さよなら父さん【演劇集団あしたかぜ】130128
2013年01月28日 シアトリカル應典院
作品としての感想はちょうどうまい具合に作品中の俳優役の方が言ってくれたかな。
観終えて、羨ましいなとすぐに思った。
もう語ることも出来なくなってしまった大切な人。
そんな人を想う時、自分は自分の頭の中でしか甦らせてあげられない。
でも、創造することの出来る表現者は、それをこういった作品として創り上げ、その中で記憶をたどっていける。
舞台で父さんとまた出会えただろうか。
舞台で浮き上がる父さんときちんとさよならを言えて、歩んでいく決意が出来たのだろうか。
作品の中で父さんともう一度向き合い、その結果がありがとうという言葉と笑顔で前へ歩もうとする姿ならば、それは喜ばしいことだ。
観劇後の拍手はそんなエールとして受け取って欲しい。
脚本を書く作家。
傍にはちょっと理屈っぽいけど、自分のことを真摯に想ってくれている彼氏がいる。
不機嫌だったりするから、嫌なことを言ってしまう時があるけど、いつもありがとうと思ってる。
成人式を迎えるまりこ。
久しぶりに帰って来た父の住む家で、母親に着付けをしてもらう。
母親は自分のことのように楽しそうだ。
部屋はずいぶんと散らかっている。
父もいる。
しばらく会っていないので、何となく会話もぎごちないけど。
成人式に向かう。母親の車で。
父が何か言っている。ちょっと気になるが、家を出発した。
ある日、父が死んだ。自殺だった。
借金苦。学費の負担も大きかったらしい。
葬式。
おじさんやおばさんと語る。
父のこと。
あの時、父は何を想っていたのだろう。
作家は、脚本を執筆し、出来上がる作品の中、父を探す。
作家が脚本を執筆。
その中で作家自身の成人式、父の葬式が描かれる。
演劇らしく、シーンを交錯させながらの展開。私が私を描いた作品を私が創る。
実話なのか、脚色してるけど一つの体験から創り上げられた話なのか、完全なるフィクションなのかは知らないが、言葉が飾らない、心の底から出てきているようには感じる。
私のことを描いた作品であることは確かだろう。
家族がバラバラになっていく不安、苦しい生活へのイラダチや弱音、大きく育った娘への無垢な喜び・・・
父が思っていただろう色々なことが、今になって浮き上がっているみたい。
それは自戒でもあるのかもしれませんが、慈しみや感謝を強く感じさせるものでもあります。
自分を見守ってくれた人への感謝、それに応えようとする強い意志。
そんな人の優しい気持ちを知る人はきっと、同じように人を優しく想いながら生きていけるのだろうと思います。
ありがとうの気持ちが真摯に込められた素敵な作品だと感じます。
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