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2013年4月28日 (日)

おおきないし【The Stone Ageヘンドリックス】130428

2013年04月28日 TORII HALL

笑いをふんだんに盛り込みながらの深いテーマを描いた作品。
笑って、泣いて、そしてしっかり今を考えさせてくれる。
想い合って、共に前へ歩んでいけたら。
そんなことを感じさせられ、それがきっと実現できるはずという気持ちになれる話だった。

(以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は明日まで。)

天狗伝説のある町へやって来た女性UMAライター。
幼い頃、病気がちでどこにも行けなかった時に出会った一冊の本。色々なUMAが描かれた本に勇気を与えられ、いつの日か自分も誰かを勇気づけたいと思うようになったとか。
と言っても、気ののらないグルメ記事を書いたり、クライアントに気を遣ったりと、なかなか思ったとおりにはいかないみたいだが。
今日も、昭和のバブル景気を存分に楽しんだであろうテンションの高い女性編集者と一緒。
どこに行けばいいのか分からずウロウロしてたら、荒々しくいかがわしさをプンプンと匂わせた漁師が天狗伝説のことを教えてくれた。
町には大きな石がある。ここに、いつも天狗が座って海を見ているという。

 

宿泊先の民宿は天狗が入った風呂とかもあるらしい。最近、出来たばかりの風呂という噂もあるのだが。
町に最近やって来た、これまた昭和、いやそれも60年代のヒッピーを彷彿させる女性画家がよく入りに来るみたい。
人は良さそうだが、少々、自分の世界に入り込んでしまいがちな男が主人。町では唯一まともな人ではないだろうか、しっかりしてそうな若い女性も働いている。
町は天狗伝説で町おこしをしようとしているみたいだ。悪巧みをしてそうな議員が何かを企んでいる様子。
民宿の主人もそれにのっかっている。だから、天狗などは鼻から信じてはいないのだろう。

 

そんな中、天狗は現れる。
ちょっと想像していたのとは違うのだが。顔は紫色。ジャージ姿の冴えないおじさん。大阪弁でじゃりん子チエの漫画をバイブルとしている。羽根も生えていないし、とても神通力を持っているとは思えない。
ただ、その姿はUMAライターにしか見えていない。確かに天狗なのだろう。

 

そのことを伝えても誰も信じてくれない。
唯一、漁師は信じてくれているみたい。幼き頃に天狗に会っていたのだろう。天狗の羽を持っており、今は見えないが気配は察知できるらしい。何やら昔、大事な本を取られたとかで、手当たり次第に網を投げて天狗を捕まえようとして暴れるだけなので、天狗の情報を聞き出すには至らない。
編集者は写真を要求するが、写真には写らないみたいだ。画家に見たままを伝えて絵を描いてもらうがどうもしっくりこない。

 

ライターは天狗と話をする中で、ここで起こった事件のことを知る。
大地震。津波がやって来て、多くの者が海の彼方へと連れて行かれた。
天狗の仲間もそうみたいだ。だから、そんな帰るとも思えない仲間を大きな石の上から海を見て待ち続ける。
この大きな石も山から津波で流されて、ここにある。
そして、天狗は何やら寒いと言う。人には見えない雪の様なものが降っているらしい。まあ、ここまでくると、イメージするのは3.11なので、その正体も漠然とあのことなのだろうな。
天狗は自らの悲しみを隠すかのようにライターを神通力で様々な場所へ飛んで連れて行く。それはライターが幼き頃出会ったUMAの本に勇気づけられたことが、現実となったかのように。

 

さらに取材を進める中で、民宿で働く女性のことも知る。
いつも明るく振る舞う女性は、その津波で弟を失っている。
大きな石がある場所は、以前はシロツメクサが群生しており、弟は四葉のクローバーを見つけるのが上手だった。
だから、彼女はシロツメクサの種を播いて、再びこの地が元に戻ることを願う。でも、そんなことをしていても、悲しみはいつも彼女を襲う。
そんな彼女に寄り添いたいと思うライターだが、何もすることは出来ない。頑張れと言ってはいけないらしい。心理学の本で読んだ。でも、頑張ってと言ってもらっても大丈夫だと彼女に言われたりして。
何かを変えたい。ただ、ひたすら大きな石を動かそうとするライター。そんな真摯な姿に、手を貸そうとしだす女性。

 

大きな石。失った近しい者たちに対する悲しみや悔いみたいなものだろうか。被災者はそんなずっしりとした悲しみや悔いが心に大きくそびえたっている。そして、その大きな石の上に座り続けるように、その悲しみを背負って、失われた人たちと共に生きていく覚悟をしている。
何かをしてあげたい。手を差し伸べたい。
でも、被災者でない自分に、そんな悲しみと距離がある自分に何が出来るのだろうか。
ライターと天狗、民宿の女性の関係みたいなものか。
それでも、その想いは心から溢れている。それはかわいそうだからとかではなく、自分も人に勇気づけられて、励まされて生きてきたから。UMAの本。そして、今、ここで出会った天狗が叶えてくれた夢。
少しでもいい。動け、大きな石。悲しみを少しでもいいから、消し去れるのなら。
そんなライターの想いが伝わり、共に前へ進もうと応えた女性の姿で話は締められている。
天狗伝説を利用した町おこしのような、表面的な偽りの復興では無く、この町の本当の復興を思わせる、ほのかだが、力強い人間の姿が描かれているように感じる。

 

役者さんは、キャスト一覧を見れば、上記した登場人物の形容詞表現でだいたい誰がどの役をされたか当てられるのでは。それぐらい、みなさん、はまり役でした。
ライターの大西千保さん。特に何かが出来るわけでもなく、普通の女性。でも、自分が何かに生かされてきたという感覚を持っているみたいで、それがこの町で悲しみを背負う天狗や民宿の女性への真摯な優しさにつながっている。人の想いを受け止める経験をしてきたからこそ出来る、人を想うことみたいな感じかな。
それに応えた民宿の女性、一瀬尚代さん(baghdad cafe')。外に出す明るさと、内に秘める悲しみのバランス表現が絶妙。シロツメグサの種を播いて、急に悲しみが顔を覗かせ、そのバランスが揺らぐなど、ちょっとしたことで、揺れ動く被災者の苦しみが丁寧に描かれている。押し殺した感情表現だからこそ、滲み出てくる深い心情がより感じられる。
この作品、深いテーマを基調にしているが、全体的に、特に前半は個性的なキャラ登場で笑いに包まれる。
編集者、本木香吏さん(仏団観音びらき)、漁師、中井正樹さんなどは強烈なキャラで会場を沸かせる。
天狗、緒方晋さんは万能選手といったところか。笑いはもちろんお手の物といった感じで取るが、天狗の悲しみ、そして神の使いであるからこそ、人間に救いをもたらそうとしているような優しさも同時に醸し出される。

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