な男だったのが、ここでは一転。お得意の見せ場か。
レポーター、伊藤佑治郎さん。けっこう淡々としていたので、いま一つ印象に残らず・・・申し訳ない。
子供、鈴木彩希さん。本当に子供、出てきたのかと思った。多分、初めて観たらびっくりすると思う。
・山口家のサイケデリックブレックファースト
どこからか集まって来た男と女。
今日はあなたがお父さん、あなたがお母さん。
息子は僕で、お姉ちゃんはどっちがやる。いつもあなたばかりお姉ちゃんでずるい。
なんてことで、毎朝、形成される核家族。
朝の日課のラジオ体操。
隣の焼却炉からは今日も放射能の煙が。
私たちは核家族。
襲ってくる放射能男とも力を合わせれば戦える・・・
う~ん、よく分かんない。
汚染廃棄物の焼却など、社会風刺作品になっているのだろうか。
本当の家族ではなく、各々が何らかの理由でここに流れ着いてきている。それも、普通の場所では無い。
狂ってしまえる、狂うことが求められるような場所。
そこで、これまでの各々の生き方に準じた狂気をベースに、核家族というものを形成し、世の中に反旗を翻しているような感じかな。
感じた家族の何となくの特徴。
息子、山森直毅さん。朴訥で生真面目なキャラ。今を冷静に見詰める余白が心に残っている。
お父さん、石橋啓太郎さん。リーダーシップを取りながら、自律にこだわっている感じ。
お母さん、水野聡美さん。しっかりしていそうなのだが、依存心みたいなものも見え隠れしている。
姉、松田佳奈さん。テンション高めの狂気性を醸し出しているキャラ。
妹、古庄麻由さん。その姉を抑えるかのような比較的まともなキャラ。常に気を使っている感じ。
全員、世からはつまはじきにされていた感がある。
順に引きこもり、DV、アルコール依存、オタク、いじめられっ子みたいなものをイメージしたのだが。
焼却炉の人、野瀬健吾さん。貧民層みたいな感じを漂わせている。足も引きずって、いわゆる人の嫌がる仕事をして食べていくしかないような。これも、同じく、今の世のつまはじき者か。
そして放射性汚染物質。
普通に生きる、普通に稼働する中で生み出された世には不要とされる者、物。
そんな者、物が、ここで核となり、世の中の本当に不要なのではないかと思われる者、物との戦いに、そのパワーを集結する。
伯爵、西田悠哉さん、放射能男、香西絋輔さん。ひどい姿。典型的な怪人。ただ、この作品では、悪なのか何なのかがよく分からない。
権力者、放射能を生み出す源、例えば原発みたいなイメージか。
自分たちは、奴らによって生み出され、そして不要のレッテルを貼られた。
そんな狂った世の中での、狂った戦いが描かれているのだろうか。
・もりあがるアメリカ
アメリカを襲う日本の一派。
黒船ならぬ、緑船に乗り上陸。
表千家一派。
彼らは、茶を武器に数々のアメリカ人に鉄拳を喰らわす。
国をあげて対抗するアメリカ人たち。その名を裏千家。
今、表千家と裏千家の戦いが始まる・・・
何だろう。この作品も意味が分からん。
オチがやたら、綺麗に決まってはいたが。
何かTPPをイメージして観ていた。
海外からの安い農作物の流入なんかは、ある意味、鎖国であった日本に再びやって来た黒船みたいなものだろう。
でも、同時に日本の素晴らしい物の流出は海外に大きな影響を与えるはず。そこには自信を持つべき。
例えば、日本の伝統的な文化の代表である茶道のように。
黒船が来るなら、日本は緑船をアメリカに送ろう。
それはきっと、アメリカに大きな打撃を与えるだろう。
そして、それに勝った負けたでは無く、互いに優れた文化を認め合い、手を取り合う姿が必要なのではないかといった感じかな。
よく分からん割には、一番面白かった。
テンポや決めるところのメリハリがしっかりしている。
ダンスなどのエンタメ要素も、他作品と比較すると優れている感が大きい。
話うんぬんはともかく、演劇作品としては、魅せられる作品に一番仕上がっているように感じた。
面白キャラが多数登場する作品でもある。
キャラ付けのしっかりした楽しくも、納得感の生まれる設定になっている。
ニューヨークのデイビッド、亀丸卓充さん。作品中にも言及されるが、唯一まともと言えばまともなキャラ。何だろう、デイビッドという名がすごくはまっている感じなんだが。
同じく、ニューヨークのティファニー、宗田あずみさん。新入生の方みたいですね。全作品で一番目を惹きました。その弾けた狂いっぷりに。ただうるさいだけでなく、きちんとメリハリつけて騒がしいキャラを演じられています。表情も豊かだし、今後、注目します。
カリフォルニアのロマン、酒井菜摘さん。よくは分からないんだけど、ダンスが魅力的だった。なぜか凄く目を惹いて。上の宗田さんとこの方が、今回、ダンスで目を惹いた方かな。あと、エロいんだけどね。
テキサスのテキーラ、グ・ジャッキーダンテさん。本名なのかな。いわゆる帰国子女とかなのか。一人でボケて一人でしっかりツッコんで笑いを完結させる。なかなか面白い魅力的な方だった。
ユタのばばあ、岸川菜月さん。そうそう、こっちこっち。初恋の方のキャラじゃなくて、私が知っているこの方は。ちょっと小ネタも巧みに盛り込みながらのご活躍。
ペンシルバニアのペンシル、松本直毅さん。ナルシストキャラ。スマートに決めており、うざい感じではない。その彼女、加納晴日さん。ニュージャージーなので、ジャージ姿。いつもながらの天然っぽい相手とのやり取りで笑いを取っていかれる。
他もいたなあ。配役表に載っていないキャラも隠れキャラで出ていたみたい。
ルーズベルト大統領、中嶋彬裕さん。惹きつける力を持っていますね。自分の雰囲気をきちんと舞台に出せる方です。堂々たる姿でした。
千利休、江連丈暁さん。動きにキレがありますね。拳法とかされてるのかな。パンチとかの動きが妙に速い気がする。漂う雰囲気もかっこいいし、影のあるこの役がはまっていました。
表千家一派、更夜直さん・橋詰隆一さん・武宮由佳さん・東千晶さん。面白かったなあ、この方たち。観ないと分からないだろうな、この面白さは。かっこいい千利休を筆頭に、見事なチームワーク。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント