よる【小人中毒】130105
2013年01月05日 STAGE+PLUS
今年初観劇はここから。
女性お二人の会話劇。
少しブラックジョークを効かしたコミカルな作品と、女性の奥深い恐さを描いた強烈な闇の作品のオムニバス。
新年早々、異色な公演に足を運んでしまった・・・
(以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は明日、日曜日まで)
・13番の夜
ある日、女性が帰ってくると、一人の女が部屋にいる。
普通にビールを飲んで、おかきを食べてリラックス。
何者なのか聞いても、よく分からない。気がおかしいのだろうか。
警察に電話しようとするけど、止められる。他の人には見えないから。
自分は妖精。
興奮する女性。幼き頃から、ずっとそんな妖精がいればと思っていた。会えて光栄。
妖精のことを色々と聞き出す。名前は、好きな食べ物は、どれくらい生きるのか、死んだりするのか。
妖精は先月からずっと女性の願いを叶えていたという。
洗い物、洗濯、納品リストのチェック。確かにやってある。
実家に電話。長話されたけど代わりに親孝行しておいた。
同窓会にも出席。言い寄ってくる男がいたので、家の住所を教えておいた。だから、今日来る。
その男、女性の高校時代のあこがれの男。ドアチャイムが鳴る。慌てて向かう。
そこには、無残にもハゲた・・・
何かいらないこともたくさんしているみたいだ。
大丈夫だろうか。確かに願ったことではあるのだが。
聞き出すと、嫌いな後輩や部長を・・・
こいつは妖精じゃない。悪魔だ。
さっき教えてもらった妖精の殺し方を使って、妖精を殺める。
妖精の持っていたカバンをチェック。
サキイカが入っている。ビール好きだと言っていたからつまみにでもするのか。
口にする女性。
毒が入っていたのか。苦しみもがき倒れる女性。
起き上がる妖精。
これで、あの人からの願いを叶える一仕事終了。
童話、こびとのくつやを想像してたら、思いっきり、人の闇を描いた作品だった。
同時に、忌み数、13を用いて死刑執行の夜となるシャレた作品名である。
小悪魔の様相を醸す山本瑛子さんに、好きなように翻弄されて悲しい結末を迎える女性、兎桃さん。
ブラックなオチながら、楽しい作品だった。
・魔女の夜
深夜二時過ぎに一人の女性がアパートの部屋を訪ねてくる。
自分がマネージャーを務めている女優。
どうして。ここは知らないはずなのに。
見ると手を怪我している。しかも酔っぱらっているみたいだ。
何かまたしでかしたのでは。大事な時期なのに。
不安が頭をよぎるが、女はあっけらかんと酒を飲み出したりする。
女優が告白する。
事故を起こした。男も同乗しており、その男は血まみれのまま放置してあると。
マネージャーは救急車を呼ぼうとするが、運転していたのは自分だという女優の一言でためらう。
マネージャーは、この女優と共にずっと頑張ってきており、今の地位を築いた。
あなたにとって全てである私が、この事故で落ちてしまえばどうなるの。
そう女優は脅してくる。
だから、身代わりになれと。
錯乱するマネージャーは、真相を確認しようと男に電話する。マネージャーは男と付き合っていたみたいだ。
もしかしたら、これは女優が自分を試しているゲームかもしれない。
出ない。着信音は女優のカバンの中から。自分の携帯が事故で壊れたので奪い取ってきたらしい。
もはや、事故は疑いようがない。
さあ、どうするのと言わんばかりの顔をした女優にマネージャーは語り出す。
私は身代わりにはならない。落ちるのはあなただけ。
もう、私はあなたを全てだと思っていない。
それは、あなたが昔、私に言ったたった一言。この人、見栄っ張りだからという言葉。
その時から、私はあなたの単なるマネージャーであるだけで、昔みたいに運命を共にして生きようとなんか全く思っていない。
そして、あなたはここをどこだと思っているの。
ここは、あの男の部屋。愛人と会うために用意された部屋なのだと。
何でそんな一言で私は嫌われないといけないのか。
内面をさらけ出しあってしまった二人が部屋でたたずむ。
電話がかかる。マネージャーが取る・・・
緊張感たっぷり、スリルを感じながら、サスペンス調に進む話を見守る。
醜悪な姿をさらした会話劇で、恐いと同時にその大き過ぎる嫉妬や猜疑心に気分が滅入ってくる。
なかなか、本心をさらけ出さず、核心に至らない心理戦の様相がもどかしい。
女優として成功を収めはしたが、もはや道具のようにしか自分を思えなくなった不安感があったのだろうか。事故を故意に起こしたのかまでは分からないが、マネージャーに救いを求めるかのように、愛情を試したのは本当のところだろう。
その結果は、もうだいぶ前から漠然と感じていた愛されていないことの確認と、その不条理な理由が分かっただけという訳だ。
まだ、駆け出しの頃の二人のコンビを想像すると、どこかで歯車が狂って、行き詰った成れの果てといった感じだろうか。
作品名の魔女。
女優への愛を無くしていながらも、平然と彼女の活躍の恩恵を被っていたマネージャーが魔女なのだろうか。
それとも、自分の存在意義の確認のために狂気的な言動をする女優だろうか。
私は、これ、作品名が違うのではと思う。魔女のではなく、魔女たちのではないか。
結局、この後、犠牲になるのは同乗していた男だけのような気がする。力ある大きな事務所にいる二人だ。話の中で、男は大きな事務所に入りたいから二人に近づいているだけだということも言及されている。だったら、こんな男、消してしまうのはたやすいことではないか。
二人はもう昔のような関係には二度と戻れないだろう。だからといって、人生を終えるわけにはいかない。何も無かったかのように、これからも互いに自分のことだけ思って生きていくに違いない。
この作品の話の後、二人はそんな工作を行う夜を過ごし、何も無かったかのような朝を迎える。そんな夜なのではないかと思う。
女優が兎桃さん。マネージャーが山本瑛子さん。
キャストを入れ替えるバージョンも上演されるらしい。
二人の関係が丁寧に描かれ、その蓄積する互いの心情が見えてくる。
作品中に使われている優位という言葉。会話の中でそのバランスが崩れていくところに惹き込まれたように思う。
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