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2013年6月 1日 (土)

マンサク【みかさ同盟】130531

2013年05月31日 イーヴァ別館

とてもいい作品でした。

シェアハウス、マンサク荘での出来事を、時間軸をずらして描きながら、その謎を解き明かしていく。
個性的な面々のコミカルな会話の掛け合いを通じて、楽しく笑いながら、その時を超えた謎がつながる時を期待して待つ。
しかし、時がつながれ、浮き上がった真実は、私たちが今だからこそ、もう一度、思い返して頭に刻み直したいことでした。

失われた命が、この世に存在していた証を大切に想う優しい気持ちに溢れている。
そして、死への慈しみ。
時と共に忘れていく失われたものたちへの想いをもう一度、思い起こさせ、いつまでも大事に思い続けたいと感じさせられる。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

町屋の公演。
客席の左側には2階へと続く急で狭い階段。
3畳程のスペース向こうに6畳の部屋がある。その奥はけっこう広めの庭が広がる。

  

2013年、シェアハウスのマンサク荘。
管理人の清水の下に一人の女性、由喜子がやって来る。
月末にここに入居する予定の子。
ユッキーなんて軽々しく呼んできて、少々、若者に無理に合わせたような中年のウザさが見られる清水を、軽くいなしながら見学。

  

思ったほど古くはない。家賃も安いし、なかなかいい所だ。
今はちょうど入れ替わりの時期なのか、自分しかいないが、これまでも色々な人が住んできたらしい。
共同トイレが嫌で、自分専用携帯トイレを準備するほど神経質なのに、わざわざこんなところに住んだ人。庭に今や立派にそびえるマンサクの木を育ててい
た人。名前の由来もここからきているらしい。残念ながら、咲くのは1月ぐらいなので時期がずれてしまったが。何やら黄色くビラビラした花が咲くとか。
すっかり打ち解けて、勝手に引き出しを開けたら、ちょっと真剣に怒られた。
何か隠し事でもあるのだろうか。
とりあえず、ちょっとトイレへ。
古くはないとはいえ、ガタがき始めているのか。天板が落ちてきて、気を失う。

  

フラフラになって、とりあえず、部屋に戻ると、何やら知らない人たちが。
清水さんはどこに行ったのか。
ヤンキーみたいにちょっと怖そうな男。なぜか分からないが、完全に無視される。自分が見えていないのか。
一緒にいた真面目そうだけど、ちょっと神経質っぽい感じの男。幽霊だなんて言われて、怖がられる。
自分は幽霊が見えるのだとか。私が死んだ? 何を言っているのかよく分からない。
続いて部屋に来た女性二人。
関西弁丸出しでやたらテンションの高い女性に、おとなしめの真面目そうな女性。
おとなしめの女性は自分が見えるみたいだ。よかった。ちゃんと話が通じそうな人に分かってもらえて。
テンションの高い人は自分だけ見えないとやたら騒いでいるらしい。逆に良かったかもしれない。ややこしくなくて。
さらに放浪癖のあるファンキーな管理人が一瞬戻って来たりするが、すぐまた旅に出てしまったので、何者なのかは分からない。

  

とりあえず、見える人と会話をしている中で、幾つかのことが分かる。
トイレだったところが、ずっと物置だという。連れて行ってもらったが、確かにそうだ。
庭にあるマンサクの木が無くなっている。ふと、目をやると、おとなしめの女性が鉢を持っている。マンサクという花の苗らしい。好きで育てているのだとか。
何が何やら分からない状況で、由喜子は少し思い当たる節を感じる。
外に出て、手掛かりを探そう。

  

気付くと部屋の中。
目の前には清水さん。
トイレの天板で頭を打って、気を失っていたらしい。

  

起こった出来事、今、出会った人たちのことを話す。
清水の顔色が変わる。何かを隠している。
突き詰めるが、自分はあの人たちを殺したとしか言わない。
清水の部屋に入り、何か手掛かりを探そうとするが、今度は荷物に頭をぶつけ、気を失う。

  

再び、あの人たちの下に戻って来た由喜子。
だいたいのことは理解できた。
自分は過去のマンサク荘に来ている。
どうも、衝撃を受けて、気を失うとタイムトリップするらしい。

  

いったい、自分に何が起こっているのか。
この人たちはいったい何者なのか。
自分が見える人、見えない人がいる。でも、何かのきっかけで見えるようになったりする。
どうも、隠し事をしている人には見えないらしい。
そんなことで、まだ見えていない人は、隠し事を暴露する羽目になる。
とりあえずは、みんな、由喜子を認識できるようになった。
とにかく情報を集めて、どうなっているのかを考えよう。
由喜子は自分が未来から来たことを、今の時代との違いを語って伝える。
みんなのちょっとダサいファッション、スマホ、インターネット、CD、SMAPの人数・・・首相がコロコロ変わるのは当時とさほど変わっていないが。

  

由喜子とマンサク荘のみんなでその謎を解き明かして行く。
今いる月日、昔からあるのに築年数はあまり経っていない現在のマンサク荘、そして、ヤンキー風の男の隠し事、日記の最後の日付。
そこにはある悲しい事実が浮き上がってきた。
1995年1月17日。
あの悲惨な震災で・・・

  

死者の魂が意識のようにこのマンサク荘に残存していたようです。
みんなは認めませんが、由喜子は管理人の清水も殴ってここに連れて来て、証明させます。
清水はあれからのアルバムをみんなに見せます。
そこには、楽しかった頃のマンサク荘の面々の記念写真が載っています。
そして、その続きには、あの日の無残な姿のマンサク荘。

  

みんなは、自分の死を受け入れ、もうここにいてはいけないと決心します。
退去届を提出して、どこへ向かうのか分からなくても、ここを去り、自分たちの行くべきところへ歩むみんな。 その姿はやがて消えていきます。

  

ヤンキー風の男は、なかなか自分の死を認めませんでした。
親とうまくいかず、姉は早くから家を出て、自分も嫌になって中学生で家を飛び出した。
どこにも行く宛が無かったところ、清水に拾ってもらった。
それ以来、家族には一度も会っていない。
誰からも想われることの無かった人生。そんな悲しいまま、若くして死んだなんて、あまりにもひどすぎると。
でも、それは違いました。
男の親はあれから毎年、マンサク荘を訪ね、きっとまだここに魂が残っていると信じて、いつでも帰って来いと語り続けていたのです。それを清水から聞いた男は、安堵と悔いの表情を浮かべ、マンサク荘を去る決意をしました。
そして、もう一つ。
由喜子もまた、この男がみんなから愛されていたことを知っています。男に家族はきっとあなたのことを思っていたよなんて伝えたところ、お前に何が分かるなんてきつく言われてしまいましたが、はっきりとした確信があるのです。男の苗字は日下部。由喜子の母親の旧姓です。由喜子は母から、そしておじいちゃんやおばあちゃんから叔父のことをいつも聞いていたのです。

  

テンションの高い女と神経質な男は、困惑しながらも死を受け入れます。
持ち前のサバサバした女の性格でしょうか。
分かったからには、ここに立ち止まっているわけにはいかない。それは自分にとっても、マンサク荘にとってもいいことでは無いとスパーンと決断します。
そして、男は、そんな女についていきます。
だって、彼の隠し事はこの女性のことが好きだということなので。もっとも、あまりにも分かりやすい素振りで、みんな知っていたことですが。由喜子ですら、会ってすぐに分かったみたいです。
ちなみに男は浪人生。受験のプレッシャーから解放されたことで、少し安堵しているところもあるみたい。そして、永遠に女性を愛し続けられるなんておかしな喜びを感じるようなポジティブシンキングになっている感じ。

  

おとなしめの女性は、漠然とこのことを知っていたみたいです。
何かがおかしい。ずっとそう感じて過ごしてきたので、明確な死を突きつけられても冷静でした。
彼女の育てていたマンサク。
彼女の優しい気持ちがそうさせたのでしょうか。
震災の時も、その周囲だけ何かに守られるように無事だったらしいです。
清水はそれを庭に植え直し、そして、新しいマンサク荘を作ることにしたのです。
マンサクの花言葉、神秘、直感、霊感・・・
どれも、今、マンサク荘で起こったことを考えるとピタリと当てはまりそうな言葉です。
でも、もう一つのマンサクの花言葉。これが、これからのマンサク荘に捧げる大切な言葉として伝えられ、作品は締められています。
幸福の再来。

  

もう会えなくなってしまった人たち。先に旅立って行ってしまった人たち。
そんな人たちが生きていた証を見つめ、追悼を優しく描いた素晴らしい作品だった。
昨年のHPFなどでも、そんな作品があったかな。
高校生という多感な時期だからこそ、出会った人たち、共に生きてきた人たちとの大切な思い出を、純粋に描けるのかな。
この作品の初演も、脚本の四方香菜さんが高校生の時だったみたい。
当時、2006年。
震災から11年経ち、崩壊した建物は立派に元に戻ったが、人の心の復興は、まだまだ時が足りなかったかもしれない。
悲しみは、時が経つと共に忘れて消えていく反面、より大きなものとなって心の奥深くに残存する。
生き残った者は、もちろん、その失われた命、死を受け入れて、歩みを前へと進めて行かなくてはいけない。同時に、死者も、その死を受け入れ、この世との決別をしなくてはいけないということもあるだろう。
そうしないと、あなたを大切に想う人たちがいつまでたっても、前へと踏み出せなくなる。
この作品はそんな死者側の視点からも、死を見詰めており、生き残った者、死んでしまった者ともに震災という悲しい出来事から、未来へ向けて進んで行こうという気持ちが強く表れているように感じる。

  

2013年の今、これが阪神大震災だけにとどまらない話であることは歴然である。
今、悲しみに包まれている人。どうしても、その死を受け入れられず、前へ進めない人。
あなたが大切に想う人たちも、同じように少し異なる世界で踏みとどまっているかもしれない。でも、きっといつの日か、あなたが自分を想ってくれていた心が伝わり、彼らも自分が向かうべき道へと進んでいく。だから、あなたもいつの日か、自分の進むべき道へと踏み出せることを信じて、今を生きて欲しい。
そんな真摯な願いがこもった話であるように思う。

  

話の展開は基本的に、マンサク荘の面白い面々の会話を通じてなされている。
その掛け合いは非常にいいテンポで、しかも個性的でおかしな人たちなので、事実が明らかになるまでは、ずっと笑いに包まれている。
この日常生活を普通に描くことで、最後にその生の証がより強く浮き上がって、死者への悲しみ、追悼の念が高まる。

  

役者さんは、女性が巧妙な間合いなど、技術的に魅せる感じなのに対し、男性は発するオーラだけでキャラが出来てしまっているような感じかな。
管理人、清水、青澤佑樹さん。何だろう。言葉は悪いが、どこか暑苦しくウザったい感じのキャラは。一言一言が癇に障る前半に対し、真摯な言葉を紡ぐ後半への変化が面白いところか。優しい人なのだろう。ずっとマンサク荘の面々を想い続けている。
みんなの意識を残したのは管理人自身なのかもしれない。そうなると、今回のことでようやくどこかへ向かえるようになったのは彼なのだろう。だったら、また、放浪できるようになるのかな。
神経質な男、じゃこ人さん(劇団紫)。う~ん、この方も清水同じく、ウザったいオーラがバンバン出てるなあ。ちびまる子ちゃんの丸尾君みたいな感じかな。雰囲気はそうなのですが、不器用で子供みたいな一面をちょこちょこ挟んで愛らしいキャラに仕上がっています。
ヤンキー風の男、清水州平さん(演劇集団Q)。キャラがはまり過ぎているようないでたち。ただ、それだけに最後のシーンの熱演が光る。これまでの外面の強さとは裏腹に、内面では愛されていない自分に対して、苦しんできた弱い一面を覗かせる。ようやくそうではないことに気付かされ、救いが与えられた安堵。でも、それと同時に悲しく無念な自分の死を受け入れなくてはいけない。大きな悔いの中で、喜びも悲しみも交えた大きな決断をする表情が印象的だった。

  

由喜子、抹茶ぷりんさん(劇団紫)。会話の間合いが絶妙。個性的すぎるマンサク荘の面々に対して、巧妙にツッコミを入れていく。奇をてらう感じも無く、等身大の女子大生像で、この事件に巻き込まれていく中、出会った人たちとの思い出を心に刻んでいく姿が作品の温かさを醸し出している。
おとなしめの女性、ヒラタユミさん。どこか自信が無さそうでおとなしめだけど、ちょっと天然みたいなところもある不思議な女性像。彼女のマンサクという花の素敵な花言葉を愛するような優しく素朴な姿が、時を超えた人のつながりを感じさせている。もしかしたらと思いながら、誰にもそれを言うことなく、ずっとマンサクを育てていたのだろうか。いつの日か、このマンサク荘にまた幸せな日々がくることを祈って。けなげで優しい想いが涙を誘う。
テンションの高い女、水月りまさん。ちょっとびっくりしちゃった。これまで拝見した幾つかの作品で頭の中でイメージ化された女優像とあまりにもかけ離れていたので。しっとりおしとやか、凛とした強い女性だったのだが。あまりにも違うので、最初の方は、こちらが劇団紫の人なのかなと。弾けた役はだいたい劇団紫の方という、これまた変な固定観念が植え付けられているので。でも、客の笑い方が、この方の本領発揮みたいな感じだったので、きっと、こちらの姿が本来のベースなんだな。ずっとハイテンションを維持し、楽しいシェアハウスでの時間という想像を膨らませています。

  

この作品の脚本、四方香菜さんは、伏線を効かせた巧妙な構成の話、テンポよく盛り込まれるコミカルな部分、ビシっと決めるオチなど、頭がいいなあと思わせる作品が気に入って、おととしの一人芝居公演などを含めてたくさん拝見させてもらっている。
高校時代の作品に、まだこんな素晴らしい作品があったのかと驚くと共に、実はまだ隠している面白い作品があるのではないかと疑いの目を持つ。
是非、このみかさ同盟でそんな作品を掘り起こし、私たちが拝見できる機会を与えていただけるといいなと思う。

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