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2013年2月 1日 (金)

in her twenties 2013【トープレ】130131

2013年01月31日 芸術創造館

20歳から29歳までの各年齢の女性を、それぞれ一人の女優さんが演じるという独特の手法。
女性にとっては人生において、特にとても大事な時期だったりするのかな。そんな時期の現実を振り返りながら、あの頃より自分はどうなったのだろう、年を経た自分は若かりし頃の自分からどう映るのだろうと自分を見つめ直していくような物語。
時を越えて、自分へメッセージを送るような形で話は繋がれていく。

ただ、それで何かが見えるのかというと、それははっきりした形では伝わってこなかった。
本当に一人の女性の20代が描かれただけである。
斬新な手法で描かれる淡々とした女性の人生の一時を楽しめばいいのかもしれないが。

行き着いた先は、色々とつらい恋愛遍歴があったり、音楽という大切な夢をあきらめたりとしながらも、頑張ってきた自分。そして、そんな自分の傍にいてくれた、母や友人、一生、大切に想いたい人の存在。
そんな女性の人生の一時は微笑ましく温かいものであるようには感じるのだが・・・

舞台中央に円形の緑色の絨毯。その上にベッドのようなフワフワの茶色いソファー。
それを囲むように20~29歳の各女性が座る椅子が順番に半円形に並べられる。
始点と終点になる20歳と29歳は背もたれがついたパイプ椅子。他は箱のようなもの。
29歳の女性が、インタビューに答えるような形で過去を振り返っていく。同時に20歳のまだ見ぬ未来を持った女性も、同様にインタビューに答えるような形で、これからの人生への抱負を語っている。

音大生の女性、20歳。
トランペットをしている。将来はどこかの楽団に入るつもり。
留学もしたい。大学院にも行くつもりだ。もちろん恋愛もするつもり。

女性はごく普通に音楽の勉強をして恋愛をする学生生活を過ごす。その中で、付き合った男と別れたり、留学の推薦が他の人に負けてしまったりして挫折も味わう。
大学院に行く。彼氏は海外留学。遠距離恋愛の果てにその恋は終止符を告げる。
大学院を辞めて、傷心の一人旅。
ちょっと自暴自棄になったのか、アバンチュールな時を過ごす24歳。

ルームシェアを始める。ちょっと同居人といい感じになったりする。
実家に戻れば、しばらく父は帰っていないらしい。離婚。
飼い犬も、年老いてきたのかすっかり元気がなくなってしまった。

会社に勤め始める。
不倫。
そういえば、学生時代の友人も歯医者と不倫してたっけ。久しぶりに会うと、甘えが出てしまうのか大喧嘩。
もう二度と会うかと思ってたけど、誕生日にはメールをくれる。大切な親友。

もう会えません。不倫に区切りをつけた。
仕事は順調で、色々と任せてもらえるようになった。後輩社員も入ってくる。
もしかしたら、この子のこと好きかも。

頑張りすぎたのか、病気になってしまった28歳。
入院費用が厳しいから母親にお願いする。
決して裕福な家庭ではなかった。大学院も辞めてしまって学費を無駄にしちゃったし、今、またこんな形で苦労かけてしまった。

明日、誕生日を迎える。20代とお別れ。
29歳。
飼い犬も死んじゃった。友人は結婚した。スピーチで感謝の気持ちを自分の言葉で伝えた。
電話がかかってくる。一番、大切に想っていた男性。
うん。会いに行ってもいいんじゃないかな。

雑談するかのように女優さん方が語る中で、各年齢の出来事が浮かび上がっていく仕組み。
各年齢のシーンをうまく交錯させて描いたりする緻密に計算されたところも。

20代。
まあ、30でも40でもそうだとは思うのだが、女性にとってはヒロインである時期だったりするのだろうか。
主人公、自分という形で一つの物語が形成される。

アンチエイジングみたいな研究をしたりしているので、仕事柄、歳をとることが悪いことみたいに言われる方がいらっしゃるのだが、やはりこれは誤っているように思うな。
歳をとるというか、重ねるという考えだろうか。
ズラリと並んだ女優さんは、歳を経るごとにどんどん積み重なって見えてくる。これが人の成長みたいなものではないだろうか。

当然だが、歳を経た自分は、それまでの自分を知っている。若い人は、まだ見ぬ未来なので何が起こったのかを知らない。
そんなもの同士が会話しているので、シーンによっては、起こったこと、結果を知っている人と知らない若い人たちの間に微妙な隔たりが感じられたりして面白かったりする。

緑色の絨毯、茶色いソファーの色の組み合わせが分からないなあ。
それに半円形。
私の感覚では、20代はがむしゃらで一瞬だから直線のようなイメージがある。
半円形で丸みを持たす。もしかしたら、また若かりし頃に戻るようなサークルを感じさせる舞台設計はどういうことなのだろうか。
人生やり直しきかないなんてことじゃなくて、いつでもあの頃に戻っていくことは出来るんですよみたいなことを伝えているのだろうか。

非常に工夫された趣向で、作品自体はとても面白い。
そこに、もっと強いメッセージが感じられたらもっと良かった。自分の人生と照らし合わせての単なる一部の共感だけでは物足りない。

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