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2013年5月17日 (金)

いってきMARS【イッパイアンテナ】130516

2013年05月16日 元・立誠小学校 音楽室

この劇団の初観劇は2010年09月、馬鹿もやすみやすみyeah。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/yeah100920-988f.html
巧みなワンシチュエーションコメディーに圧倒され、その後も役者さんを含め、関連作品にはなるべく足を運ぶようにしている。
ワンシチュエーションとは少し異にする公演、町屋公演や、様々なジャンルでの客演、独自のプロデュース公演など、多彩な経験が蓄積する劇団の力だろうか。
単に笑えるとかを越えた、磨き上げられた素晴らしい作品に仕上がっているように思う。

宇宙船という密室空間での人間模様を描いた話。
そこで、成長していく人の姿を通じて、生きることってそれだけで素晴らしいことだよなって思わされました。

(以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで)

舞台は火星に向かう宇宙船。
数ある部屋の中で、みんなの憩いの場となるダイニングルームで繰り広げられる乗組員の姿を描く。
と言っても、これは訓練であり、火星への有人飛行を前提とした閉鎖環境での実験。
火星への道のりは266日。
60、121、185、266日目の姿を映し、その変化をたどっている。

 

実直で責任感の強い男。外には妻と子供がいる。少々空回りしているところもあるが、自分を常に律して、乗組員たちの生活を守ろうと真摯なリーダーの下、7人の乗組員がいる。
音楽、特にロック好きで、任されたウェイクアップコールは毎日、2時間に及ぶ選曲の末、決めている。これが不評だったりするのだが。妻とは、向こうの浮気が原因で離婚。人生の酸いも甘いも経験した最年長として、他の乗組員を見守るような立場。
料理を担当する男。ボーダーをこよなく愛する。自分の宇宙飛行士としての能力の限界を感じている。そんなところに、この実験は無能な宇宙飛行士を集めて行うものだという上層部の立ち話を聞いており、その厭世観に拍車がかかっているみたい。もちろん、他の人には黙っているのだが。これを最後に新たな道へ進もうと考えている。
彼女にプロポーズしてから、この実験に参加した男。いつでも、最後の詰めが甘い人生を過ごしてきたらしい。だから、今回も266日後に受ける予定の返事はいいものではないかもと不安がっている。やれることと言ったら、スーパーハイポジティブな妄想ぐらいか。
やたらテンションの高い女。自分には超能力があるかも。信じて疑わない自信を糧にひたすら前へ突き進んでいるような子。暇つぶしに本格的な模型作りとかをしているが、特に何かをしたいという訳ではないみたい。でも、一番、みんなで楽しく過ごせればいいと思っているような純粋で優しい感じ。
植物栽培の実験を担当する女。自分への自信、自分を奮い立たせるだけの意識が欠けているのだろうか。何かあれば、くじけてしまいそうな弱さを醸し出す。実際、リタイアとなってしまうアルコール摂取に手を出しそうになるが、ハイテンションな女の機転でうまく脱する。そして、模型作りなんかも薦められ、後半ではやりがいを見出した人みたいに元気な人となる。
細々とした雑用を任されている男。宇宙飛行士になる。この目的意識が一番強い人。と言って、ギスギスした感じは全く無い。みんなから愛されるような穏やかな感じ。ウェイクアップコールの音楽が自分と合わず、悩んでいる。正面切って、きつく相手に言及することは出来ない性格みたいだ。それだけに溜めこんでしまうところがあるのか、音楽を愛する男のギターの弦を衝動的に切ってしまうような行動を起こしてしまう。
リーダーの良き支えとなっている女。リーダー同じく、外には夫と子供がいる。母性だろうか。自分を律して頑張るリーダーを支えてあげたいという優しい言動。もっとも、これが周囲からは、不倫みたいな怪しい形で見られてしまうのだが。

 

閉鎖環境での日々の生活。
そこで、起こり始める、睡眠障害など様々な問題。
上層部に依頼する必要物資の補給がいい加減。PS頼んでもスーファミが届いたり・・・
60日目は、乗組員のキャラ、そして、そんな、この作品の設定を意識付けさせている。

 

事件が起こる121日目。
アルコールに手を出しそうになる、彼女のことが不安で仕方ない、内緒で新たな料理を作ってみる、うるさいウェイクアップコールにうんざりしてギターの弦を切る・・・
7人の人間が同じ空間で生活している。ましてや、そこは逃げ場のない密室。
そこに鬱積するストレスが爆発して、自分本位の行動を取ってしまう。
もう、この実験はダメなのではないか。
そんなことを感じさせる、一番の修羅場を描く。

 

185日目。
雨降って地固まるみたいな感じか。
各々のストレスが解放されることで、個々の内部にたまるストレスは緩和されたみたい。
各々が、この密室で自分を楽しみながら生活する術を覚えたのかもしれない。
もう、立派なコミュニティーが出来上がったと言っていいだろう。
でも、まだ一部、しっかりと分かり合えず、わだかまりを残している間柄もある。
この日は、緊急事態対応訓練。
緊急状態という危機の中で、そんなことも解消されていく。

 

最後の日。266日目。
火星到着。ってことだから、せっかくなので、火星に降り立ったシミュレーションをバカらしいけど、やってみよう。
料理に興味を覚えたハイテンションな女の作ったカレーパンをみんなでほうばりながら話す。隠し味は、植物実験担当の子が作ったリンゴ。
火星に降り立つ役は最年長の男。みんなのこれまでの意思をつなぐのに最適な人物。
照明は、以前に上層部から送られてきた3Dメガネ製作キットの中に入っていた赤や青のフィルターで効果を出す。
音響はギターの弦を切った男が担当する。
火星の地表は赤いので、とりあえず赤いトイレマットで。その上に、誰かが依頼した温泉の素を砂に見立てる。
宇宙服は無いけど、模型として作った宇宙服のヘルメットで。
これまで、意味あるのかもよく分からなかった物、そして単なる暇つぶしとしてやってきた行動の集大成が、映像として刻まれる。

 

そして、266日ぶりにハッチが開く。
そこには、マスコミやら、歓迎する一般市民たちが。
その中には、もちろん・・・

 

宇宙船は飛ばない。もちろん、火星に向かって一歩も進みもしない。
密室という閉鎖空間だから、外の景色も変わっていっているのかも分からない。
変わっていくのは、宇宙船の中の人たち。
動くのは、宇宙船ではなく、私たち人間だ。
特に何かの目的を成し遂げようと生きているわけではない。
でも、その日々を生活しやすくしよう、楽しい気持ちでいられるようにしようという気持ちが、自分たちを変えていく。
そのために、自分で試行錯誤して色々と工夫したり、楽しくなくなっている人に対して思いやりの言葉を投げかけたり、・・・

 

これはコミュニティーの形成、大げさに言えば今の世界が出来る地球の歴史みたいだな。
それこそ、創世記ではアダムとイブを、この永遠の宇宙の中の地球という閉鎖空間にちょこんと置いて、後は今の時を迎えるまで、様々な人たちが自分たちのために、今過ごしている生活空間のために生きてきた。そしてそのことが良かれ悪かれの結果を得ようとも、地球に変化をもたらした。
266日と終わりの日は決まってはいるが、そこに向かってとにかく日々を過ごしていく。
興味あること、こうしたいと思うことをやってみる。
目的意識をしっかり持ってやる場合もあるだろうし、よくは分からないけど暇つぶし感覚なんてこともあるだろう。
ルールに拒絶をする時もあるだろうし、それが話し合いで単純に解決できないこともある。
自分のことで精一杯になって、他の人に目を向けられなくなる時もあるだろう。そんな時に支えてくれる人がいる時もあるだろうし、逆にそんな人の支えになることもある。
緊急事態のように、突然、災害が襲ってくることもあるだろう。
そして、そのことで絆を深め合うことが出来たりもするだろう。

今、自分がしている何か。
ただ、生きているだけでも。
これが、一見、何も動かない閉塞した世の中だけど、どこかへ向かって進む糧になっている。
自分がした何かは、必ず回って誰かの何かに影響を与えている。
それは、きっと自分も同じ。
人生ってそんなものなのかな。
生きているだけで素晴らしい。
そんなことを感じさせられ、どこか、この息苦しい世の中で、どうしていいのか分からず悩んだりすることへの安堵を与えられた気がする。

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