ゼクシーナンシーモーニングララバイ【ミジンコターボ】130510
2013年05月10日 シアトリカル應典院
あ~、こんな作品を観劇したからえらい目にあった。
どっかで歯医者に行かないとな。
泣くのをこらえて、奥歯を噛みしめたら、詰め物がとれたぞ。
こんな素敵な作品を見せるからだ。
でも、良しとしよう。
たとえ、奥歯が砕けたとしても、それだけの価値ある作品だったと納得できるであろう素晴らしい出来の作品だった。
さすがはミジンコターボ。
文句無しの傑作だ。
(以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで)
病気は個性だからね。
何の病気だかは分からないが、いつかは死ぬと医者に宣告されて、死を意識しながら生きていく宿命を背負った真一。
医者から渡されたたくさんの薬を飲み、教会で今日も生きられた感謝と明日への生を祈る。
父親はヴァイオリニスト。
幼き頃に亡くなってしまった。
今は母親が一人で懸命に働いて自分を育ててくれている。
そんなお母さんが大好きで、毎日手紙を書いている静香。
二人は幼馴染。
幼少期。
学校を不安がる静香の手をとり、幼稚園に向かう真一。
教会に一緒に行き、お願い事。
静香の願いは真一のお嫁さんになること。
真一は照れて言わない。この頃から、ずっと素直じゃない。
小学児童期。
医者の息子、先生に嫌われていつも叩かれる男、中華料理屋の息子、いじめっ子3人組が同級生。
いじめっ子にいじめられる静香を守る真一。不器用な守り方だけど。
恋敵は中華料理屋の息子。こちらは、ちょっと歯の浮くようなことも平気で言ったり出来るみたいだ。
いじめっ子をやっつける時に偶然にも初キス。
思春期。
母親が世界を駆け回る仕事で忙しくて、かまってもらえず、すっかりヤンキーになった静香。
真一の誕生日にバイクで色々なところに連れ出す。
今や烈怒帝流だとか名乗るいじめっ子3人組の暴走族に出会ってからまれるが、逆にボコボコにし、助けたかつての同級生に姉貴と呼ばれるようになった思い出の日。
すっかり舎弟になった男に誕生日ケーキを買いに行かせる。
暴走族のヘッドも現れるが、静香の強さは群を抜いている。
ヤンキーが手にしていた刃物を取り押さえる時に、偶然にも二人でケーキ入刀。
真一はヤンキーはお好みじゃないらしい。
普通の女の子に戻る宣言をする静香。
結婚適齢期。
中華料理屋で働くようになった静香。
店は後を継いだ息子、つまり同級生がやっている。静香に恋心を抱いている男だ。
かつての舎弟は店の常連になっている模様。
真一の病気は良くも悪くもならない。ただ、薬だけは増えているみたい。
そんな死を意識した人生に耐えきれなくなったのか、酒にタバコに女にギャンブルとだいぶ荒れた生活を送る真一。今日も、この店に女を連れて来ている。
静香はそんな真一を支え続ける。
そして、二人に新しい命が授かる。いつの間にか結婚していたらしい。
中華料理屋の息子もさぞショックだろう。
動揺が隠せないのか、ガスコンロに火がつかないらしい。
バイトの静香が代わりに火をつけようとする。
いや、俺がするとチャッカマンに手を差し伸べる真一。
二人で揃って着火。ただ、ガス漏れしており、大事故になったみたいだが。
晩婚期。
子供もスクスク育つ。
相変わらず、暮らしは貧しい。
花を作る内職なんかもしないと。
娘も婚約者を連れて来たりして、ようやく二人だけの落ち着いた老後を送れるのか。
静香の母から手紙が届く。
昔は毎日書いていた手紙も今ではすっかりご無沙汰に。最後はまだ娘が幼かった頃か。
そんな母親はもう日本には帰って来れないらしい。向こうで体を悪くして、もう長旅ができなくなった。
そして、この手紙を静香が読む頃には、きっと旅立っているのだろうと。
往年期。
無理がたたったのだろうか。
真一ではなく、静香が倒れる。
もう長くは無い。
どうして自分ではなく、あいつなのか。
真一は、最後に静香の望みを何でも叶えたいと思う。
彼女の願いは結婚式をしたいということ。
でも、もうそれも無理か。
静香に最期の時が迫る。
走馬灯のように振り返られる真一との人生。
手をつなぎ共に歩き、キスをして、入刀して、キャンドルサービスをして、ブーケを渡して・・・
な〜んだ、人生をかけて結婚式をしていたのか。
静香は微笑みながら、別れを嫌がる真一の下から旅立って行く。
ちなみに、ここで奥歯の詰め物が取れる。
そりゃあ仕方ない。
片岡百萬両さんとSun!!さん、お二人の熱演に、本物のバイオリニストが奏でる素敵なカノンが響き渡るのだから。
号泣するのを何とか避けられたことを幸いと思うしかないだろう。
また、出会った二人。
そう、あの世で。
そこには、同じ人生を歩んできた人たちが元気な姿でいる。
もう、死を意識することもない。
輪廻転生はやはりあるらしく、これからは逆にいつか訪れる生を意識しながら過ごせばいいのだろう。
ウェディングドレスを身に纏った静香。
現世で想い続けた真一との幸せな結末をここで迎える。
死の影と共に歩む真一の人生。
古き時代のロック歌手みたいな感じだろうか。
いつ死ぬのか分からねえから、今を最高に生きるんだみたいな。
そんな男をずっと想い続けた静香。
二人の人生の登場人物であった様々な人たち。
そんな人達が一同に集まるあの世での姿には、短き人生の誇りや喜び、その中で得られる人の優しい想いを感じて、自然に顔がほころぶ。
分からないところも残っているのだが、まあ、感動したからいいとするか。
冒頭、真一が歌手となって歌って、それを見詰めながらノリノリで聞く静香。そして、歌の終わりに真一が静香にプロポーズというシーンが描かれる。
そんなシーンは二人の人生には無かった。
真一の人生そのものが、その歌っていた時間みたいなものであり、それをずっと真摯に見詰めていた静香ということを象徴しているのだろうか。
静香の愛した母親が作るレンコンのはさみ揚げなんかも意味あるキーワードなのか。
今、観た直後では噛みしめきれないところもたくさん。
また、DVDでも出たら、じっくりと観るとしようかな。
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