たんじょうかい【dracom】130517
2013年05月17日 ウィングフィールド
関西小劇場で御活躍する3人の劇作家の作品を、dracomの筒井潤さんが演出するという企画公演。
会話劇。
感情を描きながら、その関係性を形にして見せていく。
共通テーマは愛みたいな感じかな。
未熟だったり、汚かったり、不思議だったりと色々あるのだが、愛の形が浮き上がってきているような気がする。
(以下、問題ないレベルだとは思いますが、一応ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで)
「スカートにバター」 作:サリngROCK(突劇金魚)
高層マンションのけっこう高いところにある部屋。
深夜、一人の女性がトランクに可愛らしい服を詰め込んでいる。
明日は、コスプレイヤーの集まり、コミケに参加するため東京へ。
たくさん写真を撮ってもらう。他のコスプレイヤーと仲良くなる。
ずっと楽しみにしていた。
夫が帰宅する。ご飯も出来ていない。父親への晩御飯もマックで済ましたとか。
明日はどこにも出かけるな。
そう言い放つ夫。
妻は黙って従う。
楽しみにしていた。私のやりたい大好きな事。でも、夫にそう言われては仕方が無い。
夫の楽しみは何なんだろう。父親も夫も仕事のことしか話をしない。
翌日、戻って来た夫は離婚届を持っている。
お前のやりたいことをさせてあげられなくなるから。お前を束縛してしまうから。
一人、家を出て、もう終わったコスプレ会場へ。
出会った頃の二人。
熱烈な夫からの告白。ケーキを作った。いいマンションに住んで二人で幸せに。だから、仕事を思いっきり頑張るよ。
家に戻った妻は、夫のためにケーキを作り始める。
それを見守る夫。
その姿を携帯で写真を撮る。
驚いた妻は、ケーキの生地をスカートにこぼす。それでも、懸命にケーキを作り続ける妻。
微笑む夫。
まだ、愛し合うことに未熟な二人の微笑ましい姿。甘酸っぱく、もどかしい。
相手のことを愛している。きっと、自分も愛されている。
そんなことは分かっている。でも、ちょっとだけでいいから、その確信となるものを求めてしまう。
愛すること、愛されることに不安な、微妙な感情が交錯する。
原点に立ち返ってみた二人。
仕事だって大事、自分の大好きなことをすることも大事。
でも、やっぱりあなたが大事。理屈抜きにそう。
こんなこと何回も繰り返しながら、その時、またあの日のケーキのことを思い出したりして、いい夫婦になっていくのかな。
そのうち、子供も生まれて、愛が信頼し合うという形にまで発展して・・・
お幸せにと声を掛けたくなるような二人の姿が映し出されていたように感じる。
「床の新聞」 作:中村賢司(空の驛舎)
母が亡くなった。
そのマンションに兄弟が集まる。
ここは引き払うので、引っ越しの準備。
趣味で集めていた価値があるのか無いのか、いわゆる飾り皿がいっぱい。
捨てるだけだが、一応、新聞で一枚一枚くるんでいく兄嫁。
兄夫婦は久しぶりの訪問。
最後に集まったのはいつだったか。あの日はみんなで一緒に食事をしたはず。楽しかったのだろうか。
最期を看取ったのも、弟の妻。
弟は剣道部でいじめにあい、学校を辞めた。それからは、母に暴力をふるい、それを母も受け止めていた。
そんな二人に耐えきれなくなって、家を出た兄。
甘え、逃げ。
弟の妻は、母とはうまくいっていない。
少し、病んだところもあるみたいだ。送られてくる飾り皿を割って、突き返したりしている。
もう、まとまることの無い家族。
蝉の声がうるさい。
観てて、気分悪くなって。
アフタートークで、ここがだいぶ意識された演出だと知るのだが、強烈な印象を受けます。
会話劇なのですが、相手のセリフが終わる前に、しゃべり始めてしまう。それも、相手への返答ではなく、自分が思ったことをそのまま。
要は相手の言葉を受け止め、それに返すという、当たり前のキャッチボールが全く出来ていない。
互いに好き勝手にボールを投げているだけ。それがどこに飛んで行こうと知ったことじゃないみたい。
また、ちょっとリーディング作品みたいな感覚もあって、登場人物同士が向き合って会話しないところもあり、その歪んだ関係に拍車がかかる。
受け止められずに、散らかった言葉が、どんどんこの部屋を汚しているようで、しかも、引っ越し前の、乱雑とした部屋の雰囲気とも相まって、もうかなわんなあと。
もういい、全員ここから出て行けと、どなりつけたくなるくらいのイライラ。
飾られるだけの皿。使うつもり無く、購入して増えていく。
床の新聞。日々、たまっていく。もう読まれることの無いもの。
どちらも、何かの拍子に、チラッと見られる。
なんか、このとりあえずあるみたいな感覚が、今から逃げて、ちっとも前へ進む覚悟をしない有様を描いているようで、嫌な感じになります。
皿を割った弟嫁の気持ちも分からんでも無い。
最後に子供を作ろうかみたいなことを、兄が妻に言うが、これも、覚悟というよりかは、単なる逃げに聞こえる。
飾り皿を買う、読んだ新聞をとりあえず、床に置いておくみたいな感覚で、子供を作られたら、たまった話じゃない。
うるさい蝉の声。
観ている側から言えば、この作品の登場人物の会話がまさにこれ。
一方的に放たれる声や言葉は、単なる雑音にしか聞こえない。
蝉の声に哀愁を感じたり、生きる熱意を感じたりすることもあるだろう。
それは、きっとその音を受け止め、音にこもった心や声を言葉に置き換えているからなのだろう。
「コイナカデアル」 作:深津篤史(桃園会)
え~っと、いつの間にやら奥さんが転居してしまい、風呂場に住む男の部屋に引っ越して来た若い夫婦のお話。
これぐらいしか書けません。
炸裂する不可思議ワールド。
これは登場人物が、風呂関係の何かに擬人化されているのでは、若い夫婦は、風呂場に住む男の若かりし姿を映しているのでは、閉じこもった中年男の新たな道への脱却までの話なのか・・・
なんて、色々と想像しながら観ていましたが、頭がおかしくなりそうなので、変な人たちを奇妙な目で見るのにとどめました。
作品名がカタカナの場合は、だいたい、幾つかの意味を含んだ掛け言葉になってるよなあなんて思いながら、これだけ無茶苦茶な世界だったら、鯉とか出てくるんじゃないかとか思ったりしましたが、亀と象が出てきました・・・
漠然と感じたのは、置いていかれた感からくる不安みたいなものか。
風呂場の男は、奥さんに置いていかれてしまっている。
どうも、二人は子供を失ったようでもあり、それも先立たれて、置いていかれた感じでしょうか。
若い夫婦の夫は、職が見つからず、空回りしているところが妻に対しての申し訳なさと、置いていかれるのではみたいな不安が何となく感じられる。
風呂場という、何となく癒される閉鎖空間に身を置き、精神を落ち着かせるような気持ちも分からないでもない。
恋する仲だから、そんな不安が沸いてきてしまうのかな。恋している最中だからか。
相手に乞う気持ちがあるから、そんなに不安なのか。
どうにせよ、一作品目と同じように、愛の中の、不安定な要素が抽出されているような気がする。
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