« ランドる【837B】130210 | トップページ | ごんべい【ゲキバカ】130211 »

2013年2月11日 (月)

ワタシのジダイ ~昭和生まれ編~【南船北馬】

2013年02月11日 ウィングフィールド

何と斬新な演出。
今年でもう観劇5年生ですが、こういった新しいものが見られるから、まだまだ観劇は辞められない。

50~70歳代の7人の男性、女性、いわゆる昭和生まれの方々とともに、一緒になって人生の選択を考えていく画期的に面白い舞台。

(以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は火曜日まで)

舞台は、ちょうど昨日拝見した妄想プロデュースと同じ設計。
通路のような舞台の両側を客席で挟みます。

終活を考え始めるぐらいの54歳から77歳までの男性と女性、合わせて7人が登場人物。
役者さんは蟷螂襲さん(PM/飛ぶ教室)はお馴染みですが、後の方は全員公募みたい。
だから初舞台の方もいらっしゃったようです。
そんな7人が、迷路みたいな催しに参加します。

ルールは二者択一の質問が表示されるので、どちらかの道をを選んで進んでいきます。
ただし、全員の意見が一致することが条件。
もし、選択した道で、また分岐点に戻ってきてしまったら、今度は選択肢が一つ増えてしまいます。

私は今、41歳。皆さん、人生の先輩、いや大先輩クラスもいらっしゃいます。
会社の上司、両親、ちょっと若い頃の祖父母とだいたい一致。
そんな方々の人生経験を踏まえながら、一緒に時代というものを考え、流れゆく時間を生きてきた自分、そしてやがては皆と同じように死を迎える自分を見つめなおすような時間を共有するといった感じです。

最初の方は、具体的な質問がどんどん提示されます。
東京オリンピックを開催する or しない。もちろん、する。これは、今も話題ですが、昭和の東京オリンピックという歴史的なイベントがこの世代は大きいみたいですね。
エネルギーはどんどん増やす or 節電。増やす。えっ。今の時代では、そう言うとダメな風潮なのに。高度経済成長期を支えた人たちならではの考えでしょうか。
国際連合に加盟する or しない。する。まあ、普通そうでしょうが、やはり第二次世界大戦の悲劇を繰り返さないという人生経験に基づいた深い回答のように感じます。最年長の方は戦争経験者ですし、戦後の時代を生きて、より戦争を身近に感じることが出来るのかもしれません。

そのうち、概念的な質問になってきます。
人を騙して生きるか or 騙されて生きるか。
筋を通して生きたい。だから、騙すのは嫌だ。でも、騙されることが絶対嫌。だから、騙す方を選択する。騙すことで、子供を救えるなら。それなら、私は騙す。
色々な意見が飛び交います。
もう、騙されたくない。そんな質問に絡んだ人生経験を踏まえて答えた方が、当時を思い出します。そして、12年後の自分に宛てた手紙を読む。読み終えると、思い出の曲を歌う。
以後、質問のたびに、これの繰り返しで話は進みます。
多分、本当に実体験に基づいたエピソードなのでしょう。手紙も本当に自分で書かれているみたいだし、歌も当時を偲ぶように丁寧に歌われます。
この姿が、生の本物の声を聞いているようで、生きることの深み、今、自分が生きているまでに流れた時代を感じさせ、心が震えます。
私は騙して生きようと思っていますが、実際は騙されることの方が多いかな。

求められることをする or 自分がしたいことをする。
これは時代が変わっても、いつでも人を悩ますことかもしれませんね。
したくなくても求められたからしないといけないこともあるでしょう。それが、新たな自分を創り出す時もあれば、その後も悔しい、自分がしたいことを意地でもすればよかったなんて悔いを残すかもしれません。
逆になんであの時、求められたのに自分のしたいようにしてしまったのだろうなんて悔いもあるかもしれません。
歳を重ねれば、重ねるほど、そんなことが増えるように感じます。
私は、求められることをしたい。きっとそれは自分がしたいことと同じかもと思っています。

溺れた娘を助ける or 孫を助ける。
これは、子供がいない私には想像しにくい質問です。
発想を変えて、夫と子供ではと言うと、子供と即答する女性陣なんかを見てクスリ。
男性陣は妻と答える人が多かった。娘がいる人は、娘はその旦那が助ければいいなんてユーモアある回答も。
セリフなのか本音で喋っているのか分からないくらいに、真摯に取り組む舞台の役者さん方にだんだん引きつけられて、面白くなってきます。
私はどうかな。直感的には孫かなあ。娘を助けたら、後でどうして孫を助けなかったのかと生き地獄になるような気がする。

子供か孫の命 or 血の繋がらない10人の子供の命。
血というのがポイントですかね。
血のつながりが薄れたとか、今は言いますものね。
古き時代はそれをもっと大切にしていたように聞きます。
でも、この質問に対する皆さんの議論を聞いていると、血のつながりを大切にする中で、同時に普遍的なつながりも大事にしていたという印象を受けました。
きっと人を大切に想えるので、その命を尊く感じれるのでしょう。
私は、・・・
分かりません。
子供か孫の命でしょうが、もし、その命を捨てることで、見知らぬ10人が救われるなら苦渋の選択をする可能性は0ではないような気がします。

成功率の低い手術を受ける or 受けない。
この質問の議論に、自分の命が助かる助からないよりも、家族への経済的な負担や介護の問題などを絡めていたのが印象的でした。
家族のつながりが深い時代なのか、歳を取ると周囲があっての自分という考えがより強く芽生えるのか。
私は受けます。費用がありえないくらいのものならば、別かもしれませんが。
生への執着はさほど強くないつもりですが、可能性を消すことは嫌な気がします。

迷子になる人生 or ならない人生。
質問の意図がよく分からず、議論を見守っていました。
ならない人生を選んだ7人は、分岐点に戻ります。
ルールどおり、選択肢に迷子に気付かない人生という項目が増えています。
これまでがずっと迷子だったということでしょうか。
二択とは限りませんが、選択の繰り返しで絶えず迷って生きてきた。それが生きることなのかもしれません。
人生とは迷い人の時間の流れみたいな感じでしょうかね。その終わりはきっと生きますか or 死にますか。
そんなことを感じました。

分岐点をクリアした7人には、まだ質問が続きます。
どんな時代を自分たちは生きてきたのだろうか。そんなことを、質問に回答する中で見つめなおした7人の先は、まだ生きるという道が開かれています。
そして、時代が変わろうと何だろうと、人の使命である死ぬことにたどり着くまで、いつまでも数々の道を歩んでいくのでしょう。

人生の先輩方の生き様。自分自身を演じるその姿は、力強く、味わい深い魅力的なものでした。
時代やら、価値観やら色々なことがあるけど、結局、いつどんな時も前を見れば、そこには生きる中での選択肢がある。
その選択が終わるまで、人はずっと未来へと向かっているような感覚にとても勇気づけられました。

|

« ランドる【837B】130210 | トップページ | ごんべい【ゲキバカ】130211 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ワタシのジダイ ~昭和生まれ編~【南船北馬】:

« ランドる【837B】130210 | トップページ | ごんべい【ゲキバカ】130211 »