田舎に住む人たち®【カンセイの法則】130523
2013年05月23日 シアトリカル應典院
3年前に観劇した作品のリライト版。
私の112本目の観劇作品でした。
田舎に住む人たちの優しい人の触れ合いを通じて、温かい空気に包まれながらも、社会の中で仕事をして生きるということを考えさせられような話。
<以下、リンク及び文章の一部にネタバレがありますのでご注意ください。公演終了まで白字にしておきます。公演は日曜日まで>
あらすじは、3年前に拝見した時の感想を参照。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/100710-273c.html)
ところどころ、あれっ、今回とちょっと違うなといったところがあります。
これが私の稚拙な文章のせいなのか、本当に書き換えたのかは分からないところですが。
課長のさびれた観光課に配属されるに至った過去のエピソード、スナックに勤め始める飛び道具的な不思議な面白さを醸す兄妹などは書いていてもおかしくないはずなのですがね。
そして、中だるみすると書いていますが、これは少なくとも今回は全くしませんと断言できます。
とてもスムーズに話は展開し、後半に向けて、この田舎の人たちを通じて、人が人のために何かをするということへの様々な考えが頭に浮かんできます。
田舎の村での仕事はもちろん生活の手段。でも、各々が、その村を社会として維持するために、大事な役割を担っている。そんな自分が働くことの意味合いを、感じ取りやすい環境にいるような田舎に住む人たち。東京みたいな大きな社会で、大きな会社では、自分は何のために働いているのか、社会に貢献どころか、会社にすら意味ある存在なのか疑問に感じることもあるだろう。歯車なんてよく言うけど、歯車と感じている間はまだいいけど、自分が部品の一つなのかすら疑問を持ち始めたら、自分の存在すら揺らいでしまうだろう。
小さな社会だからこそ、自分の存在価値が知らずうちにしっかりと各々、見出せているようである。
自分のために働くことが、そのまま人のため、社会のために分かりやすくつながる、ある意味では幸せな環境かもしれない。
若い人にはそれが縮こまって小さく見えるのだろうか。東京でキャリアウーマンになるんだと漠然とした考えを持っている子もいる。
田舎の人たちの大半は恐らく、ここにずっと住んでいるので、大きな社会で空虚に仕事をするといった経験が無い。自分のため、人のためなど、誰がために日々働くのかなどは普段考えもしないことだろう。本当はそんなこと考えずに、日々を全うすればいいのだろうが。
そんな田舎に住む人たちの中には、一度、この村を外から見た経験がある人がいる。
東京で、期待する親のため、村人のために働く中で、自分のために働くことを見出せなくなった総務の女性。疲れて、出戻り、田舎で働く。プレッシャーからは解放されたのだろうが、それは、自分のために働くということに結びついているのか。
かつて、村人のために行動を起こし、自分の地位、出世を失った課長。人のための行動が、確かに人を救った。自分の誇り、考えを守った。でも、今の姿が自分や守った人たちの幸せになっているのか。
プランナー会社で利益追求というビジネス視点で働き、そこに人がいることを見失っているような若い男。この田舎での経験で、自分がしたいプランナーの仕事は利益を生み出すと共に、人をつなげていくという大事なことも含まれていることを知ったようである。元々、無理に自分を律して会社の業務に励んでいたのかもしれない。その時、彼は、自分のやりがいとして利益より、人の方を選択している。
そんな仕事が、本当なのか悩んでいる上司。プランナーとしての実績や能力も高い人なのだろう。数々の仕事を達成した中で、その成果がどう社会につながっているのかに悩んでいるようだ。地位や金もある程度は手に入れたはず。何のために頑張ってきたのか。達成した仕事は、誰を幸せにしたのか。そんな原点に立ち返る時期にさしかかったみたいだ。最後まで答えは出ていない。ただ、こんな経験の一つ一つが男を大きく成長させるのでしょう。
人のために、自分のために行動する。
その結果、誰もが居心地のいい場所が造られる。
ユートピア形成の概念みたいなものか。
人のためにしていることが、その人に喜びを生み出すと共に、自分のため、自分の喜びへと帰ってくる。
そんな連鎖反応を生み出す社会の第一歩をこの田舎に感じる。
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