Happiness【劇団PEOPLE PURPLE】130510
2013年05月10日 HEP HALL
まあ、力なのだと思う。
家族の心温まる絆を感じて、じ~んとなって、涙が溢れそうになって。
感動のさせ方、心の揺さぶられ方が、ここは尋常じゃない。
話のメインの父と兄弟とは別に、面白いメイドや探偵なども登場させ、巧みな笑いを誘う。
面白くて笑いながら、感動して涙するなんて、この劇団らしい、いつもどおりの素晴らしい作品に仕上がっている。
ただ、話の筋はありがちで、かなりキャラの出来に頼っているような感は否めない。役者さんの魅力にほとんどが依存されているように感じます。
多岐に渡り、大活躍するこの劇団ならば、もっと唸るくらいの鋭く突っ込んだ家族の絆が描かれないと、満足は出来ない。
(以下、一応、ネタバレ注意。許容範囲であると判断して、白字にはしていません。公演は大阪が日曜日まで。その後も東京で公演があります。上に不満を述べていますが、観れば笑って泣けることは間違い無いと思います)
1961年、アメリカ。
実業家として成功をおさめた男は、もう3ヶ月ぐらいしか生きられないという余命宣告を受ける。
最期の時を突如迎えることになって、思い出されるのは子供たち。
離婚をして、親権は全て妻に渡した。生活はとても厳しく、妻も子供たちも苦労続きだったらしい。
子供たちに余命いくばくも無いのでもう一度会いたいと手紙を書くが、出せるわけも無く、ゴミ箱に。
そんな手紙を40年以上、仕えてきたメイドが見つけ、主人には内緒でちょっとおかしな探偵を雇って、子供たちを呼び寄せる。
銀行の支店長として出世している長男。家族にも恵まれて幸せな生活をしている。
女優の長女。最近は、あまりいい役ももらえず、元々ちょっとトゲのある性格に拍車がかかっているみたい。
冒険家として、自由に生きている次男。冒険に金を費やして、資金難状態みたい。
ストリッパーとして、借金生活に苦しんでいる次女。見栄があるのか、そんな素振りは見せない。
彼氏にふられ、いまや兄弟からも認識されないくらいに太ってしまった三女。バイト生活でいつも金欠。
そして、腹違いの四女。歌手を目指しているが、とてもかないそうにない音痴。天然でいつも明るく元気な子。
みんな、メイドからの手紙で、集まって来た。
ただし、余命のことを書いても、現実は捨てられたと思っている子供たち。来ない可能性も十分にあり得る。
遺産相続のことで話があると偽の手紙を書いて、呼び寄せている。
もちろん、主人はそんなこと知らず、自分の命の心配をしてやって来たと思う。
感動の家族の再会となるはずだったが、偽の手紙のことがばれる。
所詮、遺産目当てか。
当たり前。家族を捨てて、自分の仕事のことだけを考えて生きてきたのだから。
そんな、長年蓄積した想いが、どうしようもない亀裂を生み出す。
しかし、どうであろうと家族であるという絶対的な絆は・・・
腹違いの子がずっと父とも会えずにこれまでを生きてきており、それを恨むことも無く、純粋に家族と再会できることを喜ぶ姿の中で、自分たちは父と数々の思い出を持っており、それは決して消すことの出来ない大切なものだと気付きます。
さらに、メイドは黒人で、恐らくはこの時代にあったであろう人種差別。そんな不条理なことですら、受け入れて生きていかなくてはいけない。腐って、文句だけを言っていても仕方が無い。そんなメイドのメッセージに兄弟たちは心を動かされます。
確かに苦しい生活を強いられたのだろう。寂しくてつらくても、そこには父がいなかったのだろう。
でも、許す、受け入れるということを通じて、相手と接する。
そうしないと本当の幸せはいつまでたっても訪れないといったところでしょうか。
そんなことを兄弟たちが感じ取った時、おのずと父が自分たちをどれほど想っていたのかという事実が浮き上がり、隠れていた家族の絆が姿を現しているようでした。
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