【舞台版】絶体絶命都市 -世界の終わりとボーイミーツガール-【劇団エリザベス】130121
2013年01月21日 インディペンデントシアター1st
原作となるゲームを知らないことがあるからだろうか。
話としては、ついていけないというか、少々、破たんしてしまっている感覚はぬぐえない。
ただ、この作品名のように絶体絶命に陥った都市において、ほんの一時だけ生まれた小さな恋愛が世界を救い、一人の男、そして周りの人たちの生きるということに救いをもたらしたことは綺麗に描かれているように感じる。
光り輝く姿を見せる役者さん方が印象的であった。
舞台は地震で崩壊してしまった都市。
主人公の僕は、引きこもりの少年。
崩壊した街で、春というやたらテンションの高い女の子と出会う。
これは後ほど分かることなのだが、彼女は病気で体が弱い。だから、外の世界には出たことがあまり無かったみたいだ。
恐らくは一緒に入院していたのか、唯一の友達であったおじいさんを探している。
僕はそんな春と避難所の学校に向かうべく、行動を共にする。
途中、ある殺人犯の女性を捜索する刑事と出会う。
この地震に乗じて脱獄したらしい。
女性は、姉が何らかの重大な秘密を知ってしまったような手紙を受け取り、姉のマンションを訪ねた。
そこでは、もう姉は殺されてしまっていた。
その場に黒服の男がいたが、行方をくらます。
踏み込んできた刑事に殺人容疑を掛けられている。
逃げ回っていた女性だが、刑事に捕まり、撃たれそうになる。
そこに、身を呈して、彼女をかばい助けようとする男。
後に分かるが美人市長の秘書である。
女性は秘書にちょっとだけ恋心を抱き、共に行動することになる。
一方、数日間、飲まず食わずだったのか彷徨う女子高生。
倒れたところを風俗ライターを名乗る男に助けられる。
これも後に分かるが、女子高生は美人市長を殺そうとしていたみたいだ。
女子高生の兄は、美人市長と付き合っており、市長の不倫疑惑に関わり自殺に追い込まれている。
殺されたも同然だと、女子高生は復讐を企てようとしていたようだ。
風俗ライターは女子高生と共に行動する。
記憶を無くしてしまっている白衣を着た男。
色々な人の出会う中で徐々に記憶を取り戻していく。
僕と春。秘書と脱獄犯の女性。ライターと女子高生。
それぞれのボーイミーツガールということだろうか。
各組の出来事を時系列をずらして描きながら、この都市に起こっていること、起きようとしてることを明らかにしていく。
実は混乱して、いまひとつ分かっていない。
覚えている限りのことをつなぎ合わすとこうだ。
美人市長はこの地震に乗じて、世界を崩壊させようとしている。
その手段は殺人ウィルス。その研究をある男にさせていた。この男、ライターの兄になるみたい。
記憶喪失の白衣の男は、その開発に関わっていたようだ。
そのため、記憶を取り戻し、殺人ウィルスの入った容器を探し当てている。
脱獄犯の女性の姉は何らかの理由でその情報を知ってしまったのか。美人市長を愛する黒服の男によって始末される。そして、その知られるとまずい情報が入ったCDを入手する。
しかし、そのCDを奪いにやって来たのが秘書。この秘書、実はゲイで、美人市長と付き合っていた男、つまり女子高生の兄のことが好きだった。そのため、彼を自殺に追いやった市長を陥れようとしている。
女性に近づいたのもそれが理由みたいだ。
殺人ウィルスは太陽の光に弱い。
だから、開けてすぐに太陽に当てれば世界は救われる。
でも、開けた瞬間は少しだけ漏れるので、その開けた人だけは感染して死ぬ。
その犠牲者を名乗り出たのが、春。
彼女はもう長くない。もともと、外で長くは生きることが出来ない体。
僕に生き続けて欲しいと願いを託し、春は箱を開ける。
とこんな感じだったように思うのだが、色々なところが理解し難いところがたくさん。
美人市長の目的、女性の姉が何で情報を知ったのか、なぜ、殺人ウィルスの箱を開けないといけないのか・・・
読み取れていないところもあるだろうが、凝縮させ過ぎて、少々、元々はしょり過ぎているところもあるのではないだろうか。
ゲームを題材にしているので、ある程度のご都合主義は良しとしても、演劇作品としては、もう少し設定に納得感を持たせて欲しいという気持ちは否めない。
調べるとこれは有名な脱出ゲームらしい。
ただ、その緊迫感はあまり無い。
むしろ、じっくりと話を積み上げ、登場人物の心情もじわじわと感じさせている印象を受ける。切迫した地震により崩壊する都市からの脱出というより、後述するが僕が今の自分の世界から脱出する過程を描いている感が大きい。
話は、ライター、女子高生、秘書、脱獄犯の女性が、生死の間という絶体絶命な状態にいて、なぜこんなことになったのか、地震があったからなのかと、思い出していく形で展開していく。
その中で、上記したような事実が浮き上がり、自分たちは一人の女性によって救われた。生きている、ということを理解する。
ぼかした話が紐解かれていき、一つの事実を明らかにするという形だが、各登場人物の背景は不明瞭なことも多い。
そんな世界が終わるという状態で、外の世界を拒絶してきた僕と外の世界へ行くことが病気で出来なかった少女が出会い、ほんの一時、互いに分かり合い、支え合うような恋愛を描いている感じである。
特殊な設定の中での、恋愛を通じた僕の成長物語、引きこもりという閉鎖空間からの脱却といったところか。
舞台は、真ん中に台座があり、その周囲を4つの椅子が囲む。
椅子には上述した4人が座り、その世界とも言える台座を見つめながら語り合っている。
台座には最初、僕が寝そべっている。ここが閉鎖された空間を意味するなら、出会った春のおかげで、最後にそこから僕が脱出して前へと歩みを進めるような明確な希望を感じさせる表現が欲しい気もする。
まあ、最後はこの台座で僕はこれからのことを熱く語っているので、この世界をもう一度創り上げていく、そこに春という存在があったという証のように小さな桜を散らしているところがそれを意味しているのだろう。
椅子は作品中のセリフでもあったつなぐことを意味したメタファーだろうか。
新たな命を椅子の主につないでいく。世界は終わらない。その椅子に一時でも座った人の想いを残して、新たに生まれ来る命の住処となるといった感じか。
僕、須山造さん。外の世界を拒絶していたからか、純粋でとても可愛らしく幼い印象を受ける。ただ、最後は、春との出会いにより、変わった僕を演じる。自分をきちんと見つめ、生きる世界もしっかりと見据えていくという成長した頼もしさを醸す。とても味のある名演技だった。
春、安田友加さん。なんかティンカーベルをイメージさせる天真爛漫な可愛らしさに、空を飛んでいるような純粋で夢のある姿だった。この終わりを迎えようとしている都市に一時だけ舞い降りて、世界を救ったという事実からは、そんな女神や妖精の印象で間違っては無いだろう。
切なさを残し、それでも生きることの大切さを希望に溢れた形で綺麗に描いている作品でした。
原作ゲームの世界観、というか設定をもう少し勉強して臨めば、もっと心打たれたかもしれません。
それでも、観終えて気持ちがいい爽やかな作品だと思います。
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