コノハナアドベンチャー2【劇団子供鉅人】130401
2013年04月01日 大阪市此花区梅香エリア
最高に楽しい公演だった。
町屋公演をよくされるこの劇団と、同じく京都でそんな公演をされたりする客演のイッパイアンテナの方々、そして、何か可愛らしくも個性的な方々が融合した遊び心たっぷりの時間でした。
民家やビルを本当に回りながら繰り広げられるこの公演。
何もかもが目新しく、久し振りにワクワクする感覚になった気がします。
出来ることなら、もう一回観たかった。そして、お友達も一緒に連れて行きたかった。
また、来年もやってくれるのかなあ。
大阪市此花区にあるモトタバコヤ。看板どおり、元タバコ屋。
父も亡くなり、一人娘の上杉(上杉朋さん)が一応、住んでいる。もうじき取り壊しになるかもしれないが。
タバコ屋自体はしていないものの、いかにも看板娘って感じで地元に溶け込んで生活しているみたい。しっかり者で、母親のように優しそうな人。
よく遊びに来るちょっとおかしな男、NASA(クールキャッツ高杉さん/イッパイアンテナ)。
いつも宇宙戦争ごっこだか、一人遊びをしている。驚くぐらいに自由な人。よく言えば奇才の雰囲気を漂わすが、まあ言ってしまえば、ちょっと頭のおかしい人だ。
上杉の同級生、なつき(億なつきさん)がやって来る。ずいぶんと派手な恰好。毛皮でふわふわ。東京から帰省してきたみたい。
ノリのいい子で、NASAの妄想遊びにも軽く付き合っていなしている。
上杉とは何でも腹を割って話せるような大切な間柄みたい。
と言っても、もう帰る家はない。両親が別れて、もう家族はバラバラになったから。
東京では水商売。辛いこともたくさんあるみたいだ。
そんな中、懐かしむ間もなく、突然、部屋の押入れから未来人兄妹が現れる。
飄々としたちょっと頼りなさそうな兄(影山徹さん)に、可愛らしくツッコミ上手な妹(渡辺綾子さん/イッパイアンテナ)。
彼らが言うには、157年後の此花区からやって来たらしい。
未来ではエネルギーは妄想力。しかし、ありとあらゆる物が実現した未来ではその力を持つ者は少ない。
今の時代の妄想力は凄い。特にNASAのその力は絶大。しかも未来ではタイムマシンを発明した天才として名が知れ渡っているらしい。
そんなNASAの妄想力を操り、日本を征服しようとしている悪者、リリー・モーソ(益山寛司さん)を筆頭に組織された妄想族を倒すために仲間を集めにやって来たのだ。
リリーはNASAが作ったタイムマシンを奪って、NASAの妄想力と共に此花区を、そして日本を征服するつもりらしい。
しかし、もう手が回っていた。リリーはこの時代にやって来ていた。突然、部屋に現れる。リリーは強烈な姿で言葉で書きようが無い。
NASAの兄、ヒューストン(吉田泰典さん)を人質に此花区のどこかに姿をくらます。とにかく、リリーを探して、倒さなくては未来の此花区が危ない。
未来人が持つ、妄想センサを頼りに、此花区を探索する旅が始まる。
上杉、なつき、NASA、未来人兄妹。そして、先ほどのリリーとのちょっとしたいさかいで、妄想パワーが歪んで漏れてしまったのか、いつの間にやらタイムトリップしてこの時代にやって来てしまった武骨な侍、弥一郎(小嶋海平さん/イッパイアンテナ)。
今、コノハナアドベンチャーが始まる。
もちろん、私たち客も巻き込んで。
モトタバコヤを出発して、妄想センサの反応する方向に向かう。
上杉となつきは仲良く昔話でもしながら一緒に。NASAは、ウロウロと好き勝手にブラついている。
放火注意なんてにらみをきかせたポスター。時折、走る車。自転車に乗った子供。お花見中のご老人。犬を散歩中のご婦人。ブラブラ歩いているおじさん。
みんな敵の刺客らしい。気をつけないと一発だ。
途中、やられてしまった残骸なのだろう、鉄屑が詰められたドラム缶などもある。
リサイクルショップと看板を掲げる武器屋。皆さんお気に入りのイカヤキのおいしい店。そして、打ち上げ後に行くつもりらしい銭湯・・・
慣れない私たちを誘導する未来人兄妹。雇われているのか、ツアーの旗を持って付いてきている普通のスタッフらしきお姉さん。
私たちが出来ることは歩道をなるべく歩くくらい。
そんなことをしているうちに、どこかの路地の古びたアパートに到着。
本当に住人がいるので静かにしないといけない。みんなでシーっっと言いながら路地に入り込む。
センサは二つの部屋で反応。一方は未来に、もう一方は過去に通じているみたいだ。
そして、きっと未来の方に妄想族がいる。
二手に分かれて探索することに。
私は、未来人妹、なつき、NASAと共に部屋に侵入。
そこは過去の世界だった。それも、なつきの過去。
まだ、なつきの家族がバラバラになっていなかった頃。
今日はお父さん(山本大樹さん/イッパイアンテナ)の誕生日。
母親(一川幸恵さん)はニンンクたっぷりのもやし炒めを作っている。
お姉さん(ぎぃ子さん)はちょっと小生意気な高校生。妹とはよく口ケンカをするみたいだ。
部屋は1DK。押入れを机代わりに勉強する姉。風呂は無く、近くの銭湯に行くみたいだ。
こんな家、早く出たいといつも言っている姉。きっと、この頃はなつきもそう思っていたのだろう。
未来を知る今のなつきは、この頃の貧しくとも幸せな日々に感傷に浸っている。
お姉さんからCDプレイヤーを二人で共同で購入しようなんてもちかけられている。
未来では、プレミアムがついて3億円ぐらいするらしい。ただ、メーカーによって違うみたいだが。
時代は変わるものだ。飲み物は鼻から飲むのが当たり前らしい。iPHONEはもうver4000を超えているらしい。
なつきはこの日のことをよく覚えている。
お父さんの誕生日。誕生日プレゼントを買っていなかった。
おばさんからもらったばかりの小遣いを無くしてしまったから。
そして、おめでとうの一言も言わないままだった。
お父さんが帰ってくる。
急に大きくなったなつきの姿、未来人のキテレツな恰好、NASAの意味不明な行動にも全く動じない、肝っ玉が据わったひょうきんな優しいお父さん。
そんなお父さんとあの日を取り戻すようにちょっとした会話し、言えなかった言葉を伝える。
40歳になるらしい。
今のなつきのお父さんは、もうすぐ50歳。10年遅れになるけど、来年誕生日プレゼントを渡そうかな。
とてもいい。なつきの表情が。4 1/2で拝見した時もサエコ役をされた小中太さんがそうだったが、ここの女優さんの色々な想いを秘めた優しい表情は最高に魅力的だ。
それを肝っ玉母さん、小生意気なお姉さん、楽しく大きな優しさを滲ませるお父さんたち家族の面々が、絶妙な味付けをされる。
と、感動している場合では無い。
隣の部屋ではかなりドタバタしている音が聞こえる。
恐らく、向うの部屋は未来に通じており、妄想族と戦っているはず。
じっくりと感傷に浸ることは許されず、部屋を追い出される。
隣の部屋にいた未来人の兄から報告。
やはり、向こうの部屋ではリリーの手下との緩い戦いがあったらしい。
何でも、侍はその手下の妄想ゴーレム(益山U☆Gさん)とやらを追って出て行ったとか。
そして、最も重要な情報。
妄想族のアジトが判明。
みんなでそこに向かう。
途中、本当に侍が妄想ゴーレムと真剣な戦いを路上で繰り広げていた。みんなでかなり遠巻きにそれを見守る。
アジトであるどこかの店に到着。
未来人の兄が適当な合言葉を言って、うまく潜入成功。
よかった、よかった。外でパトロール中の警官が見たりしてから。
中はカウンターだけの殺風景な場所。
いかにも潜伏しているって感じのアジトだ。
壁には、色々と貼り紙がしてあり、意味不明の言葉が書かれている。
いかがわしい塊のようなテンション高い支配人が登場。先ほどのお父さんそっくりだが、それは言うまい。味のある名演技を見せるなあと感動してたら、お得意のノリノリキャラに豹変だ。
彼の合図と共に、カウンターの下からガールズが登場。5人組の可愛らしい女の子たち。同じく、先ほどのお母さんやお姉さんが紛れているような気がするが。
何か、妄想ネタをしてくれるらしい。壁に貼られた紙はメニュー、つまりお題ということだ。
未来では妄想する力に乏しいので、こんな妄想遊びを楽しむ店が、今で言うガールーズバーみたいなところとして存在しているのだろう。そして、ピンサロの店内コールかのように、テンション高い支配人のような人も健在というわけだ。157年後の未来でも、変わらず残る物があるってことか。
可愛いお姉ちゃんと少し遊んだ後、未来人の兄が本題に入る。
すっかり、楽しいお姉ちゃんとの遊びで忘れてしまっていたが、ここに来た目的は、アジトに潜入してリリーの居場所を突き止めること、そしてその武器、妄想ガンを入手することだった。
妄想族の邪魔をする此花区の連中をやっつけると騙して、ガールズから妄想ガンを手に入れようとしたその時、思わぬ事態となる。
リリーとのバーチャルラインがつながる。
支配人とリリーが話をする。私たちの邪魔をする者が此花区をウロついている。
未来人2人、一般人2人、そして、NASA。
どう考えてもバレテしまった。
ガールズの手にする妄想ガンはこちらに向けられている。
絶体絶命。その時、ガールズのセンターの女性が予期せぬ行動を取る。
仲間のガールズ、支配人に向けて発砲。
彼女の名はタイガー・タイ(小中太さん)。妄想族を倒すために組織されたレジスタンスのリーダー。
つまりは、こちら側の味方だったのだ。
危機は去ったが、依然リリーの場所は突き止められない。
NASAの作ったタイムマシンの場所にいるはず。きっと兄のヒューストンもそこに監禁されているはずだ。
NASAからそれを聞き出す。でも、兄に連れて行ってもらっていたので分からないらしい。隠しているとかではなく、本当に分からないみたいだ。
行き詰ったところ、あることに気づく。
先ほどのリリーとのバーチャルライン。
その映像を解析。犬の鳴き声が入っている。
この犬の鳴き声はケルベロス。NASAの知っている犬。
その家の近くにいるはず。
急いでそこに向かう。
急がないと。もう1時間30分以上経過している。終演時間が迫っているから。
ずいぶんと街中を通って移動。
交通量も激しくなり、車という敵の刺客も増えてくる。
タイガー・タイはさすがは数々の修羅場を乗り越えたレジスタンスリーダーだけあって厳しい。歩道を外れて膨らんで歩こうものなら、銃を突きつけ厳しく注意を受ける。頼もしく、かつかっこいい姿に惚れ惚れしながら進む。
此花区のタコヤキ屋さんとか住民の方々はとても好意的だ。一緒になって、このお遊びに付き合ってくれている。
でも、そりゃあそうだろう。あなたたちを守るためのアドベンチャーなのだから。
シャッターの閉まったガレージのあるビルに到着。
鍵は閉まっているが、タイガー・タイが銃で粉砕。いちいち、かっこいい人だ。
中に入ると、いかにもNASAのような奇才が作ったっぽい不思議なオブジェ。これがタイムマシンなのだろう。
いよいよ最終決戦だ。
これまでの登場人物が一同に集結。
リリーの手によって洗脳された此花区住民たち。
上杉と弥一郎の恋。リリー、上杉、弥一郎の思わぬ関係。
ヒューストンの経営する店の厳しい経済事情。
子供のようになってしまった妄想ゴーレム。
何やらタイムマシンを作動させるNASA兄弟。
さらにはるか未来から現れた謎の男(益山貴司さん)。
爆発しそうな勢いでのドタバタが繰り広げられて、それはもう疲れ切ったかのように自然に収束していき、大団円を迎える。
何はともあれ、此花区は守られ、未来の日本は救われた。
そして、未来や過去から来た人たちは自分たちの世界へと帰っていく。
リリーは改心して、また新しい道を未来で歩むだろう。
NASA兄弟はこれからも数々の発明をして、未来に貢献するはず。
上杉の元タバコ屋もきっと取り壊さなくてよくなるだろう。弥一郎が過去に戻って埋蔵金をどこかに埋めてくれるはずだ。
なつきも自分の今いるべき場所、東京に戻る。きっと心配はいらない。いつでも帰って来れる大切な場所が守られたので、向こうでも心機一転頑張ることだろう。
そして、私たち客は、約2時間半程度のアドベンチャーだったが、何かもう一日中一緒に過ごしているかのような感覚になるこの濃厚な空間から、ようやく解放される。
全てが丸くおさまった最高に幸せな一日。
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コメント
こんにちは!
感想文の長さが楽しさを表していますね♪
刺激的なアドベンチャーでした!
投稿: TAKU | 2013年4月 3日 (水) 09時16分
>TAKUさん
お疲れ様です。
うん、何かレポ調に書いているうちに、めちゃくちゃ長くなってしまった。
濃厚な時間だったから、そうなるのも分かるでしょ。
久しぶりに純粋にワクワクさせてもらえましたわ。
ステタイ公演もいらっしゃったんですね。
なかなか、お会いできないですなあ。
投稿: SAISEI | 2013年4月 3日 (水) 11時09分