« 本日は『招かれざる客』を即興で演じます。【近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻22期ドラマコミュニケーション演習授業公演】130111 | トップページ | キリンの8割、わたしの2割【ATLAS】130112 »

2013年1月12日 (土)

明日放る【劇団うんこなまず】130112

2013年01月12日 AManTo天然芸術研究所

公演がまだ続いており、語弊を招くのも嫌だが、正直にはっきり感想を書けば、決して面白いとは思わなかった。
これは笑いという点で。現に、60分、一度も笑っていない。
特殊な舞台設定になっており、他の客の様子もよく分かるのだが、多くの方がけっこう笑っていた。
学生劇団所属など、同じ釜の飯を食った創り手さんじゃないと笑えないんじゃないのかと感じるところがある。
何か、観劇していて寂しかった。

ただ、3人の役者さんの魅力や舞台の趣向はなかなかの凄さを感じる。
非常に統率がとれており、雰囲気のある劇場や舞台にうまくはまった演出となっている。
緩急つけたいいテンポで好き放題に振る舞う姿は、この作品の最大の魅力であろう。

明日放る、アスホール、asshole。尻の穴。
多分、こんな感じでいいのだろう。
尻の穴から、人からアホと思われるようなうんこみたいなものをまき散らす。
そんな作品。

(以下、舞台演出とかがネタバレするので公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで)

舞台は劇場の大きな柱を中心に3つのエリアが放射線状に位置する。
各エリア内は、我が身を映す姿見は共通。後はミネラルウォーター、栄養ドリンク、ビールの缶がそれぞれ散乱する。
舞台の至る所に裸電球が飾られている。
そこで3人の役者さん各々が色々なことをしながら、掛け合っていく。
掛け合いは言葉遊び要素が多く含まれ、3人の息もばっちりと揃った統率を見せ、役者さんの動きにぴったりとはまった照明効果と併せてかなり巧妙に仕組まれている。
舞台奥は一面鏡になっており、客席に座る自分が映しだされる。同時にそれを見ていれば、常に3人の役者さんの全体像も映しだされていることになる。

話はよく分からない。
プー子たらいう、近くにできたカレー屋がおいしいという理由だけで、カレー屋になりたいと思うような、安易と言えば安易な生き方をしてそうな女の子のことが中心に語られている。
元々、下痢気味なので、少々の食中毒症状ならば、気付かずに生活するという、何やら不幸慣れしているような人生観も想像させる。
クタクタに疲れている。明日の物語が無いという漠然とした不安。それを薄っぺらい紙飛行機を飛ばして表現しているみたい。

3人の役者さんは、印象的には自分、しかも同一人物の分身のような感じだ。プー子は自分というキャラクターとして、3人が創り出そうとしている物語に登場させているように感じた。
栄養ドリンクを飲んで、頑張ることを捨てずに、もしくは無理にでも奮い立たせて前を向こうとしている男。
ミネラルウォーターという、良くも悪くもない無難な物を飲み、冷静沈着にどこか空虚な人生を分析してる男。
ビールを飲みながら、少々、厭世感を醸し出しながら、どこか脱却への道筋を見つけ出そうとしている男。この男は、常に脚本を手に持っている。実在という点では、今、生きている自分の実体はこの男なのだろうか。
そんな男が、明日への不安を解消し、どこか道を見つけ出して安心を得るために、自らが演出家となり、脚本に従ったシミュレーションをしながら脳内会議をしているような印象。
チラシの印象から、現在・過去・未来に相当しているのかなと途中まで思ってみていたが、どうも相反することが多すぎ、これは違うようである。

最後はこの建物自体から旅立つということで、決着をつけている。
恐らくは自分物語ではあるだろう。
昔、心に響く作品でも観て、演劇を志したりでもしたのだろうか。
降りかかる少々の毒のような苦難も当たり前のように生きてきたのか。
そんな人生を過ごす中で、分岐でも感じたか。疲れる日々で、明日が昔ほどしっかり見えてこない。そもそも、明日を意識することもあまり無かったのかもしれない。
そんな中での自分の見つめなおしで、やはり楽しく徹底的にさらけ出す表現の魅力は、どんな自分でも捨てられずに、また新たな表現場所を求めて、自分は旅立つといった感じだろうか。
よく分からないままで放っておくのが嫌なので、無理やり、物語化しておく。

|

« 本日は『招かれざる客』を即興で演じます。【近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻22期ドラマコミュニケーション演習授業公演】130111 | トップページ | キリンの8割、わたしの2割【ATLAS】130112 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 明日放る【劇団うんこなまず】130112:

« 本日は『招かれざる客』を即興で演じます。【近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻22期ドラマコミュニケーション演習授業公演】130111 | トップページ | キリンの8割、わたしの2割【ATLAS】130112 »