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2013年5月21日 (火)

『door』【伊丹想流私塾第17期生公演】130519

2013年05月19日 アイホール

昨年に引き続き、観劇。
テーマはdoor。
その先にあるまだ見ぬ空間、閉鎖空間へと通じる入口・出口、外から帰って来る時、出発する時に通過するところ、新たな旅立ちを決意する時に踏み越える象徴・・・
などなど、様々な捉え方で、多様な作品が出来上がっていました。
あと、doorを何に見立てたの、door、扉だよ・・・って感じの訳の分からない作品もたくさん・・・
頭を悩ます公演です。

・扉 (堂前奈緒子さん)

扉の前で行列を作って待つ人たち。
ペンギンみたいだね。
ペンギンいるのかな、臭い、燃やしちゃえば・・・なんて好き勝手に話したりしながら、いつ開くかも分からない扉が開くのを待つ。
誰も自分で開けようとはしない。
そんな中、一人の男が、煽るように話しかけてくる。
じゃあ、俺が開けてやる。
暗転後、その男は行列の先頭に申し訳なさそうに並んでいる。

ゴドーを待ちながらみたいな不条理劇だなと思いながら観る。
いつ開くか分からない扉を受け身的に待ち続けるなんて、ちょっと世間を皮肉に描いているようで面白い。
何と言っても、オチが最高。一瞬で苦笑いともいえるブラックな笑い引き起こした。

・アリスとマリと鬼 (内越恵美さん)

腹違いの姉妹。
妹は怯える姉を連れて、人気のない屋敷の扉の前に。
ここのどこかにブローチを隠したから。
父の形見であるブローチ。
姉はそれを内緒で借りて、どこかに無くしてしまった。
それを妹が見つけ、いじわるな妹は姉が怖がるこの屋敷のどこかに隠したというわけだ。
どうしても取り返さないといけない。
だって、父がそのブローチが今日、必要だと言うから。
でも、妹の口からその理由が語られた時に、事態は急変する。
父は私の母にそれをプレゼントするつもりらしいよ。
そんなこと許さない。あんな汚い女に。姉は・・・

どんでん返しのどんでん返しを短い間に連発させて、姉と妹の形勢を巧みに動かします。
短時間の作品だったのが良かったかな。これがそこそこ長い作品だと、どんでん返しがあざとく感じてしまい、悪印象だったかも。
綺麗にまとまった分かりやすい話でした。

・凍て雲の、下で。 (山本彩さん)

扉が半開き。外は雪。
姑と嫁の会話劇。
あの人がいなくなってから、もう7年。これで、あの人は死んだことになるらしい。
隣の家では、生まれて7日目のお祝いをしている。
生への歩みをこれから進める者もいれば、死という形で消えゆく者もいる。
今はもう別居している嫁。
この家で待つべきでしたか。姑にそんな問いを投げかけながら、この地を去る決意をする嫁。
いってきますの言葉を残して、扉から家を出る嫁。

死を受け入れて、生へとようやく歩みを進めることが出来るようになった人の話か。
嫁のさよならではなく、いってきますの言葉。
姑のいつも開けていた扉は息子の帰りを待っていたのと同時に、嫁が出て行きやすくしていたのだろうか。そんなほのかな優しさが、消え去った夫への死への弔いの感情を深める。

・ババヌキ (増田雄さん)

王様と女王様と、少年がババヌキをする。
ババの無いババヌキ。
お父さんは暴力を。お母さんはおかしな宗教に。だから、お兄さんもお姉さんも死んじゃった。
目は笑っていないが、ケラケラ笑いながらそんな会話をする王様と女王様。
もう辞めようよ、お兄さん、お姉さん。
死んじゃったんだから。
冠と衣装を脱いで、普通の姿に戻る王様と女王様。
ババを探そう。あれがババじゃないの。扉を指差して、向かう少年。


扉がババなの。
誰も負けない、勝たない、永遠に続くトランプゲーム。
扉は、転生への道の入口だろうか。
生から逃げて、死に安住を求める兄姉の姿と、生にまだ興味を持つ弟、少年の姿かな。

・遠くの家 (ネゴロチヒロさん)

小銭を拾う男。
それを見ていた通りすがりの男。
小銭を拾って自分のものにすることに、妙な抵抗感を示す男と、この場を普通に離れようとする男の不可思議な会話。
いつも、ここを遠くから見てた。
いい所だと思って、いざ、来てみたら、家だらけだったのだが・・・

???
苦労して行き着いた先。
頑張った割には、思ったほど素晴らしい地ではない。
手に入れた物も小銭ぐらい。
でも、これを大切に、新たにまた自分の行きたいところを目指していかないといけなんだよなって感じかな。
全く分かりません。

・妄却(ぼうきゃく) (はやま。さん)

一冊の本。
三人がそれを手に取り、会話。
目の前の扉は何度開けようとしても開かない。
主人に話しかけるが、答えは無い。

これも分からないんだけど、まあ、人の頭の中ってこんな感じかなと。
三人は記憶の欠片たちだろうか。
ご主人の女性は、ずっと置いてけぼりみたいな状態だったが、歩み出すことを決意したのかもしれない。
だから、もう、過去の記憶を引っ張り出して、それに囚われる必要が無い。
やがて、消えていく記憶たち。

・ヲチコチ (岡田りくさん)

津波から逃れ、扉向こうで彷徨う老いた二人。
戦死した兄の恋人だった女。
その女を想い続けながらも、別の女性と結婚した男。
妻は亡くなった。
女と妻も面識がある。
最期の時、全て知っていると言われた。
男が妻と結婚した後も、関係が合ったことを知っていたのだろうか。
そんな妻に苦しい想いをさせ続けていた二人の愛。
二人は扉を隔てて、その愛を偲ぶ。

ネットで意味を調べたら、作品名は遠近という意味なのかな。お菓子にそんな名前の商品もあるみたいだが。
時代だったのか。
常に近くにいながらも、遠くでその愛を見詰めあうしかなかった二人の悲哀か。
死を目前にしても、その二人の愛には、一つの扉で隔たりが存在する。

・カイコの卒業式 (田窪泉さん)

息子を連れて、昆虫博物館へ。
母の手には大きなスーツケース。
夫のDV。
でも、私は一人で生きていくことは出来ない。
カイコが人間の手によって作り出された品種で、餌をもらって生き、成長しても飛び立つことは出来ないように。
飼育員がそんな母に言う。
カイコは確かに生かされているが、日々、餌を食べて、それを人の役に立つ絹として吐き出す。
生きようとするカイコの力強さを感じて欲しいと。

弱いことを認める。そこから生まれる真の強さ。
弱かった女が、母として、一人の人間としての強さを手に入れ、巣立っていく姿が描かれる。
全作品中では、一番好きかな。
doorを新たな旅立ちの起点とする分かりやすさと、カイコなんてところに人の強さを見出す発想が面白い。

・ウミイグアナは (石塚理絵さん)

母の書斎の扉の前にたたずむ夫婦。
妻の母は病院で今しがた亡くなった。でも、妻はその病院へ行こうとしない。
幼き頃、学者だった母の書斎の扉は決して開くことは無かった。
話したかった、会いたかった時でも、いつも。
ガラパゴス諸島の生物の研究をしていた母。
この部屋でその論文を書いていた。
今、作家となった妻なら、その時の母の気持ちも分かるはず。
今はいつでも開けられるようになった書斎の扉を開け、中に入る。
私はこれから書くことで、母の人生をたどっていく。
病院へ向かう妻。恐らく、病室の扉は開いている。

隔てられていた母と娘の扉が、母の死をもって開けられる。
ようやく向き合えた二人。
娘は、二人をきっと結んでいた書くという表現の中で、創作物の中に母を見出していく。
それは、母が生前、描いた論文の中にも娘への想いがあることに気付くことにつながるだろう。
これから、生まれるであろう二人の本当の絆。

・その、カンカク (久保田智美さん)

使われていない部屋の扉前で一服する男。
そこにやって来る女。同じく一服。
同じ職場の女性もコンビニで買い出しして戻ってくる。
そんな日常。
ある日、その部屋は倉庫として使われることに。
一服する男。
やって来る女。これで最後の一本。何かあんまり良くないんだって。首のあたりのリンパを触りながら。
来なくなった女。
男の横に座る女性。

何だろうなあ。
すごく、分かる気はするんだが、うまく書けない。
普通に時が進む中で、少しずつ変わりゆく日常。
その変わった感覚は普通に過ごしているだけでは感じることも出来ないが、自分の周囲の人たちとの間隔が変わることで感じることが出来るみたいな。
シャボン玉は何だろう。タバコの代わりに使われるのだが。
愛煙家としては、タバコがあんなだったら、ここまでみんなから嫌われないのになあと。

分からないばかり書いていますが、また何かの機会で皆さんの作品に舞台でお会いできることを楽しみにしています。
そんな作品がある時は、チラシに想流私塾何期生卒業と名前の後に書いておいて欲しいな。
そうすれば、ブログを読み返して、あ~、あの時のってなるから。

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