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2013年1月19日 (土)

短編集:几帳面独白道化師 A stage【バンタムクラスステージ】130119

2013年01月19日 十三 BlackBoxx

B stageに引き続き観劇。
こちらは、この劇団色が強い感じになっている。
緊迫感に長けて、力強い濃い見応えのある作品が揃っている。

(以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで)

B stage同様、簡単なあらすじ、感想を役者さんの見どころと共に。

・几帳面独白道化師

昨年の中之島 春の文化祭での再演
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/2012abc4120504-.html

私の中ではやや苦手の作品だが、二回目だけあって、少しはストーリーが頭に入っているので、観やすさはあった。
でも、朗読形式に抵抗があるのか、どうも舞台への食いつきの悪さは否めない。
男を処刑しようとする男、丈太郎さん。自分で語り、自分で追い詰められていく自作自演のような、滑稽な哀れな姿に映る。
監禁される男、上杉逸平さん(プロダクションイズム)。計算高く練られた筋書きで相手を追い詰める。作品中の恐ろしいノートすら手玉にとってしまうかのような恐ろしい何かを秘めた男を見せる。
市警、緒方ちかさん。B stageの作品と同じく、登場してすぐに人を射殺する。ある意味で、一番怖い役か。ノートにとり憑かれたような二面性を見せた姿を演じるが、ノートが描いた筋書きを演じる役者といった感じなのだろうか。いまひとつ、深く入り込めないところがある。

・チェーホフの銃

ある作家が描く作品。
殺さないでくれ。兄貴を説得してくれ。弟に懇願する男。
兄貴が現れて、弟に問う。キヨタという日本人を知っているか。知らないというなら、この男を撃て。
待ってくれ、兄貴。俺たちは兄弟じゃないか。一体、どうしたというんだ。
うるさい、早くしろ。銃を弟に突きつける。
弟は苦悩しながら、銃を取り出し、男に向ける。
やめろ、助けてくれ。
早くしろ。
怒声が響く中、弟は引き金を引く。
カチャ。あれっ。カチャ、カチャ・・・

おいおい、どうなってるんだ、この脚本は。
また、あいつが書き換えたのか。
作家の男はひものような生活をしている。夜に脚本を書く。
夜の仕事をさせて食べさせてもらっている女が帰ってくる。自分が寝ている間に女は脚本を書き換える。
女は、男に人を殺すような作品を書いて欲しくない。
夜の仕事、今の生活、これからのこと・・・、いっぱいある不安がそんな思いにさせるのか、そんな人を殺すようなことはリアルの世界だけで十分。虚構の世界ではもっと希望に溢れていて欲しいと思っているみたい。
例えば、キャンディーを食べて、みんなが仲直りして世界が平和でありますようになんてオチとなる話。
男はそんなもの書きたくない。それでも、女に書き換えられる。
そんな日が続く。
作品はいつまで経っても完成しない。銃はいつまでも不発。男もいつまでも死ねなくて困っている。

チェーホフの銃。
作品中に出てくる小道具は必ず後で然るべき機能を発揮させるようにしなくてはいけないという当たり前の文学的技法。
そんな理論で対抗するが女には通じない。
男はこれを最後に作家を辞めて仕事をする。だから、この作品だけは自分の好きなようにとお願いするがそれすら聞き入れられない。
男は覚悟する。分かった。明日の晩を楽しみにしておけ。

女は帰ってきて、作家のパソコンを開ける。

殺さないでくれ。兄貴を説得してくれ。弟に懇願する男。
兄貴が現れて、弟に問う。キヨタという日本人を知っているか。知らないというなら、この男を撃て。
待ってくれ、兄貴。俺たちは兄弟じゃないか。一体、どうしたというんだ。
うるさい、早くしろ。銃を弟に突きつける。
弟は苦悩しながら、銃を取り出し、男に向ける。
やめろ、助けてくれ。
撃てない。自分には撃てない。
おもむろに懐から何かを取り出す男。
ドッキリ。これはドッキリでした。大笑いする兄貴と男。腰を抜かして脱力する弟。
こうなると思ってた。お前を信じてたよ。お前はやはりいい男だ。
さあ、久しぶりにみんなで飲みに行こう。

安心してパソコンの前で寝る女。
作家の男がやって来る。手には銃。女に向けて・・・

この劇団の洗礼者の接吻の一シーンを用いた劇中劇。
作家の福谷圭祐さん(匿名劇壇)のお得意とするメタフィクション。そして、自分の作家としての本質も露骨にあらわにするような自虐的な要素も盛り込んでいるみたいだ。
女の話す、虚構では平和に、人殺しなんてリアルな世界で十分という言葉どおりに実行してしまっているブラックさが面白い。
自分が寝ている間に作品は書き換えられる。その間、起きている女を寝させないと、犯行は実現しない。そのためには、自分の考えとは反する偽りの虚構を描かないといけない。
よく練られた犯行計画が、いかにも作家が起こしそうな感じで恐ろしさを感じる。
淡々としながらも、ブレない強い意思を醸す女、松原由希子さん(匿名劇壇)。この雰囲気が、こうするしか、他に道は無かったことを明確に思わせている。
兄貴、木下聖浩さん。男、徳永健治さん。弟、福地教光さん。
三文芝居を真剣にコミカルに演じる姿に笑いが止まらない。
こんな劇中劇でも迫力ある姿の木下さん。顔を覆われていて表情は見えないのに、なかなか殺されることなく、困った雰囲気を出す徳永さん。これまた、苦悩を押し出した最高の演技なのに、間の抜けたところを見せて笑いを誘う福地さん。
脚本の妙、劇中劇の面白さと見事なプロらしい作品。

・ジャガーノート

昨年のLINX'S04 A teamでの再演
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/linxs-04a-eamli.html

しっかり覚えているわけではないのだが、多分、この時とはだいぶ違った感じになっている。
この時の冷徹な殺し屋と、後からやって来る男が逆になっているのかな。
今回は殺し屋が、冷徹というか、少し感情的な要素が見られ、逆に何かの拍子で発砲してしまうのではないかという緊張感が生まれている感じ。反面、後から来た男は冷静で、場をうまくまとめそうな雰囲気を漂わせる。
数々の男を手玉にとって遊ぶボスの愛人の女性は、少し力強さがある。小野愛寿香さん(ステージタイガー/i_garden)。一瞬、すごく綺麗に化けられていて、誰か分からなかった。以前は、不自由ない生活をしていても、常に誰かに依存して生きてきた印象だったが、今回は一人で生きて死んでいけそうなくらいの覚悟を持った姿に映る。
その女と不貞を働き、殺されそうになっていた男、泉寛介さん(baghdad cafe')。若さ溢れるというかは、真摯に愛する。これもちょっと違うかな。少し、執着心の強い狂気的な感じを見せている。自暴自棄になっている感じで、若い人の無茶をしているが前を向いている姿というより、破滅に向かって進んでいるような憐れさが漂う。

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