その夢、むこう【clickclock】130420
2013年04月20日 LIVE&CAFE BAR PLACEBO
刻まれるリズムと共にシーンが綴られる。
セリフもそのリズムに合わせて、韻を踏んだような感じとなっている。
5人の役者さん方の連係が、とても心地よく、その整然とした美しい空間に魅了される。
同時に、想いを表現する力強さが相当な迫力となって伝わり、圧倒される作品となっている。
夢を語り合う男女5人組。
俺は宇宙飛行士<成瀬トモヒロさん>、俺は天才プログラマー<杉田真吾さん(名前はまだなゐ)>。自分で天才って・・・
私は歌手になる<一川幸恵さん>。私は花屋さん<米山真理さん(彗星マジック)>。ハードル低いな。
私は・・・<西村陽子さん>
みんなで夢叶えてまた会おう。
アンドロイド完成。本当にプログラマーになった真吾。やっぱ、本当に天才だったのかあ。
歌手。甘かったのかな。甘い自分に甘い夢。現実は辛い。つらい、つらい。いつの間にか逃げ出してしまった幸恵。みんなとも連絡とってない。
宇宙飛行士の勉強は大変。英語もロシア語も出来なくちゃ。体だって鍛えないと。でも頑張る決心をするトモヒロ。いつか宇宙に行く。計画されている木星探索船に乗る。いつしか彼女となった陽子と一緒に。
花屋になった真理。今では地元に残っているのは私だけ。
4人が揃う。幸恵だけ行方が分からない。
いつかみんなで一緒に会おう。いつかまた。それはいつなのだろう。
地元で一人みんなを待つ真理は思う。
宇宙飛行士合格。体が生まれつき強いのがラッキーだった。特例合格した陽子。木星へと向かう。トモヒロにはギリギリまで言えないな。すぐへこんじゃうから。
テレビで発表。木星探索船出航。
陽子が乗っている。陽子の夢って宇宙飛行士だったかな。いや、何も言ってないじゃん。何でそれで宇宙に行くの。あなたの夢は何なの。幸恵は彼女に会いに行くがもう出発してしまっていた。
木星探索船が行方不明に。
どういうことだ。お前のプログラムだろう。どうにかならないのか。天才なんだろう。
トモヒロと真吾は、行き場の無い想いをぶつけ合う。そして、必死に探索船との連絡を試みる。
真理は幸恵をずっと探し続け、ついに見つける。
あきらめるな。立ち止まるな。
真理と幸恵もまた、想いをぶつけ合う。
木星探索船から通信が。
宇宙のはるか彼方を漂っている。奇跡が起こってももう帰還は出来ないだろう。でも、生きられるだけ生きてみる。
陽子の声が聞こえる。
私の夢は、夢を叶えたみんなともう一度出会うこと。
夢を見た。頑張った。挫折した。諦めた。手に入れた。失った・・・
どうであろうと、私たちは夢と一緒に生きてきた。
今、暗闇の宇宙で一人夢を見ている陽子。
届け。私たちの想い。
真理が手にした花に祈りを込めて、四人は陽子を想う。
はるかかなた宇宙への空間を超えて、時空を超えて、あの頃の五人は一つの絆で結ばれる。
役名が無かったので、勝手に役者さんそのままの名前で代用したあらすじ。
役者さん方の想いを真剣にぶつける姿に心揺さぶられるのか。
刻まれるリズムの効果も相まって、今いる空間が宇宙へと融合してしまうような迫力を感じる。
そして、とても美しい。
失われた夢、戻らない時間。切なく悲しい現実であるのだが、それ以上に、この宇宙で共に同じ時間を過ごしたことが素敵なことで、その想いが未来、そして過去すら変えてしまうような奇跡を信じさせる。
一川幸恵さん。先日の子供鉅人で奥に優しさを秘めたお母さん、可愛らしすぎるアイドルみたいな役で拝見しており、要チェックの役者さんとして、注目して観ていたが、相当パワフルな演技をされるので驚いた。夢破れる歌手。心情表現を体から溢れるくらい力いっぱいされる。それでいて表情の微妙な切なさもグッとくる。
杉田真吾さん。背が高くて、この空間では狭苦しそう。その窮屈な感じが、実はこのキャラのどこか不器用で朴訥としている感覚と同調しているように感じる。純粋にまっすぐ人を見つめているような雰囲気がもどかしさも含んだ優しさとなって感じ取れる。
成瀬トモヒロさん。途中、なぜかイベント的にギターとダンスのバトルが入り込み、お得意のダンスを披露。いつもながら、踊るとかっこいい。宇宙飛行士。彼女には勝てない。でも頑張る。ちょっと情けなく、自虐的な滑稽さを醸す人のいい男が出来上がっている。
西村陽子さん。淡々、飄々といった自分の想いを外に強く出さない、熱く語らない姿が、後半になって非常に切なさへと変わっていく。何が起こってもあっけらかんとしている無邪気な心が、失われた夢という悲しみ、もう一度、夢を叶えてあげて欲しいという祈りへと感情移入させる。
米山真理さん。ふわりとしながらも、信念を心に秘めた凛としたたずまい。叫ぶような熱のこもった言葉が突き刺さる。揺るがない強い意志や仲間への想いを強く思わせる姿として映る。
前半はリズムを刻んでセリフを発して話を進める面白い手法を楽しみ、いつの間にやら、後半、熱いエネルギッシュな役者さん方の姿に引きずり込まれてしまった。
狭い小さな空間がとても美しく、気持ちのいい観劇だった。
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