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2013年5月11日 (土)

マイリトルクラシック【パンツクルセイダーズ】130511

2013年05月11日 近畿大学 Eキャンパス アート館

芸術にかかわって生きていこうとする者。
そこに、生まれる様々な葛藤。厳しい現実の中で、自分たちが表現したいという気持ちとどう向き合っていくのかを問うような話かな。
今、思うことをそのまま形にしたような作品なのかもしれない。
純粋で真摯な作品だ。
それだけに、同じ道を進む者、これからその道を目指そうとする者の心に突き刺さるようなところがきっとたくさんあったに違いない。
淡々と展開する話の中で、複雑な心情を入り混ぜた興味深い作品だった。

倉庫、兼アトリエ。
倉庫業務を行う場所であることがメインなので、その仕事をする人がいる。
昔からやっていた人の後を継いで、今は日下部という男が管理者をしている。
責任感が強く、少し神経質なところがある。自分一人で背負いこんでしまうようなところもあるみたいだ。
彼は文学家。倉庫業務をメインとしているためか、ここのところ、あまり筆は進んでいない。
最近、アルバイトとして、高校三年生の女の子、瞳を雇っている。
彼女はAO入試で、大学入学がもう決まっている。特に何かを意識しているわけではないが、芸術大学へ進むらしい。

文学家の草壁。最近、どこかの奨励賞を受賞したとやらで、けっこうのっている。少々、自信過剰気味で、まあ、ちょっと煙たいところがある。芸術家たるもの、他人にどう思われようとも、自分への自信、信頼を失ってはいけないって感じだろうか。
絵描きの女性、香織。色々なことにチャレンジしながら、自分の表現形を模索している。絵が好きであるけど、その才能への可能性を見出そうとしている感じ。
キタリストの男、亮太。音楽家らしく、少し破天荒なところがある。芸術とは何ぞやとか、ぐちゃぐちゃ言っていないで、今の気持ちをそのまま音楽で人にぶつけようぜって感じか。
先代の管理人の息子、健太郎。高校二年生。特にこのアトリエに想いがあるわけではない。学校ではバスケ部に入り、スタメン目指して頑張っている。

そんな面々が、各々、このアトリエで芸術活動を行う。
もっとも、芸術活動ばかりではなく、くだらん、それこそエロ本を見て、女性を真剣に格付けする遊びで盛り上がったりと、クラブのようなノリで楽しい日々を過ごす。
そして、健太郎は瞳が、亮太は香織が気になっており、そんな恋愛模様も見え隠れしている。

そのアトリエに、ある日、よく分からない男が入り込む。
みんなパニックの中、何とか捕える。
記憶喪失らしく、行く宛てもないので、そのまま住みついてしまう。
特に何か害があるわけではない。
ただ、漫然とこのアトリエで時を過ごしているだけ。

そんなことをしているうちに、4年の時が過ぎる。
この間のことは、わずか数分の映像字幕で知らされるだけ。
日下部は、数少ない作品の中で新人賞を受賞し、かなりの注目を浴びる作家となっている。映画化の話なんかも挙がっているとか。
一方、草壁はもう文学家の道を断念して、日々、生活のために仕事に明け暮れる。厳しく言えば、大した才能では無かったのだろう。そんな現実を突きつけられたのか、心なしか、すっかり小さくおとなしくまとまった男に変わっている。
香織は、今は倉庫の管理人。忙しくなった日下部の後を継いだ。そして、彼女も絵描きの夢を捨てている。結局、自分の可能性は絵の中に見出せなかったのだろう。
瞳はただいま、卒業製作をこのアトリエで。興味本位で入った芸術大学だったが、何か自分に合っているらしく、楽しいらしい。一昔前のアトリエの人たちの姿だろうか。
健太郎は、そんな瞳の製作を助ける。同じ大学に入って、お付き合いをしているらしい。そして、香織の下に付いて、倉庫管理の勉強。いずれは、ここの後を継ぎ、アトリエを守ろうと考えているのだろうか。
記憶喪失の男は、相変わらず。未だ、記憶戻らず。仕方ないので、新しい戸籍をもらい、今は倉内と名乗っているらしい。倉庫の中で見つかったから。

そんなみんなの下に、ある男が帰ってくる。
亮太。
香織にプロポーズして振られ、単身アメリカに渡り、音楽の夢へと突き進んだ男が帰って来た。金髪ロン毛のすっかり変った風貌になって。
亮太は、今のみんなの姿に納得が出来ない。
どうして、自分の道を捨てたんだ。
それぞれの芸術に携わった者として、社会で将来を考えて生きていく普通の人としての想いがぶつかり合い・・・

この倉庫は、大学なのかな。
出入りしている個性的な人たちが、色々な考えを持ってやって来る学生とオーバーラップする。
自信満々、その才能を形にしようと頑張る者、将来のことも見据えて、芸術への熱を抑え込むように冷静に振舞う者、可能性を模索する期間を過ごす者、大学じゃなくても良かったのではないか、熱き魂を芸術に注ぎ込もうとする者、特に何もない、ただ漫然と時を過ごす者、ちょっとした興味で入り込んだら、けっこうはまってしまった者・・・
倉庫業務、大学なら学業か。
学業は、例えば、この舞台芸術専攻みたいなところで学ぶなら、それは自分の夢見る芸術活動の一貫でもあるが、同時に将来をどう生きていくかを決めていくものでもある。そしていつの日か、そう4年後には就職という形で、人生の方向性をはっきりと形づける分岐点が訪れる。
芸術を人生のメインからは捨てるか、メインとするなら仕事としなくてはいけなくなる。
仕事としての芸術が、同じと考えるか、別と考えるか。
そんな現実の中で、芸術というものにどう触れていくのかを描いているように感じた。

最後は、色々なことを無理して背負って、葛藤する男の姿が描かれている。
芸術はやりたいことだから、無理に使命感を持つことは無い。
でも、それではやっていけないようだ。
実際はどうなのだろうか。
この先品ではラスト、少し、そんな息苦しさから、普段の呼吸に戻って安堵しているような感じで終わっているが。
現実と理想の狭間で、矛盾する考えに真摯にぶつかる姿。
答えは分からないのだろう。
とにかく、そこから逃げずに向き合おうとしている若者の姿が印象的だった。
そして、この作品では、どんな人生を過ごそうと、芸術と何らかの形で
ずっとかかわり続けようとしている。
作家になる、画家になる、役者になるとかいう、個々の形ではなく、芸術そのものに関わって生きていこうという強い覚悟が感じられる。

新入生歓迎公演と称されたこの作品。
新入生に、そんなこれからの現実を突きつけ、考えさせるような話で大丈夫だろうか。
表現するって楽しいよってことは、この作品の役者さんを見て感じるのだろうが、演劇に関わることって、ちょっと不安みたいな感覚にならないだろうか。
日常の出来事を描きながら、話が淡々と展開するので、より真実味があり生々しいところがある。
気楽に演劇出来なくなりそうだが。

最後に役者さんにコメント。
日下部、FOペレイラ宏一郎さん。葛藤への苦しみがとてもよく出ている。神経質な感じがまた、その鬱積を強く感じさせる。
草壁、南潤紀さん。自信過剰な前半から、すっかり何かを悟ったかのようなおとなしめの後半への切り替えが非常に巧み。一公演で、一人の人生をしっかり考えされる演技をされている。
亮太、谷川祐樹さん。前半はちょっとおバカキャラになっていて面白いのだが、熱さだけで突き進む人生、でもそこにだって、本当はやってられるかと立ち止まりたくなる想いがあるなんてことを考えさせる後半の一シーンが印象的。
健太郎、北島大志さん。本当に大学生なのかな。純粋で穢れなき姿に目を惹かれる。作品中のこの役は、きっとまだまだ、どこかで大きな人生の葛藤と向かう日が来るだろう。その時、乗り越えて欲しいという願いが、この方のどこか幼く可愛らしい姿と同調して湧いてくる。
香織、松野愛さん。絵が好きで、それを楽しむ人生の一時をとても優しく描かれる。どこかで、自分を見限り、倉庫管理業務へと人生の道を分岐させているが、その好きだという想いが結局は、絵と何らかの形でずっと人生と関わり続けるようなことを感じさせるエンドとなっている。芯のある力を思わせる演技。
瞳、矢部花佳さん。どこかすっとぼけた感じで、飄々とした雰囲気を醸す。同時に頭の回転の良さそうな一面を見せ、この倉庫の中の人たちを冷静に見ながら、自分の人生の道筋をうまく立てているような感じ。ちょっと女性らしい小悪魔的な感じかな。
記憶喪失の男、浜田渉さん。正体不明、漫然と生きるみたいなオーラが風貌からしっかりと出る。大学とかで先輩にいたなあ、こんな人。何にも動じない自由人。結局、色々と悩んでないで、こうしてその時の今をいつの時も受け入れて生きると楽なのだろうな。それが出来るなら苦労しないけど。そんな特殊なことを平然とやれる人は確かに現実でも存在する。

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