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2013年5月13日 (月)

熱血刑事ストーリー フォー・ザ・サン【ボンク☆ランド】130512

2013年05月12日 人間座スタジオ

前回、拝見したDr.ターミナルと同じく、あまりにもバカバカしい展開で話が進むのに、行き着く先はとても深いところへ向かい、じっくりと考えさせるようなラストに持っていく。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/dr121124-09ac.html
それこそ、言葉は悪いが、蔑むかのようにおバカな人たちを引いて観ながらも、最後は姿勢を正して、う〜む、生き様を深く描いとるなあなんて殊勝な気持ちになってしまう。
脚本の妙もあるのだろうが、終始、異常なまでに全力投球の真摯な熱い演技を見せる役者さんの放つ力も大きいのではないか。

警視庁X課。
多様化する凶悪犯罪に対抗するため、秘密に組織された特殊チーム。
今は亡きボスの後を継ぎ、二人の刑事がこの組織を守る。
片手にブーメラン、でも、そのブーメランは決して投げられることがない、イーグル刑事。
チョコレートパフェを武器に犯人に立ち向かう男、スイーツ刑事。
今日もイーグル刑事のアパートを捜査本部にし、スイーツ刑事の盗聴する警察無線で近場の事件に勝手に乱入する。

現実は落ちこぼれの集まるところ。
今は亡きボスと共に過ごした仲間、ミルク刑事、ドラキュラ刑事、マンモス刑事・・・らはみんな殉職した。
・・・ということにしている。だって、こんなところにいてはいけないと努力を重ね、みんな優秀な人材が集まる課へ異動した事実には目を背けたいから。
イーグル刑事は、自分がそんな落ちこぼれだということは分かっている。
寂しい。だから、今日もデリヘルを呼び、幼児プレイに走ったりする。

そんな中で、このX課の唯一の存在意義とも言える、ボスが生きていた頃から追っていた女テロリストの資料が送られてくる。
意気込むイーグル刑事に対して、スイーツ刑事は半信半疑だ。
そんなものはいないのではないか。もう潮時かも。キャラを守るためとはいえ、糖尿病も気になるし。
それに、実はここを巣立ったかつての刑事から、異動の推薦状をもらっている。もちろん、イーグル刑事には言えることではないが。

そんな温度差から、二人はケンカ。
イーグル刑事は、たまたま入った居酒屋に。
女将さんに出された味噌汁をつまみに日本酒をラッパ飲み。
惹きつけ合うものがあるのか、その店にスイーツ刑事も。二人は酒を酌み交わし、ボスの時代を振り返る。
ボスの後妻に惚れてたなあ。お前だって、ボスの娘に気があったろう。
出された味噌汁。そう、ボスの家で、あの頃は毎日、仕事帰りに飯をごちそうになり、味噌汁を飲んでた。あ
れは、美味しかったよなあ。
ボスはいつも背中で語っていた。
だから、俺はボスの想いを守るために、このX課で活躍し、あの女テロリストを捕まえてやる。

そんな二人の絆を確かめ合ったような翌日、スイーツ刑事の異動の話をイーグル刑事が知ることになる。
そして、さらに女テロリストを名乗る女性が現れる。
この女性は・・・
明かされるX課の真実。
そこに隠されたボスの想いを知った二人は、各々の道に向かって歩んで行く。
最後、面倒くさいのではしょりましたが、ここに作品名のサン、太陽、そして息子という意味合いが隠されています。

不器用だけど、真摯に生きてきた、生きている人たちの姿が映し出されます。
そこに、友情、愛情、男のプライド、女の慈愛なんかも絡めながら。

ブーメラン。
投げるのは簡単だけど、人を傷つけ、その分大きな重みを持って戻ってくる。それを受け止められないから、投げるのを止めようと考える真面目さ。
スイーツ。
甘いだけで、何の武器にもなりやしない。自分が劣っていることに苦しむ同僚を友として癒すためにでも持っていたのだろうか。
女テロリスト。
X課を存続させるために、女や妻としての立場を捨ててでも、そうあり続けなくてはいけなかった。
亡きボスの想いに翻弄されながらも、その背中で語られた言葉を受け止めて生きていこうとしている人たち。
各々が、熱き魂を持つ戦士として、生きることに戦い続ける人の姿が浮かび上がる。

イーグル刑事、髭だるマンさん(劇的細胞分裂爆発人間 和田謙二)の、蔑むぐらいのキモさ、いい加減さと悲しいほどに真面目、熱きかっこよさを共存させる魅力が持ち味として見事に発揮されている。
スイーツ刑事、しゃくなげ謙治郎さん(劇的細胞分裂爆発人間 和田謙二)。破壊力ある演技はこれまで観たとおりだが、友情と自分の生きる道への葛藤を心に秘めながら優しさを醸すような微妙な心情表現がとてもいい。
ナレーションをしながら、いつの間にか女テロリストになっている篠塚ノリコさん。どこかで拝見したことあるような気がするのだが、覚えが無い。前半のナレーションでは、綺麗な声に魅了される。抑揚や感情表現の上手さだろうか。相当な魅力を感じる。リーディング公演でもあろうなら、足を運ぶ価値は十分ある。そして、後半の心情溢れる女優さんならではの姿。美しく優しい微笑みと深く刻まれる悲しみに聖母をイメージさせるくらいの慈愛が込められている。

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