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2012年12月16日 (日)

WHITE UNDER PLANET【劇団赤鬼】121214

2012年12月14日 ABCホール

この劇団らしい、深いメッセージがこめられた力強い作品です。
まっすぐで真摯な想いがぶつかりあっても、人は隔たりを生み出す。
でも、そんな不器用なところも、きっと人間。
大切な人たちと過ごした大切な時間を想いながら生きていく。
そこにはきっといつの日か素敵な時間が訪れるはず。
なんてことを感じさせるどこか勇気づけられるような話でした。

舞台は、地底王国。
その国のリーダーが地上の国との正式調印により、日の目を見ることが決まり、喜ぶ地底人達の喜ぶ姿から始まる。

時は遡る。
仲良し4人組の子供たち。
いつでも探偵気取りでリーダーのように振る舞う男の子、ラジオが大好きな女の子、先生のように真面目でちょっと上から目線の男の子。そして、スラムで靴磨きをしてその日暮らしをする親のいない男の子、バジル。
バジルは、戦争で両親を失い、日々つらい生活を強いられているが、持ち前の明るさでそれを見せずにみんなと接する。一人で生きていかないといけないと思っているのだ。リーダーの男は、いつでもお前を守るなんて言っているが、それすら何か癪に触ってしまう。
そんな中、街に黒ずくめのサンタクロースが現れるという噂が広まる。
そのサンタクロースは親のいない子をさらってどこかに連れて行ってしまうらしい。
ある日、バジルはそのサンタクロースに襲われそうになる。
仲間4人で、そのサンタクロースの後を追う。
着いた先は地底王国。
見つかった4人は必死に逃げる。でも、バジルだけが逃げ遅れる。
そして、そのまま、彼は見つかることは無かった・・・

時は経ち、あの時の子供も大きくなった。
今ではリーダーは国を任される刑事に。女の子はラジオDJ、男の子は地質学の先生。
ある日、地質学の先生は、調査中にある紙のメモを見つける。
それは幼き頃、リーダーがバジルに困った時にはこれを掲げろと手渡したものだった。

連絡を取り合い、3人は再び地底王国へ向かう。
そこには、あの幼き頃のバジルそっくりの男の子と、あの時出会った黒ずくめの人達がいた。
そこに現れるある男。
彼こそがバジル。幼き頃とそっくりの子はその息子。
彼は、この地底王国であれからずっと暮らしていたのだ。

地底王国の謎が明かされる。
ここは、別に地底人が住んでいるわけではない。
戦後に残った反政府軍の生き残りが、文字通り地下に潜って都市を創り上げている。そして、世代を超えてずっと生き延びてきたのだ。
異分子として排除されようとしていた者の集まり。
そんなところに、地上で虐げられて、つらい思いをしてきたバジルも同調して、暮らしてきたのだ。
友達だと思っていた者も、彼から見れば、自分を見下し、決して信用できない者だと映っていたらしい。
それも仕方ないかもしれない。実際に、あの時、逃げる時に、守ってあげるなんて普段は言いながらも、放ったらかしにして自分達だけ逃げて来たのだから。

バジルの要望は、地底王国を虐げることなく、独立国家としてみなすこと。
そして、自分達は今こそ、地上で、自分達を排除しようとした人達と同等に生きることを目指す。
さもないと、地上の水源である地下水に毒をばらまくと言っている。
そのことを、3人を通じて地上世界に知らしめようとする。
地上の政府高官と契約を結ぼうとするバジル。
ここが冒頭のシーン。始まって約90分でようやく行きつく。

ところが、地上の政府はそんな地下王国のことは既に知っていた。
何もしないうちは手を出さなかったが、今、反抗の意志を示した。
巧みに騙し、地下王国を爆破しようとする。
愕然とするバジル。自分は、ずっと一人で何もかも背負いこみ、必死に生きてきたのに。
今こそ、あの時、守ってあげれなかったバジルを助けたい。
そんなみんなの想いが集結し、バジルをはじめ、地下王国の人達を救う最後の戦いが始まる。

実際は、子供時代の過去シーンと今のシーンを交錯させながら話を進めます。
対応する役者さんをうまくオーバーラップさせていて、見事な作りになっています。
ここはとても文章では表現できないので、DVDを購入して観ましょう。

明るく無邪気で元気な子供たちの姿が、本来続かなくてはいけなかった世界だと思わせながら、差別意識や異質な者を排除する考えがはびこる世界が生み出した悲劇という、厳しい現実を描いている。
真剣なテーマであるが、息を抜くかのように緩く笑いを組み込んで、バランスのいい観劇が出来るのは、いつもながらの創り方か。
様々な小ネタのような伏線も綺麗に回収されており、後半は感心するばかりのような状態になると思います。

めまぐるしく、時空を超えて展開されるシーンは、実にテンポよく進み、ミスリードを巧みに誘いながらも、分かりやすい設定となっています。
この劇団らしい、まっすぐで力強いメッセージを感じる話です。
ラストは負の連鎖を断ち切り、長き間、くすぶっていた各々の想いが伝わりあい、もう一度新しい道に踏み出そうとする姿が描かれています。

この作品は、もちろん虚構なので、地下という別世界で時を分かつという設定ですが、現実世界でも、あの頃は幼かったからとか、自分の経験も少なかったからなんて理由で、いつのまにか時を分かつ間になった人っていますよね。
今だったら、互いに分かり合えるのかな。逆に、昔だったから、分かり合っていたのかな。
そんなことをふと懐かしみながら思うと同時に、だからこそ、今出会っている人たちと大切に付き合っていけたらななんてことも思いました。

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