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2013年5月 5日 (日)

てるてる坊主【劇団大阪新撰組】130504

2013年05月04日 スタジオ★ガリバー

てるてる坊主、てる坊主♪ あした天気にしておくれ♪
あした元気にしておくれ♪
人の想いが込められて生み出される、てるてる坊主。
そんな人の願い事を聞きながら、天気になったよ、すっかり晴れたよ、元気になったよ、すっかり気が晴れたよ、ありがとうって言われる日を楽しみにしながら、ユラユラと揺れながら吊るされるてるてる坊主が覗いた、ある関係無さそうで、どこかで繋がっていた人たちを見つめた物語。

てるてる坊主は神様じゃないから、ただ聞いているだけ。一緒になって悲しんで、心配して、励まして。
そして、いつの日か一緒に笑顔で喜べる日を信じて、ずっと願い事を聞き続ける。
そんなてるてる坊主の姿が、ちょっぴりコミカルで、ちょっぴり厳しく現実的な、心優しい人たちの織りなすエピソードと共に描かれています。

舞台は仕切りも何も無いのだが、電話が隠れキャラかのように色々と設置されており、それで、別空間を表している。
電話という、心のつながりを意識させるような感じか。
壁には雲のような絵が描かれており、どこか童話のようなファンタジーな空間をイメージさせる。
その中で、人間の現実的な話が展開する。
日常と幻想の合間を行き来しているような、不思議な感覚でそんな人たちのエピソードを見守る。

部屋に飾られた黄色いてるてる坊主。
幼き頃、いつの間にか姿を消していなくなってしまった母親からもらったもの。
天気にするとかだけじゃなく、元気にさせる、気を晴らさせるスーパーてるてる坊主。
今でも、大事に窓際に吊るしている。
部屋の住人は、この男と息子が二人。男の妻はもう亡くなってしまった。
男は最近、おれおれ詐欺に引っ掛かる。
おまけに兄はギャンブルで家の金を使い込み。そんなところが悪かったのだろうか、妻は離婚届だけを残して出て行っている。
弟もまだ頼りなく、この家には収入源が無い。
そこで兄が考えたのはおれおれ詐欺をやり返す。弟も嫌々ながら、手伝う羽目になり電話をする。
かかったのは、若い女の子。恋人だろうか、その人になりすましたら、意外にあっさり騙されてくれる。
3年間もどうしてたの。そうか、出てきたんだ、嬉しい。
混乱する弟は電話を切る。
電話を切っても、ナンバーディスプレイでかけなおしてくるくらいに信じきっている。
でも、真面目な父親に見つかって、この計画は頓挫。

そんな中、けったいな男が家にやって来る。
社長と名乗る、その男の名刺には、てるてる坊主カードカンパニー。
この男、自分はてるてる坊主だと言っている。
訳は分からないが、要はかかってきた電話の聞き役になる仕事らしい。
給料もいいし、三人はそこで働くことに。
指導役の社員の研修を受けて、仕事開始。

部屋の窓には黄色いてるてる坊主。
床には散乱するウィスキーボンボンのクズ。
部屋の主は女性。
どうも、てるてる坊主に頼りたいくらいの気が晴れないことがあり、酒も飲めないのでこんな状態になっているらしい。
この女性、最近、てるてる坊主カードカンパニーのご常連。
話を聞いてもらうだけで少し憂さ晴らしをしているのか。
この日は、担当の人がお休み。
兄が担当することに。
離婚届を残して何も言わずに家を出てきた。
兄は自分の出て行った妻を思い出す。あの人ではないのか。
自分の境遇と同じことを伝える。向こうも話相手があの人なのではと同じような感覚を得ているみたい。
どうしてそんなことを。どこが嫌だったの。
いい加減なとこ、ギャンブル好きなとこなどなどいっぱいある。でも、一番の理由はあの人が私の話を聞いてくれなかったから。
そんな理由で出て行くのは我慢が足りないのでは。大した話でもなかったのではないのか。それにいつも笑ってたじゃないか。急過ぎるんじゃないか。聞いていないわけじゃない。もっと自分を信じてくれてもいいんじゃないのか。兄は自分のことのように話をしだす。
いいえ、あの人はいつもそうだった。ずっと我慢した結果。例えばラクダに積まれたたくさんの藁。最後に一本の藁を載せた時にラクダの背中がへし折れてしまったように、私の心も折れてしまった。とりとめの無い話でもそこに潜んだ想いを汲み取ってくれない、そんな努力を見せなかったことが許せなくなった。
もう嫌いになってしまったのか。家に戻る気はないのか。
それは、絶対に無い。私は覚悟をしたから。今でも好きだから幸せになって欲しいとは思っている。だからこそ、出て行ったのは感情に任せたのではなく、真剣に決めたことなの。
あなたは離婚届はどうしたの。
少し考えた後、絞り出すように言う。もう、出した。左手にまだ指輪をはめたままの兄はそんな嘘を付く。
悲しみと安堵の表情を浮かべた女性は、あの人かもしれない電話の向こうの相手に感謝と別れを伝えて電話を切る。
女性は大一泣きした後、気が晴れたように。
男はけじめをつけるかのように離婚届を出しに向かう。
そんな大人のどちらかがはっきり悪いとかでは無いけど、うまくいかないことってあるんだよなあと、ちょっぴり切なくもどかしい気持ちになりながらも、新たな門出に幸あれと言ってあげたくなるエピソードに幕。

このまま、休憩に入り、二幕でもう一つのエピソードかなと思っていたら、急展開でブラックな話に。
一本の電話。出たのは弟の方。
若い女の子。実は先ほどのおれおれ詐欺ですぐに騙された子。
私は人を殺しました。浮気性の彼氏を、3年前に。そして、山に埋めました。でも、その人から電話がかかってきたんです。生き返って、私に会いに来てくれた。住所を調べて、会いに行ったら、姿は全然変わっている。でも、きっとあの人。今度こそ、ずっと一緒に。
ゾクっとさせて、ここで幕。

また、どこかの部屋。
やはり、黄色いてるてる坊主が窓際に。しかもたくさん。
若い女性が作っているみたい。
夫が疲れていることを気にしている。
どうやら仕事で色々と悩んでいるみたいだ。
夫はてるてる坊主カードカンパニーの社員。研修とかも担当している。
人の話を聞く仕事。自分には何か出来る訳でもない。落ち込むことも多い。そんな積み重ねが気苦労となっているのだろう。
夫は家でそんなことを口にはしないが、妻はただ夫が疲れていっていることだけは分かる。
それでも、いつも機嫌良く笑顔で優しい夫の気が晴れますように。そんな想い。
今度、実家に行って、母親お手製の夫の好きなチラシ寿司を食べてもらうことにしている。
黄色いてるてる坊主を教えてくれたのも母親。夫の心が少しでも晴れればと思っているのだろう。
自分は料理も下手。夫のために何もしてあげられないことが悩みの種だ。
それでも、その明るく純粋な姿に本当は夫も癒されているみたいだが。
優しい夫に、いっぱいいっぱいになって不安が絶えない妻。
当事者にとっては深刻なのだろうが、くすりと微笑ましくなるような話。
エピソードとしての雰囲気は全く異なるのだが、色々と考えてみると、一幕の別れた夫婦とそれほど変わらないような気もする。
相手のことを想っていることはどちらも変わらないだろう。
ただ、その伝え方や、その受け止め方が上手かったり下手だったりするだけじゃないかな。
どこか掛け違えが生じてしまうことがある。人間って難しい。

てるてる坊主カードカンパニーで働く三人もだいぶ慣れてきた。
お金に少し余裕も出来たのか、離婚届を出す決意をした兄への少しでも慰めになればと思ったのか、久しぶりにすき焼き。
ゆったりと小さな幸せに浸っているとところに、招かざる客が訪れる。
一幕、最後の若い女性。
弟をすっかり自分が殺した恋人の生まれ変わりだと信じている。
その信じ込みは、もはや常軌を逸脱し猟奇的だ。
父や兄は真相を明らかにする。
呆然とする女性は、ハサミを手にして・・・

まあ、大惨事ではあったが、最悪の結末は避けられたみたいだ。
兄はしばらく入院。弟はしばらく声が出ない。
不幸中の幸いは、入院先に兄の元妻が出入りする姿があることぐらいか。
ただ、話を聞くだけだが、こんなことになったりして、少し嫌気がさしたのだろうか。
父は会社をお休み中。そして、家で何やらしている。
最近、思い出すことがあるらしい。
それほど、先が長いわけでは無いだろうし、母親に会いたい。幼き頃にいなくなってしまった母親に。
名前を頼りに電話帳で片っ端から電話しているみたいだが、うまくいくわけがない。
会社の社長、てるてる坊主は、仕事が滞って困るので、父を無理矢理、会社に連れて行く。
お金の問題もあるし、渋々、また仕事を再開。

かかってきたのは年配の女性。
自分の子供は、結婚しているんだけど、夫の心配ばかりなの。
夫はストレスの溜まる仕事をしているみたいで。
料理も下手だし、しっかりしない子なんだけど、自分の出来ることをすればそれでいいと思ってるんだけどねえ。
そんな世間話。
そして、てるてる坊主に願い事を言うかのように、続けて年配の女性は言う。
私には実はもう一人子供がいるの。
若かった頃に生まれた息子。
あの頃は若かったから、家を出て行けと言われて、対抗する手段を何も持っていなかったから、言われるがまま。今となっては悔しさと悔いばかり。
あの子が幸せでありますように。そんな願いを託して、黄色いてるてる坊主を持たせてお別れしてねえ。
父は声が出ない。
ただ、長年の母親に対する疑念が明らかになって、心が透明になっていくかのよう。
続けて年配の女性は話す。
娘が携帯電話とやら色々と言うので、今の電話はもう使えなくなってしまうの。
もしかしたら、息子から電話があるんじゃないのかなんて、ずっと変えなかった電話番号だったんだけど。
こんなくだらない話を聞いてくれてありがとう。
そう言って、電話は切られる。

父は家に戻り、また電話を片っ端からかける。
電話番号なんて覚えていない。
イライラ。
そんな姿をからかうかのようにてるてる坊主が煽る。
そんなことは普段しないはずなのだが。
いつもは人には見えないように姿を消して、自分に話しかけられる願いの言葉を聞き、一緒に喜び、悲しみ、泣き、笑い・・・
イラ立つ父は、窓に吊るされた母親からもらった黄色いてるてる坊主の首をちょん斬る。
願い事なんて一つも聞いてくれないじゃないか。
斬られた首から一枚の紙が出てくる。
その紙には・・・

ラストは母親とてるてる坊主がゆったりと部屋で過ごしているシーンで締められる。
これから、起こるであろう、奇跡を想わせながら。
元々は、この母親が息子を想う気持ちから生み出されたてるてる坊主。
自分が幸せにではなく、相手のことを想った願いが込められている。
それは、時を超えて、多くの人たちの下へと広まり、同じように相手を想う気持ちからたくさんに膨らんでいった。
聞くだけしかできないてるてる坊主。
耳を傾ける。そして、一緒の心になって、同じ時を過ごす。
そんなことが、込められた願いを現実にしていったみたいだ。

本とか映画とかもそうだろうが、観劇をしていると妙なシンクロニティーを感じる時がある。
いや、前日にちょうど一幕の様な話があったばかりなのだ。
もちろん、別れたとかいう話ではないのだが、聞くことが出来ていないことを指摘され、確かにそうだが、聞いていない訳ではないし、表面的に聞いているふりだけしても仕方ないだろう。
そんな人の話を聞かずに平然としているような人間と自分のことを思っているのでは、それは心外じゃないかと。要は、ここでの男が電話で相手に言ったようなことを言った、もしくは思ったのだ。
だから、観劇中、ずっと兄の応援をしていた。その通り!、そこは大事なことだからはっきりと正当性を主張して!、奥さん、それはちょっと違うんだよ、男ってのはね・・・なんて感じで。
ただ、このシンクロニティー、私は神からの啓示ぐらいに大切なことだと思っている。
大阪新撰組はまあ観に行く劇団といっても、GWで他の用事もある、小さなアトリエ公演だから予約のタイミング一つで満席で観れない可能性も十分あった。
それでも、縁あって、この作品を、このタイミングで観た。
このことは、きっと今の私に何かを伝え、考え直してみるきっかけになっているのではないかと思っている。大げさに言えば、人生の導きみたいなもの。
相手の想いに甘えて、自分のことばかりになっていないだろうか。相手の言葉を聞いて、一緒にその感情を共有出来ているだろうか。言葉に潜む、込められた願いに背を向けてしまっていないだろうか。
答えは分からないが、少し見つめ直すことで、自然と言動も変わってくるかもしれない。
とりあえず、よくは分からないがあの黄色いてるてる坊主、欲しいなと思っていたら、本当に帰る際にもらえた。
家の窓に吊るしておいてみた。
これも、不思議な偶然である。

二幕から成るオムニバス。
メインは兄と妻、父と母親であろう。
そこに、弟と狂気的な女、会社の上司と妻の話が絡み合う。
これにより、全員がどこかでつながっているという形になり、面白い構成となるのだが、柱が増えて、まとまりの悪くなっている感は否めない。
もう少しすっきりと出来るような気もするが、それにより、複雑に絡み合う心情から積み重なって生まれ出す温かみが軽減するなら本末転倒ではある。
よくは分からないが、こうしてあらすじを書くと、意外に複雑で、話にスマートさは欠けているのかなと感じた次第。

黄色いてるてる坊主。
震災の黄色いてるぼうはイメージされているのだろうか。
話を聞く。
相手の込められた想いを受け止める。
てるてる坊主はそれしか出来ないし、きっと人だってそれしか出来ない。
それしか出来ないけど、そこからきっと何かが始まる。
そして、いつの日か、その願いが幸せという形で現実となって現れる。
おかしなてるてる坊主が出てくる虚構の作品だが、その点は決してファンタジーでは無いと思う。

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