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2013年6月10日 (月)

暮らしとゾンビ【スイス銀行】130610

2013年06月10日 インディぺンデントシアター1st

ゾンビから逃げてきた男女5人の密室コメディー。
まあ、個性的な5人が好きなように振舞うので、パニック状態。
そんな姿を楽しむのだが、始まって30分ぐらいから、あまり笑えなくなって、色々と考えながら観てしまった。
笑えなくなったのは面白くないからでは決してない。実際は面白過ぎるぐらいに面白い。
ただ、どうも、作品中のゾンビが、ある象徴に見え始めてしまった。
これは、コメディーの姿をした、痛烈な今の社会批判と同時に、被災者たちへの応援が込められた真剣に考えなくてはいけない作品なのではないだろうか。

地下のシェルターのような所に逃げ込んで来た男女5人。
何でかは分からないがゾンビが現れたらしい。
この近くで喫茶店を営むマスターは、店を開けようとしたら、店の前に死体。そして、その向こうからゾンビが。
その喫茶店にモーニングを食べようと向かっていたところ、ゾンビと遭遇した若い男。
喫茶店近くのマンションに住む女性はショッピングセンターにクリーニングを取りに行く途中に、そして、そのショッピングセンターの本屋で働く女性も同じようにゾンビから逃げて来た。
後一人。川向こうの違う市から、たまたまランニング中にゾンビに出会ってしまった中年の男。
全員、家族や知り合いを心配しながらも、外のゾンビが気になって、ここから出れないでいる。

スマホで外部の状況を確認するものの、特に変わった様子も無いようだ。
いったいどうなってしまったのか。
幸い、缶詰や飲料水は豊富に保管されており、しばらくはここで助けを待つことができそうだ。
とは言っても、いざみんなで暮らすとなると、色々と問題がある。
まずは、排泄の問題。ウンコは匂いの問題もあるから、桃缶でも食べて、そこに詰め込んでフタをする。
でも、オシッコはどうするか。ペットボトルでは狙いが定めにくい。ポカリの缶。いや土鍋か。
まあまあ妙齢でそれほど気を使わなくても良さそうな感じではあるが、一応、女性もいる。デリカシーの無い言葉も慎まなくてはいけない。とりあえず、ウンコはジョン、オシッコはヨーコとでも呼ぶようにしよう。
リーダーも決めなくてはいけないだろう。どうやって。学歴。リーダーシップ。体力。運・・・
あとは、男女が一つ屋根の下で暮らすのだ。まあ、そういうこと。
いかがわしい考えを持つ者は、倉庫にでも監禁する罰は必要だろう。

リーダーは、結局、じゃんけんでショッピングセンターの本屋の女性に。急に切れ出したりして、ちょっと扱いにくい人なのだが、まあ、この中では適任か。ちょっと飄々として要領のいいところもある。
もう一人の女性はヤンキー上がりみたいで、頭が自分は悪いからと、あんまり役に立つことは言わない。でも、ごちゃごちゃしているのは嫌いみたいで思い切りはいい。とにかく、タバコを吸いたいみたい。
マスターは最年長でありながら、あんまり頼りにはならない。立ち回りは上手い人だ。
若い男は、けっこう自分では出来る人と思っているみたいだが、いざ、こういう状況では何をしていいのか分からないみたいだ。大きな決断をする覚悟は無いみたいだ。
ランニングしていた男は、やましいことを考えたので、とりあえず、倉庫に監禁している。仕方がない。女にモテたことがないのだろう。中学生のような考えで女性を見ている。ジョンをぶちまけるとか脅し文句を発しているが、放ったらかし。
でも、とりあえず、何とか暮らしは成立し始める。

しばらくすると、やはり、このままではいけないという考えが浮かんで来る。
外に出てみれば。例えばショッピングセンターに。
シェルターで見つけた暮らしの手帖。こんな時こその本なのに、たいして役に立つことは書いていない。
でも、載っている厚揚げステーキの作り方。読んでいるだけで、そのジュウジュウと焼きあがる美味しい厚揚げステーキのイメージが沸き上がる。
想像力を知らぬうちに駆り立てられたみんなは、ここを脱出するための方法をシミュレーションし始める。
ゾンビは目が見えないのではないか。だから、音を立てないようにゆっくりと。
いや、ゾンビを倒す方法を考えるのが先決では。武器はフライパン。防御は土鍋。接近戦ではナイフとフォークか。
でも、全員やられたら・・・
だったら、おとりを使えばいいのでは。言葉はいいが、要は生贄。
ちょうどよさそうな人が倉庫に。
いや、今はこのまま待つべきである。そのうち、国の自衛隊が救出に来てくれるはずだ。若い男は意外に慎重派だ。
でも、ネットでは何もそんな動きは無いじゃないか。

色々な議論がなされる中で、ついに作戦は決行される。
もちろん、みんなが完璧に納得したわけではない。若い男は、待つべきだと思っているが、生贄作戦ならば成功の確率はあると同意。
生贄になることになったランニングしていた男は、初めはもちろん拒絶していたものの、みんなを救うヒーローみたいな感覚にだんだんと酔って、すっかりいい人に変わってしまい、その重要なポジションを任せられることに。もっとも、その代わり、死ぬ可能性の高い彼の一つの夢を叶えるために、本屋の女性の唇が犠牲になるのだが。
そして、作戦の行方は・・・

最後はショッピングセンターで各々が手に入れたかったビールやらタバコやらトイレットペーパーやらを手にして、成功をおさめたみんなの姿でラストを迎えている。
決して、ゾンビを撲滅は出来ていないだろう。
でも、とりあえずは、その脅威から逃げ出し、新たな暮らしを手に入れたようだ。

これは密室コメディーである。
だから、こんなことを考えるのは、ある意味では不謹慎かもしれないが、ずっと震災の後の今の世の中を考えていた。
ゾンビは、震災後にこれまでの暮らしを脅かすものの象徴。限定する必要は無いが、例えば放射性汚染物質とかでいいだろう。スマホで調べても、何も情報が無いのは、被災者でない人には、関係ないからである。どこか遠いところの話だから、その当事者でないとtwitterとかでもつぶやかない。国はそんな自分たちに非があることをわざわざ公にしない。時間の経過とともに、薄れるのを待っている。
シェルターに逃げ込んだ人たちは、被災者である。自分たちの暮らしが脅かされて、ここに逃げて来た。まずは、この場所で新たな暮らしをもう一度確保しなくてはいけない。それは、本当に必要最低限のこと。住む場所があって、食べれて、排泄も出来て・・・
でも、このままでは本当の暮らしとは言えない。豊かな暮らしを求めるのは当然のことだ。
タバコだって吸いたいし、お菓子だって食べたい。排泄は出来ればいいというものではない。落ち着いて出来るようにしたい。一人きりの空間だって欲しいだろう。
ではどうするか。国の支援を待ち続けるのももちろん一手だ。この考えを一番若い男が持っていたのが、少しショック。本気だろうか。それとも、あきらめに近い感情だろうか。やはり、若者の熱は冷めるような世の中になっているのだろうか。
でも、自分たちがどんな暮らしをもう一度していきたいのか、そのためにはどうしたらいいのかを考えて、実行に移すことも必要だろう。
厳しいことだが、何か新しいことを始める時には、犠牲となってしまう人もいるかもしれない。そんな人をもちろん、見捨てるのではなく、できる限りの最善策を考える。身を捧げる必要は無いが、頑張っての励ましの一言は大事だろう。
今こそ、想像することだ。

急に起こってしまった震災。
そこから逃げて何とか生き延びることが出来た人達が、避難所や仮設住宅などで、一応、最低限の暮らしが出来る空間を与えるまでには至った。これすら、本当のところはどうなのか私は分かっていないのだが。
この作品で言えば、ゾンビから逃げて、シェルターで生活するように。
でも、これからが問題。
暮らしを脅かしたゾンビは、取り除くことはきっと出来ないのだろう。国はゾンビ退治を全然してくれていない。多分、現実の震災と同じで、どうしたらいいのか分からないからなのだろうが。
だったら、そんなゾンビがいる中でも、豊かな暮らしを取り戻させるためにはどうしたらいいのか。
諦めないで、どうなりたいかを想像する。それが実現への第一歩なのかもしれない。ビートルズの世界ですね。
シェルターでまあ暮らせてるんだから、出てこなくてもいいじゃんではなく、まだまだ何も取り戻せていない、そこから出て、またもう一度色々なことをしようという考えを持つにまで至らせることが大事なことなように感じた。
被災していない私たちは何をすればいいのだろうか。
被災者の想像力を駆り立てるようなことだろうか。
最近、多くの演劇作品が震災をテーマに取り扱っている理由の一つが何となく理解できた気がする。

まあ、どうとでも捉えられる。
本当にゾンビが襲ってきたコミカルなホラーでもいいし、上記した観ながら感じた震災だって何となく話は通るような気がする。
私の個人的な話だが、再生医療を普及させたくても、何か常にその周囲を無意味に取り巻く規制みたいなものをゾンビとして考えてもいいように思う。
演劇だったら、さしずめ、どこかの知事みたいな考えがゾンビか。
大事なのはそんなゾンビは私たちの暮らしややりたいことを脅かすが、それ自体はきっと消えないことのように思う。だからと言って、それでどこかに潜んで消え去るのを待っていても仕方がない。国も他人も特に何かをしてくれるほど甘くはない。
ゾンビがいる中で、私たちは如何に暮らしを、そしてやりたいことを自分たちのために手に入れるのか。
それをあきらめずに、私たちの持つ想像力を膨らませて実現に持っていこうという激励が込められているように感じた。

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コメント

随分と小劇場作品の見方が進歩されましたね。
未知なる脅威は天災に限らず、第2次大戦下のナチスに脅えながら隠遁生活を送るユダヤ人を思わせました。
コメディながら非常時に於ける生活を描くのに、排便の問題だけでなく、通信や情報規制、その他さまざまな問題を深く提起されないのが残念でした。
特にラストシーンの脱出は、人間の愚かしさを描く重要な場面でしたので、バッドエンドでも全員がゾンビになるエピローグをコミカルに描くべきでしたね。

投稿: ツカモト オサム | 2013年6月15日 (土) 03時05分

〉ツカモトオサムさん

コメントありがとうございます。
同一回を観ていたんですよ。最前列にお顔を拝見したのですが、ご挨拶もせずに失礼いたしました。電車の時間が走れば間に合いそうだったので。

確か、スイス銀行は昨年拝見した作品でも、同じ褒め言葉をいただきました。ありがとうございます。徐々に成長しているみたいです(^_^)

そうですね。人間が自ら創り出したゾンビに暮らしを脅かされるという愚かさを最後にきつく見せてもらえるとインパクトありますね。
みんなが脱出成功してやったあなんてなっているラストシーンから、暗転、ゾンビになっているみんなみたいな感じでしょうか。実際は難しいでしょうが。

また、どこかの劇場で。
なかなかお忙しいみたいで、お会いする機会がめっきり減ってしまいましたが。
お体には重々気をつけてご活躍ください。

投稿: | 2013年6月16日 (日) 18時46分

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