セイギノミカタ! -四月一日物語-【劇団猫の森】130518
2013年05月18日 インディペンデントシアター2nd
3年ぶりの観劇。
以前、拝見した時に、ずいぶんと古臭い感じで中年色、昭和色が漂うところだなあ。だから、ちょっとベタでくどいところがあるなあなんて思ったのですが、後から聞くと、ここはそこを持ち味にして、走り続ける劇団だそうで。
3年経っても、全然変わってなかった。
今回は特に、昭和そのもの、ベタベタのお話。
世の中、どう変わろうと、貫く信念みたいなものがあるのでしょう。
なんかちょっと安心した感があります。
作品は、変わり果てたかつての悪党の姿に哀愁を感じながら、今の世の中の失われたものを模索するような感じで、笑いながらも、じっくりと考えさせられる話でした。
多発する極悪な犯罪。
テロ、ストーカー殺人、衝動殺人、・・・
悪の風上にも置けない連中だ。
こんな残酷な犯罪者たちがはびこるこの世の中を憂う者たちがいた。
かつて、悪党と呼ばれていた面々。
怪人二十面相の呼びかけで、奇岩城に集結する。
ドロンジョ、ボヤッキー、トンズラー。
デスラー総統。
あしゅら男爵。
黒蜥蜴。
ナゾー。
光あるところに影がある。
彼らの目的は、もう一度自分たちが輝くためにも、正義のヒーローを作り出すこと。
開催された悪党サミットで、そんな計画が持ち上がる。
都合のいいことに、そこに捨て子が。
彼らは、その子を正義と名付け、正義のヒーローとするべく育てていく。
みんなからたっぷり愛情を受けてすくすく育つ正義。
でも、捨て子であることがひょんなことから分かってしまい家出。
そこで出会った、警部。
彼はまさに現実世界での正義の味方。
彼は、正義に奇岩城の連中が悪党であることを吹き込んでいく。
悪は倒さなくてはいけない。
彼に傾倒する正義。
でも、実際は警部はその立場を利用して、私腹を肥やす奴だった。
警部を裏で操る謎の女性と共に、遂に奇岩城に警部率いる、警察組織が踏み込む。
正義と悪党の戦い。
それを見詰める正義は・・・
まあ、過去の正義のヒーローの話における悪役たちでパロッた作品。
視点を悪役側に向けての話としています。
言い方は悪いですが、すいぶんとバカバカしく、くだらない。
でも、こんなだったら面白いななんてところを鋭く突いています。
好きな作品は本、映画、演劇、どんなジャンルにせよ、その後の登場人物の姿を頭で描いたりしますものね。
それにしても、今回の悪役たちのその後の姿は痛ましい。
みんな中年になっちゃって・・・
バカバカしいと書きましたが、実はちょっと正しいこととは何なのかなんて、今の世の中で、何か無くしてしまったものを感じさせるような、メッセージが込められているところもあるような気がします。
昔は正義のヒーローのことがもちろん大好きで、その悪役たちにも色々と思い入れをしましたね。
そこには、非現実的な設定の中で、正義と悪の互いの誇りを掛けた決死の戦いがあったわけです。
誇りを持つ。
互いにそれを持っているから、今から思うと正義が本当に正しかったのか、悪が本当に悪かったのかは疑問です。
あらかじめ、こいつは正義、こいつは悪なんていう設定になっているから、それに従って観ていたのでしょう。
必要悪みたいなものなのか、悪もポリシーを持っていたから、本当は彼らこそ、世のことを真剣に考えて何かをしようとしていた人たちなのではないかなんて。
こんなことが今は何をするにしても無くなっているのかな。
現実世界で目の当たりにする、数々の事件は、犯罪に誇りやポリシーなんてことを考えることは間違いだとは思いますが、そんなもの全く抜きにして起こされたものが多いような気がします。
ただ、人を傷つける。悪とかいう言葉以上の悪でしょう。
私たちが幼き頃から、正義のヒーローを見て、植え付けられた悪とは、異にするもののような気がします。
それが、現実なんだと言えばそれまでですが、今こそ、そんな昔に活躍した悪党たちの姿を見て、自分たちに潜む悪を見詰め直すことも必要なのではなんてちょっと感じました。
まあ、そんなこと抜きにして、バカバカしさを楽しめばいいのだとは思いますが。
私も中年ですが、いくらなんでも古過ぎて知らない悪役も。
ナゾー、あしゅら男爵は全く知らず、ネットで画像検索してみました。
ナゾー・・・、全然違うじゃん。
あしゅら男爵・・・、見事な再現。しかし、あの時代に雌雄共存なんてジェンダーフリーの概念をキャラに込めているのは斬新ですね。
中年たちのまだまだ熱のある演技。
じっくりと考えさせながらも、そのくだらなさに顔が緩むような、経験豊富な劇団、役者さんならではの雰囲気が醸し出されている楽しい作品でした。
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